越後奧三面-山に生かされた日々-を観て

ようやく、ようやく見る機会を得た。民族文化影像研究所の映画作品「越後奧三面-山に生かされた日々-」は、朝日連峰の懐奥深くに位置する奧三面が、ダム建設により閉村してダムの湖底に沈む直前の、人々の山と共に暮らす姿を四季それぞれの影像を通して綴った記録だ。

影像による記録作業は1981年から村が閉村に至った1985年秋まで行われ、145分という長編記録映画にまとめられて各地で上映された。高い評価を得ていくつかの映画賞も受賞しているようだ。もう30年近く前に制作されたものだが、その存在を知ったのは数年前のこと。沢登りや雪山であちこちの山間地を訪れ、その土地の歴史や山の暮らしに関心を持つようになったからだ。

以前から三面には特別の響きを感じていた。沢登りを始めたばかりの頃、若い頃に険谷遡行に情熱を傾けていた沢やの先輩から三面の沢の話をきいたり写真を見せてもらったことがあった。それ以来、自分には無縁ながらも三面に憧れと畏敬の念を抱くようになっていた。

その三面には一方で、何百年も前から人々が集落を形成し、山と共に暮らして来た歴史があった。縄文遺跡も出土しているという。あんな険しい山奧に・・・と思うが、広大なブナ林に囲まれた奧三面の集落は、豊かな山川の恵みを受け、マタギの集落として山を敬い山に生かされた生活を送ってきた。

影像は、厳しい自然とともに自然の豊かさとそれを享受する人々の知恵を、冬の始まりから季節毎に克明に記録。ある意味究極のエコライフだと思いながら、最初から最後までぐいぐい引き込まれた。2時間半があっという間というより、もう終わってしまったという寂しささえ感じた。そして今見た記録映像の集落とその暮らしは、とっくの昔にダム湖に沈んでしまったのだと、切ない気持ちになった。(なにを、いまさら・・・なのですが・・・)

民族文化影像研究所はその後も影像記録をとり続け、「第二部-ふるさとは消えたか」を完成させている。家々の取り壊しから、閉村、集団移転した人々のその後の暮らしぶりなどを実に11年にわたって記録したものだ。いずれ、この作品の再上映も行われるのではないかと期待している。

ダム湖で沈んだ集落は日本全国至る所に存在する。沢登りでもダム湖にお目にかかる機会がよくあるが、それぞれに奧三面と同じ運命をたどった人々の自然と暮らす営みがあったことを忘れないようにしたい。その上でこれからも暢気に遊ばせてもらおうと思う。

山にかかわるようになったからこそ出会えたことを、心からうれしく思えた日だった。

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