タカマタギ~日白山

2006年4月14-15日

静かな雪山を歩きたくて、HKさんにリーダーになってもらい、最近気に入った上越の里山からタカマタギ~日白山を計画した。直前になって仕事が終わらず行けそうもないと泣き言を言うリーダーを叱咤激励し、TKさんと3人で、のんびり山行を決め込む。

HKさんの都合で海老名を23時という遅い時間に出発するが、おかげで道路はがらがらで3時間で土樽駅に到着。駅の待合室で仮眠する。

翌朝も目覚めた時間が起床時間で、のんびり朝食をとって7時過ぎに出発。毛渡沢橋で身支度をしていると通りがかった地元のおじさんが、どこへ行くのかと声をかけてきた。そういえば、会の年報2号に載っていたタカマタギの記録でも、同じ場所で「おっちゃん」に車から声をかけられていたなと、ふと思う。そういう土地柄なのだろう。聞けば、今日から熊猟が解禁になるのだという。えっ、ということは熊がたくさんいるの?と気持ちがざわめく。

除雪された林道をしばらく歩き、毛渡沢方向への二俣をわけたあたりで除雪がとぎれ、3mほどの雪壁に突き当たる。ここを越えていくのだが、しょっぱなから越えられない。諦めてTKさんに上から引き上げてもらう。上がれなくてくやしいでしょと、憎らしいことをいわれてしまう。

さあ尾根の取り付きだ。当然のように目の前からせりあがっている尾根に取り付いて登っていくと、途中からTKさんが、どうも違う尾根に登ったようだという。地図で確かめると、予定していた尾根より一つ手前の尾根にいることが判明。どちらでも違いは無いのでよしとするが、ちゃんと地図見なくちゃね。

さすがにこの時期ともなれば雪はしまっていて、ラッセルというほどのこともなく歩きやすい(といっても、先頭は二人に任せきりだったので、言える立場にはない)が、いきなりの急登で息が切れ、すぐに写真タイムをかこつけて休憩。今回はのんびり山行なので、全員がカメラを持参。

昨年豆焼沢でデジカメをダメにして以来、携帯でお茶を濁していたが、ようやく今度は防水カメラを購入持参する。TKさんも同じカメラだ。毛渡沢を挟んだ対岸には、1月に登った足拍子山とクロガネノ頭が顕著な姿をあらわしてきた。

初めての上越の山であり、たいへんな経験もしたので、とても感慨深かった。さらに樹林帯の急な斜面を登っていくと、まだあたらしい熊の足跡がついているではないか。わぁっと、みんなで色めきたつ。

棒立山が近くなるに連れ、地肌が見え出し藪がうっとうしくなるが、アイゼンはつけたままちょっとした藪こぎ。予想外の消耗をしてしまった。山頂の展望はさらに開けてくる。ここからは、展望を楽しみながらの雪の稜線歩き。雪はわりとしまっていて歩きやすい。タカマタギまではいくつかの小さなこぶを越えていき、着きそうでつかない。

途中休んでいると、前方から女性の2人パーティーがこちらに向かって降りてきた。声をかけると反対側の二居から今朝登ってきたという。ええっ、もうここまで来てしまったの、はやい!と、びっくりする。テントをかついてきたけど天気も崩れそうなので1日で抜けることにしたという。聞けば、トマの会の人たちだという。さすが、若くてたくましいなぁと、感心することしきり。

うちらはのんびり行こうと、先に進む。稜線の右側は緩やかな斜面のブナ林になっていて、どこにでもテントが張れそうだが、風も強く、今日のうちにできるだけ先に進むことにする。この間ずっと、頭上は日輪で被われていた。暖かく空気はかなり湿っているためらしい。

タカマタギ。この山の名前に惹かれて来たようなものだ。山頂でさらに、単独の男性に出会う。日白山までのピストンの帰りだという。この時期なら十分日帰りもできそうだ。日白山はすぐ目の前。右側の稜線のラインがしなやかで美しい。その先には平標の山並みも姿をあらわしてきた。つなげて歩いてみたくなるほど、間近に見える。それにしても風が強い。

日白山では休憩もそこそこに、テンバを求めて長釣尾根を下る。長く長く蛇行する急斜面の尾根を、滑るように下っていく。若者2人が先にどんどん進んでいくのを見ながら、真っ白でなだらかな稜線に立っていることの幸福感に浸りながら、マイペース(というと聞こえがいいが遅いだけ)であとに続く。

200mくらい下ったところに台地状の場所を見つけ、ねぐらとする。吹きさらしの場所に思えたが、眺望は抜群だ。さっそく整地をしてテントを張り、TKさんは少し下った反対側の斜面にトイレを作った。見に行くと、立派な雪洞で快適そうだが、利用しそびれてしまった。

風は強いが比較的暖かく、テント内はスペースも十分で快適そのもの。今回はめずらしく食事作りに多少手間をかけ、シチューを作ってポリタンクに入れてきたのはいいが、やはりまだ素人で手際が悪く、その場で作らないとダメだと、当たり前の教訓を得たのだった。それでも三人仲良くおしゃべりを楽しみ、7時過ぎにはシュラフにもぐりこんだ。暖かいのはいいのだけれど、とにかく風がビュービューすごい音で、熟睡を妨げられた感じだ。

たかまたぎ1 たかまたぎ2

朝起きてみると風はやんでいる。5cmほど新雪が積もっている。目の前の山並みに雲がたなびき、幻想的な光景だ。きれいだねぇ~と、みんな。のんびりと出発するが、あとは尾根を下るだけ。途中尾根がナイフエッジになっているあたりで、ふたたび真新しい熊の足跡を見つける。行きも帰りも、だ。たくさん生息しているのだろう。

まだ誰も熊を見たことは無かったが、これだけ真新しいということは、きっと近くに。もう一つ向こうの尾根あたりにいる熊だったら、見てみたいよね、などと軽口をたたきあう。気持ちのいいブナ林の尾根を快適に下っていくと、あっという間に毛渡沢の河原に。天気予報に反して快晴であり、汗ばむほどだ。途中林道と出会うあたりにクレーン車が見える。除雪されているようだ。

これで楽チンだと、時間はまだ10時前。やんちゃな三人は帰るのが惜しいかのように、クレーンに乗ったりしてしばらくプレイタイム。

最後の林道ではTKさんがたくさんフキノトウや山菜を見つけて取ってくれた。車道で装備を解き、店開きの日干しをして、楽しかった山行の余韻を楽しむ。お風呂に入り、ガソリンスタンドで教えてもらった、上毛高原駅前の石臼引きのお蕎麦屋さんで昼食。

そのあと時間もあるので、帰路はちょっと回り道のドライブとしゃれ込んで、三国峠から法師温泉をまわって帰途についた。やさしく愉快な仲間とののんびり雪山山行。楽しかった。ありがとう。

たかまたぎ7 たかまたぎ8

4月14日 毛渡沢橋7:00-棒立山12:20/12:40-タカマタギ13:10/13:25-日白山14:50/15-長釣尾根C1420m(BP)

4月15日 BP7:30-毛渡沢8:50/9:15-毛渡沢橋10:15

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