同角沢

2005年9月3日

前の週に上越の沢が雨で中退となったため、仕切り直しをしようとTKさんが選んでくれたのが同角沢だった。私には難しいのではないかと思ったけれど、リーダーは意に介する様子もないので、身を任せることにした。入会を検討中のKmさんも参加する。

玄倉林道車止めの駐車場で三者三様に仮眠。のんびり朝食を取っていると数人の中年パーティが到着する。モチコシ沢に入るらしい。玄倉林道を歩いて六つ目のトンネルを過ぎてしばらくすると同角沢出合と小さく書かれた赤ペンキの印が目についた。このあたりで沢装備をつけ、はっきりした踏み跡を下降して玄倉川におりる。コバルトブルーの水と白い花崗岩のコントラストが美しい。すぐに左手の対岸前方に滝が見え、そこが出合であることがわかる。

出合の滝、2段15mは右壁を登れば簡単らしいが、我がリーダーは手がかりの乏しい右側の水鉛を果敢に登って行く。ロープで確保されているものの、途中が一枚岩の壁のようになっていて、どうやって攻めればいいのやら・・・しょっぱなからショッパイ登りとなる。

トイ状のナメ滝を越すとすぐに20m三重の滝へ。右側に鎖があるので、これを登るのかと思いきや、TKさんは「せっかくだから直登しましょう」という。こうなったら頼もしいリーダーのリードで大船に乗った気持ち、になるしかない。落ち口あたりの手がかりが乏しく、ほとんどゴボウで登ってしまう。

上段を抜けるとまた20m滝だ。つぎつぎとなんとエキサイティングな沢だろう。不動ノ滝はシャワークライムになりそうだ。TKさんが1段上のバンドまで左から登り、滝ノ中をトラバースして右壁を登る。左壁を直上するルートも考えられるが、上部がハングしていてアブミなしでは無理のようだ。けっこう水量があり、バンドからのトラバースで行きができないくらい顔面に水を浴びて怖くなり、一度引き返してしまう。

けれど両岸を見上げても高巻くこともできなそうで、一瞬ここで敗退か、という気持ちがよぎったが、意を決してもう一度トライすることに。思い切って突っ込んで行くと、今度はなぜか虹が見えて目の前があかるく、あっさりとトラバースできた。要は思いっきりかな。

堰堤を越えると、だるま岩が沢をふさぐように覆い被さっており、裏側が岩室のようになっている。快適な泊り場になりそうな所だ。ゴルジュを通過するといくつか小滝が続き、シャワークライムしたり突っ張りで登ったりと、楽しく遡行していく。

そしてあらわれた25mの無名滝も威圧的である。これを登るのかぁ~。ここも左から取り付いて中段あたりで滝ノ中をトラバースして右壁のクラックを登る。TKさんが水しぶきを浴びながら滝の中に消えていく姿が、恐ろしくも幻想的。息をのんで見上げていると、しばらくして右側のクラックに再び姿をあらわした。ああ、また滝に突っ込まなければならないんだと、心を奮い立たせる。

トラバース地点に近づくとすごい水勢にまたもや圧倒される。そこで少し下がってもう一度ルートをじっくり確認。そして、いざ突入!すると頭は滝をくぐり抜けることができたが、体が滝に打たれた状態で身動きできなくなり、必死でホールドに手をかけるまでの間、かなりの時間(に感じられた)ひたすら滝修行をするはめいなってしまった。

ようやく抜けて落ち口によじ登る。もたついていたことの照れ隠しと、なんとかクリアできたという安堵感で、「これまでの悪行を全部洗い流してきちゃいましたよ」と軽口がでる。これまで悪行の数々を重ねたせいか、随分時間がかかったけれどね、とも。

これで核心部が終わった気分になるが、最後に遺言棚が残っている。どんなに恐ろしい滝かと思いきや、一見それほど悪そうには見えず、大げさな名前だなあと思う。滝修行をくぐり抜けたあとは怖いもの知らずの勢いで、不遜にもここはザイルなくても大丈夫そーですね、などといってしまう。

たしかにバンド状の下段を左に斜上してテラスにでるまでは問題ないが、そこからフェースを直上した上部は岩がもろく、あまりいい手がかりもないので、ザイルがなかったら冷や汗ものだったと、軽率な言動を反省する。

滝上のゴーロを少し進むと、東沢乗越への道が横切る地点だ。気付かずに進んでしまったが、KMさんがケルンを見つけ、ここで遡行を終了した。下山路は当初同角山稜コースからユーシン経由を予定していたが、東沢乗越から東沢を下り、小川谷出合経由に変更。途中で小川谷を下降しようという提案もあったが、滝修行で時間を食ってしまい、今回はあきらめることに。

東沢への下降路は崩壊が進んでザレ場が多く、とたんに別の弱点が露呈してしまう。後ろからTKさんに「やーい、へっぴり腰!」とやじられながら、ようやく東沢に降りホッとする。ナメが続き歩きやすい。小川谷に近づくと釣り人がちらほら。小川谷出合いで装備をとき、しばし休憩。

同角沢はきれいで面白怖くて、予想を遙香に上回る楽しさだった。滝をつけるときは及び腰だと逆効果だということも身をもって体験した。次回があれば、小川谷とつなげてみたい。最高の一日になるに違いない。

TKさんの教育的配慮で、ルートを考えながら先頭を歩く訓練もでき、だんだん楽しくなってきた。これでいつか、滝があらわれたときも先頭を行き続けられるようになるのだろうか。そして、このエキサイティングなお試し山行のあと、KMさんが入会したのはいうまでもないことであった。

林道車止め6:30-同角沢出合7:40/8:00-遺言棚上13:00-終了点13:15-小川谷出合14:45/15:15-林道車止め17:00

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