大増水の恐怖を体験した楢俣川洗ノ沢

前回の沢旅からなんと4週間近くも経ってしまいました。ずっと延期続きの足尾の沢を予定していたのですが、栗原林道が通行止めという情報を直前にキャッチ。さて、どうしよう。新しく調べる余裕はありません。そこで数年前に日帰で途中まで遡行した楢俣川洗ノ沢を最後まで詰めて笠ヶ岳に登ることにしました。

楢俣川には魅力的な沢がたくさんありますが、入渓までの長い林道歩きがネックになっています。その点、洗ノ沢はアプローチが楽で、難しい所もないナメのきれいな沢です。グレード的にも楢俣川の中では初級のやさしい沢という位置づけです。

楢俣川ではすでに、ススケ沢や後深沢、仮小屋沢、ヘイズル沢を遡行しています。洗ノ沢も途中まで経験済みなので、気分的には気楽です。いつも予想に反して苦労するブナの沢旅ですが、今度こそのんびりできるはずでした。

久しぶりの洗ノ沢。最初のゴーロをやり過ごすときれいなナメやナメ滝が続きます。気が抜けるくらい安穏とした沢歩き。ワクワクドキドキ、エキサイティングな未知の沢もいいけれど、時にはこんな風にのんびりする沢もいいものです。

新しく見つけたテンバでは、川原で焚火しながらゆったりとした時をすごし、テントは張らずタープの下で開放感たっぷりのおやすみなさい〜と、ここまでは理想的な展開でした♩

あっ、前置きが長過ぎますよね。そう、夜中に雨が降り出したんです。雷もなりました。しばらく降って一旦やんだのでこれで雷雲は通過したと安心したのですが、ふたたび本降りとなりました。途中でテントを張ったので外の様子はわかりませんでした。そのうちに沢音とは違う飛行機の轟音のような響きが続くので気になって外に出てみたんです。そして目の前の光景に啞然!心臓がドキドキを越えてバクバク!

沢が怒濤の勢いで目の前一杯に広がっていたんです。焚火をした一段高いゴーロの広川原が水没して水がタープの前に迫っているではないですか。今こうして書いていても思い出してドキドキするほどです。

弱小パーティの私たちはこれまで、悪天には人一倍用心深く対処して日にちをずらしたり行き先を変えたりしてきました。だからこんな増水の経験などしたことがありませんでした。急いでいつでも動ける体勢をととのえ、万一の場合にそなえました。

さいわい明け方には雨がやみ、増水は小康状態となりました。あれこれ選択肢を相談して水が引くのを待つことにしました。実体験はありませんが、増水に対処した記録はいくつか読んでいたので、その情報が参考になりました。

しだいに減水の兆しが現れ、見えなかった岩が見えてきたところで行動を決めました。長い行程なので、これ以上停滞していると明るいうちに下山できないタイムリミットでした。

ほんとに恐かったですが、青空が広がり勇気づけられました。危険な状況は脱したのですが、普段なら楽しく登れそうな滝は取り付けずすべて巻きました。あらゆる動作に時間がかかり笠ヶ岳にたどり着いた時は時間も押していたし、エネルギーを使い果たした感じでした。それなのに、さらに4時間の下山路!

まさか洗ノ沢でこんな体験をするとは夢にも思いませんでしたが、とても貴重な経験でした。いくつかの教訓も得ました。そしてこんな状況の中で撤退せずに歩き通したことに小さな自信を得たのでした。

ちなみにアメダスによれば、麓の水上では4時間で170ミリの降雨が記録されたとか。そんなときに沢泊まりしていたなんて!

写真は増水前と増水後(多少減水してます)

せんの沢1 センの沢2

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コメント

  1. sugi より:

    実はもう6-7年前、宝川温泉から板幽沢に釣りに出かけたことがあります。朝は晴れていた天気が昼ごろには雷雨に変わり、早々に沢から引き揚げ雨宿りをし、雨が上がった宝川林道に戻ると、穏やかに流れていた宝川が激流に変わっていたことがありました。後で、東黒沢でキャニオニングしていた人たちが流され行方不明者が出たと聞き、そのまま釣りを続けていたら危なかったのです。宝川の激流は林道から見下ろしたので恐怖はありませんでしたが、今回は目の前の足元。凄い光景でした。でも、テン場にした場所は前日チェックしたとき、水流の痕跡がなかったので、ここまでは来ないという「確信」があり、何時間もそこから少しずつ引いていく沢を眺めていたのです。過去には、増水すれば流されてしまうような場所を、今夜は降らないよねとテン場にしたことも無きにしも非ず、今後の大きな教訓になりました。