鹿俣山~獅子ケ鼻山~剣ケ峰山~武尊山~川場スキー場

2011年3月5-6日

ずばり今回のねらいは、獅子ケ鼻山のギャップを越え、鹿俣山から剣ケ峰山のルートをつなげること。とてもマニアックなルートだが、山仲間kukenさんの3年越しの懸案ルートであることを知り、以来「雪山プロジェクト」と命名してチアリーダーを務めてきたのだった。

とはいえ、それなりの入念な準備もしてきた。1月の鹿俣山を手始めに、2月には高手新道から剣ケ峰山へ登り、獅子ケ鼻の岩壁を観察。そして2月中旬には足慣らしをかね、荒沢山からホソドのコルを越えて足拍子岳へつなげた。

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当日の朝沼田駅でkukenさんにピックアップしてもらい,川場スキー場でsamさんと合流。翌日は川場スキー場へ下山予定なのでsamさんの車を駐車場にデポし、入山地点である玉原スキー場へ向う。

川場スキー場の駐車場は無料だが、玉原は1日1000円徴収される。そこで駐車場には入らず、ベンション村の林道を入った除雪終了点の空き地に駐車。さっそくスノーシューをはいて鹿俣山登山道へ入るが、数日来の降雪のためトレースはなく、先頭は膝下ラッセルとなる。

気持ちのいいブナ林を歩いていくと次第に樹氷の森となり、雪深さが増していく。鹿俣山の西尾根に乗るところは急斜面となり先頭は腰ラッセルとなる。張り出した雪庇は1月に来たときよりもかなり大きくなっていた。

新雪の下は堅雪になっているため雪庇を切り崩して尾根に乗り上げるところで一苦労。samさんが空身でようやく突破し、全員のザックを引き上げてから這い上がった。もちろん、もう少しトラバースをして尾根を回り込めば楽に上がれる。

鹿俣山の山頂へ着くと、新しい標識は雪に埋もれていた。立木にくくりつけられた手書きの標識の位置から察するに、1月の時より数十センチは積雪量が増えているようだ。今回はここからが本格的な出発点となる。

しばらくは雪庇が発達したゆるやかな尾根歩き。1月に途中まで歩いたときは悪天のためほとんど展望がなかったが、今回は薄曇りながら視界は明瞭だ。獅子ケ鼻に近づくにつれ剣ケ峰山から雲のベールがはがれ、一挙に青空が広がる。まるで劇場の幕が開いたようだ。そう、これからが第一幕のハイライト。真っ青な空に樹氷の花が映えてとても美しい。振返ると谷川連峰の山並みがひかえている。行く手には美しく波打つ雪庇が続き、獅子ケ鼻山の山頂へ。

いよいよ獅子ケ鼻山のギャップ越えだ。頂上の手前でシューをアイゼンに履き替え、ハーネスをつける。ここで私は下降器を忘れたことに気づき情けなくなる。(家で支度をしたときにカラビナとともにハーネスにかけたのだが、そのあとはずしてもう一度ロープワークを確認後そのままにしていたことが判明)。

北面の岩壁を懸垂下降するルートを想定し、パーティで40mロープ2本を用意した。先頭のsamさんが北斜面をトラバースして頂上直下へ進み支点を探す。足下の着地点が見えず、いったん10mほど下ったところでピッチをきる。

最初の懸垂はインクノットでやり過ごしたが、2ピッチ目は厄介だった。samさんも相当手こずったようで、途中雪がはがれた岩壁はハングしていて空中懸垂とのこと。手元がもたつき時間がかかっているのを見かねたkukenさんがルベルソを貸してくれ、セットしてくれてようやく態勢が整う。

最初は怖々と制動をかけながら下ったが、途中からは腹を据え一気に滑り降りる。先に下ったsamさんが見えたときにはホットして最後は倒れ込むように着地。40mぎりぎりセーフ。もしロープが足りなかったらどうするつもりだったのだろうと、samさんの勘と度胸に感心する。

3人が無事に下降し終えたときには日没に近かったので、樹林帯に下りながら幕営できそうなスペースを探す。岩壁下のわずかな平地を見つけ、少しの土木工事で快適なテンバができた。よくぞ見つけたという展望抜群の憩いのテラスだ。今回は3人用の広めのテントを新調した。無事にギャップ越えできたことに乾杯。夜はみな興奮冷めやらぬ状態で、シュラフに潜ってからも暗闇の中で3人の声が飛びかい続けた。

獅子ヶ鼻1 獅子ヶ鼻4

獅子ヶ鼻5 獅子ヶ鼻6

最大の核心は越えたのだが、翌日は獅子ヶ鼻のギャップにつづく小岩峰下部の急斜面をトラバースして剣ヶ峰山に続く尾根に乗らなければならない。再びアイゼンに履き替え、先頭のsamさんに続いて彼のステップをたどる。左手は目のくらむような急斜面。kukenさんはホソドのコルのトラバースより易しいと言っていたが、高度感たっぷりで、朝から緊張の連続だった。

無事にトラバースを終えて振返ると岩峰が真っ青な空にそびえ立ち爽快だ。剣ヶ峰山へ続く尾根は次第に穏やかな丸みを帯びるようになり、稜線に人の姿が見えた。川場スキー場のリフトで上がれば9時ころにはここまでやって来れるのだ。

テントを担いで鹿俣山から獅子ケ鼻の岩峰を越え、はるばるやってきた我がパーティーは真に奇特なり。トレースのある尾根に抜けたときのうれしかったこと。思わずkukenさん、samさんにハグして喜びと感謝の気持ちをあらわした。

ここで不要な荷物をデポして武尊山を往復する。Kukenさんは獅子ヶ鼻のギャップを越えて剣ヶ峰山に至ればそれでよかったらしいが、私はまだ果たしていない冬の武尊山にこだわった。それなのに、これまでになく消耗してしまいつらい道のりとなる。

剣ヶ峰山からいったん急降下したあとが意外と長く、途中の小山で待っていてくれた二人に、ここでやめる?と言われてしまう。つらかったけれど、そんなことをしたら絶対あとで後悔するに決まっている。小休止でエネルギーを補給し、もうひと踏ん張り。

最後は実にたおやかな山並みとなり、両手を広げて迎えてくれているようだった。ようやく到達した山頂は360度のすばらしい展望だ。皇海山から白根山への山並み、平ケ岳から奥利根の山々、上越の国境稜線から谷川連峰、浅間山も近い・・・これで武尊山周辺の一連の山行に区切りがついた。いつも珍道中となるデコボコパーティだが、今回は3人のシナジーがうまく発揮された山行となった。

下りも大きく遅れをとってしまう。剣ヶ峰を降りたところでkukenさんがリフトで降りようと言ってくれたときは心底ホットした。予定していた高手新道は前回歩いているので未練なくリフトの山頂駅へ。samさんは歩いてスキー場を下るという。なんと私たちよりも先に下山してデポした車で待っていた。再び玉原スキー場へもどり、kukenさんの車を回収。いつものように上毛高原駅まで送ってもらい帰路についた。

こうして獅子ケ鼻山ルートが実現した。熱い想いと、それを支える仲間がいれば、山は期待を裏切らずに迎えてくれるのだと実感できた、会心の山行となった。

獅子ヶ鼻7 獅子ヶ鼻8

獅子ヶ鼻9 獅子ヶ鼻10

3月5日 玉原スキー場10:10-鹿俣山12:45/13:00-獅子ケ鼻山15:50/17:20-テンバ17:35

3月6日 テンバ7:20-剣ケ峰山10:20-武尊山12:10/12:20-剣ケ峰山13:40-川場スキー場14:30

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