八海山(女人堂往復)

2010年1月24日

何からなにまで、できすぎの山行だった。それなのに、八海山が決まったのが前日の夕方。

午前中はガスと小雪の中を無心にラッセルに精を出し、午後はそのご褒美か、信じられないほどの青空が広がって素晴らしい展望を心行くまで満喫。時間切れで諦めたロープーウェイにも特別にのせてもらい、おかげで割引切符の限定列車にも間に合いと、パーフェクト。

湿った雪が降る浦佐駅でSamさんと待ち合わせ、八海山スキー場へ向かう。午後から晴れマークだったから決めたのにと、愚痴りたくなるが、そうでもなければ初めての八海山を訪れることもなかっただろうと、自分を説得。こんな天気で人がいるのかな、なんて思う自分は世間知らず。

スキー場にはたくさんの車が駐車しており、若者でごった返していた。ロープーウェイは8時半からの運行で、長蛇の列に並ぶ。登山者は私達だけのようで、切符売り場で登山届けの記入を求められ、車の鍵も預かるといわれた。最初は物々しい対応で驚いたが、何かあれば対応してくれるのだろうから、ありがたいと思うことに。

ラッシュアワー並みのすし詰め状態のゴンドラで山頂駅へ。相変わらず小雪模様だが、すでに標高1100mを越えており雪もさらさらしている。登山道のある方向へ向かうとすぐに深雪となり、のっけから腰ラッセルを強いられる。Samさんはスキーをはいていたが、雪のあまりの重さにギブアップ。スキーをデポするために駅へ戻った。

視界も悪いので、ひたすらラッセルを楽しもうと頭を切り替える。先々週の五頭ではワカンのためシューとラッセル力に差が出てしまったため、今回は頑張って挽回しなくっちゃ。日帰り装備なのでザックは軽いし、朝から電車で太巻きを5個も食べたほどで、やる気満々なり。すぐに樹林に入るが、なかなかきれいなブナ林で樹氷が美しい。ラッセルは疲れる前に小まめに交代した方が効率がいいことを先週の山で教わった。タイムキーパーをしながらおおむね10分交代くらいで進む。

樹林帯が途切れたところでは、空と雪の境目がわからなくなることがあり、軽い船酔いを感じる。池ノ峰に近づくと尾根が広がって進路が判然としなくなり、視界がないためコンパスを頼りに慎重にルート取り。SamさんがGPSで確認しているので大局的なルートは確認できるのだが、今どの方向に向かうべきかとなるとGPSでは不確かで、やはり地図とコンパスでの確認がかかせない。

昼が近づくにつれ雪もやみ、雲の中から太陽の輪郭が見えてきた。しだいにガスも薄くなり、淡い期待がふくらむ。池ノ峰のポコを過ぎ、一旦下り始めると前方に尾根がそそり立ち、最上部に小さい人工物が見えてきた。急に色めき立ち、Samさんにひょっとして女人堂ではないかと聞くと、そうだという。とてもうれしくなり、あそこまで行きたいと意欲がわいてきた。

あまりの雪深さに早々と、女人堂までは無理だろうと話していただけに、とにかくうれしい。小屋が見えてからが遠いんだよねぇと、Samさんは懐疑的だったが、最初に決めていたタイムリミット1時半まで頑張ることにした。ラッセルも膝下ほどになり、あと急斜面のポコを2つ残すところまでは順調に進んだ。尾根伝いは痩せて雪庇が出ているために東側の急斜面を慎重にステップを切って斜上していく。

ここからは先頭をSamさんに任せるしかない。トレースをたどるにしても足元が不安定。急斜面の下は深い谷となっていて、ものすごい高度感だ。久しぶりに緊張感を味わい、悪場を通過したときにはホッとして、怖かったーと、安堵の言葉が口に出た。

たどり着いた小屋は屋根を残して埋まっていた。Samさんがスコップで雪を掻き分け、二階のドアが開いた。中に入り、お疲れ様の握手。頑張りました。遅い昼食をとり、温かいコーヒーを飲みながらしばしのくつろぎタイム。

そうしているうちにドアから見える空が明るく青くなっていた。喜び勇んで外に飛び出し、思わず歓声。青空が広がり、見渡す限りの素晴らしい展望が広がっていたのだ。そして小屋の屋根越しには、真っ白に緩やかなラインを引いた薬師岳が間近にそびえている。すぐに登れそうな距離感だ。あまりに劇的な変化に、二人で狂喜の乱舞。「越後倶楽部」やったね・・最強のコンビだな・・それぞれの言葉でうれしさを表す。

さあ、あとはこの展望を満喫しながらの稜線漫歩といいたいところだが、ここは降りたくないと思いながら緊張して登ってきた斜面を通過しなければならない。Samさんもその点は考えたようで、別ルートを懸垂2ピッチで下り、元のルートに合流することにした。こういう設定での懸垂は初めてだったので私は手際が悪く、下から指示をもらいながら、ぎこちない下降となった。けれど、これこそまさに生きた実地訓練。普段トレーニングに無縁なため、とてもいい経験と教訓を得ることができました。

4時までに戻らなければいけないのに、展望があまりにも素晴らしく、何度も立ち止まっては息をのむ。間に合わなければ歩けばいいと、あまり急ぐ気にもなれない。Samさんはスキーで滑り降り、私はロープーウェイでラクチン下山の予定だったが、一般客用の最終運行は4時。

ぎりぎりで間に合わなかったが、整備用に登ってきたゴンドラに乗せてもらう。往路とはうってかわり、復路はもう一人取り残された女性と二人だけの特別便だ。遠くに赤く染まりつつある山並を眺めながら、ゆったりと貸しきり空中観光を楽しんで下山。

厳冬期に日帰りでこれだけ楽しめる山は他にあまりないのではと、二人で満点投票。やっぱり越後の山はいいねぇと、あれこれ興奮冷めやらぬ感想をとびかわし、今後の更なる越後プランを話しながら、浦佐駅で解散となった。

八海山1 八海山2

八海山3 八海山4

ロープーウェイ山頂駅8:50-女人堂13:30/14:00-ロープーウェイ山頂駅16:05

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