白毛門のファンタジー

年末につづいて今シーズン2度目の白毛門です。こんなことは私にとって珍しいことですが、前回は途中までだったことと、2月中旬の厳冬期はどんな状態になるのだろうという恐いもの見たさ的好奇心です。まあお隣の谷川岳でもよかったけれど、みんな考える事同じじゃないですか。そういうときに行くのもしゃくですからね。??ここは降雪後の晴れた平日のために取っておくことにしました。

電車とバスを乗り継いで行くので少々遅目の出発なのは仕方なし。だから期待してなくても大抵トレースがあるんです。1ヶ月半の間に積雪量はかなり増えていて、標識はどれも完全に埋もれていました。

尾根に乗ると雪庇の発達が顕著でした。そのために小さなポコがけっこうな雪庇の壁となって立ちはだかっており、トレースも直登せずトラバース。見上げると雪庇がのしかかるようで、ちょっとやばくないかな〜っていう感じでした。

幾つか目の雪壁を巻き上がった所で先行者に追いつき、まずはお礼のご挨拶。単独男性と3人パーティでした。白毛門はこの日私を入れて5人だけ。3人Pは若手の女性を男性2人がはさんでサポートしながら登ってました。羨ましい限りです。あ〜あ、私ももっと若いときに山岳会に入っていれば、こんな風に大事に育ててもらえただろうな〜なんて。

松ノ木沢の頭あたり(標識埋没)で、みんなで休憩してどうするか何となく相談します。やはり時間がかかっていてこの段階ですでに1時過ぎ。誰もが山頂は無理と思っています。そんな中、単独の男性は行ける所まで行くとのこと。内心オオッ。私は迷いましたが、バスの時間を逆算して引き返すことを伝えました。お別れの挨拶をしていたら、なんだか遠くに旅立ってしまう友人を見送る気持ちに似た感情がわいて、ずっとラッセルしながら登って行く姿を呆然と立ち止まって見つめていました。

真っ青な空にそびえ立つ真っ白な斜面にトレースが延びて行く様はほんとにかっこ良く、このまま引き返したら後悔しそうな気がしてきました。やっぱりギリギリまで粘ろう。あとに続いて登り始めました。でも追いついてラッセルを交代するなんておこがましく、おとなしくついていくことにしました。以前とある山で、珍しく私たちがつけたトレースをたどって追いついた人が、最後だけ自分がラッセルするのは申し訳ないと先に進もうとしなかったことを思い出したのです。その時、世の中にはそういう考え方があるんだと、知りました。たとえ申し出たとしてもあっという間に撃沈したでしょうけどね。

ジリジリと高度を上げて行ったのですが山頂下の岩瘤手前に大きなクラックができていて越えられそうにありません。同時に私のタイムリミットとなり、今度は未練なく下山を決めました。お礼をいって清々しい気持ちで引き返しました。先行者もその後すぐに断念。

山頂まであと一歩という所でした。年末より頑張ったぞっ。なによりも過程が素晴らしかった。残雪期は簡単に登れるけれど、厳冬期の今の時期にしか味わえない雪の質と量を思う存分楽しむ事ができました。それも同じ日に同じ山に登った人達に助けられてのこと。つかの間のことですが一方的な連帯感を覚えるほどでした。

こういう山登りもいいものですね。ありがとうございました〜

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