日向倉山~未丈ガ岳(1400mまで)

2009年3月29-30日

今年の冬は雪山の美しさにはまってしまい、経験不足ながらも越後や会津、東北へと山域を広げてきた。たくさんある未知の領域にまず足を運んで、この目で雰囲気をつかんで見たいと思っているからだ。未丈ヶ岳はブナの原生林が多く残る山。ロマンチックな山名にも惹かれ、いつか行ってみたいと思っていた。

悪天のため初日は日向倉山手前の樹林帯に早々とテントを張り、翌日の好天予報にかけることに。翌日は予想以上の好天にめぐまれ、新雪で化粧直しをした山並は、このうえなく美しい姿で迎え入れてくれた。前日あまり進めなかったために、目的の未丈ガ岳には時間切れで到達できなかったが、そんなことは気にならないほど、素晴らしい展望と美しい雪稜を楽しむことができた。

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浦佐から上越線に乗ると雪となり、小出駅に着いたころには本降りとなる。aamさんと合流して開口一番「やばいんじゃない?」「やばいね」ということで、当初予定していた丸山スキー場からのコースを変更し、すでに偵察済みの日向倉コースを行くことにした。向学のためと泣沢口入口を見学。シャッターをあけると棚柵となっていてほとんど雪で埋もれている。samさんは先週この棚をよじ登って隙間から這い出たという。こんなところを抜けようとするなんてクレイジーだよと、予定の泣沢口への下山は直ちに却下。

雪が舞うどんよりとした空模様の中、日向倉山に最短距離で登れる南西尾根の取り付きへと歩き始める。スノーブリッジのかかった小さな沢を2度渡り、尾根末端に取り付くと、しばらくは急登の藪こぎとなる。1000mを過ぎるとようやく藪から解放され、なだらかな雪面となって快適な登りとなる。

雪は相変わらず降っているが視界はあり、対岸の荒沢岳が間近に迫って迫力がある。ここ2~3日の寒波到来で50センチほど新雪が積もったようで、雪はまっさらのパウダー状態だ。晴れていればさぞかしきれいなことだろうと残念だが、今期の冬山はいつも晴れていたので、たまにはこういう風雪もいい経験だと自分を納得させる。

登るにつれ樹氷をまとったブナ林があらわれ、墨絵の世界のように美しく幻想的だ。明日のためにできるだけ先に進みたかったが、山頂に近づくにつれガスが濃くなりほとんどホワイトアウト状態に。西側斜面の樹林は何とか見えたが、東側は空との区別が付かなくなり、感覚が狂って気分が悪くなるほどだった。

こんな状態では雪庇の状態も確認できず危ないし、何も見えないのでは進んでもしょうがないということで、明日は晴れるという予報に期待をかけて早々と行動を終えることにした。

そうと決まれば時間はたっぷりあるので、sam さんは雪洞を作ろうという。樹林帯なので十分積雪がないと無理ではないかと思ったが試してみることに。やはりすぐに枝があらわれ完全な雪洞はあきらめるが、本人はどうしてもやりたいらしく、何とかテントを収容できるだけの半穴を掘って一段落する。

テントに入れば暖かく、まずはお茶を沸かしてゆったりくつろぐ。とりとめもないおしゃべりをしながら雪の夜は更けていった。外に出てみると雪はやんでおり、眼下にはぼんやりとしたシルバーラインの灯りが見えた。

4時に目覚ましで起きるとテントをたたく音がする。気持ちがなえ、しばらくシュラフの中でぐずぐずしていた。いつものようにのんびり朝食をとり、出発の準備をしてテントを出ると、やったぁー。青空が顔をのぞかせている。うれしいー、これで未丈にいけるねーと大はしゃぎ。テントはそのままに、ザックを軽くして出発する。

樹林を抜けるとすぐに日向倉山頂への雪原となり、太陽の下、キラキラ輝くダイヤモンドダストを浴びながら山頂へ向かった。360度の素晴らしい展望だ。これから向かう未丈への尾根が、太陽の演出による陰影を帯びてしなやかに姿をくねらせ、それはそれは美しい。

左手後方には越後駒が凛々しい姿で聳えている。初めて行った飯豊の山並にある種の威厳を感じたのに比べ、とても開放的な雰囲気だ。1376mのジャンクションピークに目が釘付けとなった。

東側に人を飲み込むような大きな雪庇を張り出した鋭鋒はとても通過できるそうには見えない。最初は丸山スキー場から登る計画だったので、地図をみながら1376mのピークにテントを張ろうかなどと一瞬でも考えた自分に大笑いしてしまう。

1376mピークは東側の急斜面をトラバースして巻いたのだが、所々隠れた亀裂に足を踏み抜き、緊張の連続となった。ちょっとした雪稜の雰囲気を味わう。途中の垂壁はピッケルを頼りにキックステップで下るが、下った先はガリガリの急斜面に雪が薄くのっているようなところだった。

先行したsamさんも足場を確保するのに苦労するほどで、ここは潅木を支点にしてロープを出してもらった。二人とも思わず三国岳の剣ガ峰を思い出し、楽しいねーと強がる。

ようやく巻き終わって稜線に戻ったときにはかなり時間がたってしまった。1400m地点を越え、未丈の山頂がみえたところでタイムアウトとする。ここから山頂まで往復すると少なくとも2時間はかかりそうだった。十分雪と遊べたし、素晴らしい展望を満喫した。また来なさいというメッセージなのだと思うことにして、来たルートを戻ることにした。

行きに緊張したトラバースと雪壁も二度目となれば余裕もでてくるもので、いいトレーニングになった。1376mピークを過ぎると日向倉への登り返しだ。美しい稜線を2度歩けるのはうれしいけれど、最後はバテバテで苦しかった。やっとのことで山頂にもどり感慨深く四方の山並みを見渡した。

そういえば行きは地図を出さなかった。20万分の1を片手に一人で山座同定。双耳峰の燧岳が大きいが、雪は山頂付近にしか見られない。さすがに会津駒から三岩、窓明の山並は真っ白に聳えている。坪入りから伸びる尾根の先には丸山岳も。今年こそはきっと行くからね。

村杉半島に目を凝らす。村杉岳のブナにも恋焦がれているのだ。あまりゆっくりしてsamさんを待たせてはいけないとテントに戻ると、お湯を沸かしてくつろいでいた。彼一人だったら未丈に行けただろうにと思うとすまない気もしたが、口にはださなかった。

時間の目途もついたので一服してからテントを撤収し、たどってきた尾根を下った。緩やかな雪原の尾根を下ることほど快適なことはない。さすがに下山は早く、1時間半ほどで銀山平にもどった。

3月29日 銀山平9:00-日向倉山手前1380m付近テンバ12:45

3月30日 テンバ7:00-日向倉山7:20/30-1376m峰下10:00-未丈ヶ岳手前1400m 11:10/11:25-テンバ14:30/15:15-銀山平17:00

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