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2021.09.25
神宮川ヤチキ沢
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2021年9月24日

沢泊の山旅の日程が立てづらいため、日帰りできていつもとは違うタイプの沢を開拓しようということになった。まずは南アルプス前衛の日向山周辺で、短く手軽に遡行できるヤチキ沢を選んだ。登山地図には名称が出ていないくらいの小さな沢だ。ここならば当日発でも無理なく遡行できる。小淵沢駅からも近く、サントリー白州工場の敷地沿いの林道を進みアクセスもいい。

神宮川はもともと濁川という名称を変更したもので全国的にも珍しいケースとのこと。歴史的に濁川からは毎年若者の奉仕活動で明治神宮に白玉砂利の奉納を続けてきた。後年になり美しい河川でありながら「にごり川」ではイメージにあわない。折から「サントリー工場の建設等色々の面での開発が進められ」神宮川は脚光を浴びる川になるだろう。(以上、山梨歴史文学館広報の概要)これを読んで、なるほどサントリーウィスキー白州工場の源泉が濁川ではイメージよくないものねと、妙に納得する。

というのは余談として、車止めゲートから河原におりると確かに一面白砂だ。けれど川の水は白砂の成分のせいか確かに濁っている。前方の巨大堰堤を右岸から巻き上がると林道らしい道が続いており、ヤチキ沢出合いまで林道をたどる(というか、最初から対岸に行けば林道がつづいていたようだった)。出合いは何もない広場のようでパッとしないが少し奥からは岩盤状の緩い滝状がいく段にもなって上まで続いて見える。途中で出会った先行者の出発を待ちながら出合い広場でしばらくもぐもぐタイムをとる。

花崗岩の階段状の滝なのか強い傾斜なのか区別がつかないほどに、くねりながらたるむことなく流れがつづく。楽しく登っていけるのだが、最初の滝で水流を避けようとしたところ岩がもろく触ると動いたりするので気が抜けない。むしろ水流の中の方がしっかりしており、ぬめりもないことがわかってからは積極的に水流をたどる。

いままで行ったことのないタイプの沢だと言いながらどんどん快適に登るが息つく暇がない。前回の中門沢を巡る沢ではなかなか標高を上げず、たるみすぎて疲れてしまったが、ヤチキ沢はどんどん標高をかせぐので息切れする。けっきょくは、何をやっても疲れやすい年頃になっているだけ。前半では上部が直瀑の二段滝だけ巻いた。手がかりは見えたが濡れそうだったのであっさりと左岸の樹林から巻いた。

 

 

 

 

途中で岩滝ゴーロがしばらく続くが、岩はみな苔むしており景観は悪くない。1140m付近で二俣となるが、地図では読み取れない地形だ。どうなっているのか興味があったが、切れ込んだ沢筋ではなく岩盤に沿って水が流れている地形となっていた。上部もナメが続き上部の連瀑帯につづく。下流部と違ってのっぺりとした一枚岩の傾斜のあるナメなので水流の中は怖い。30mナメ滝は左端の岩の切れ込みを拾いながらなんとか巻かずに登った。

1200m二俣は下山路の尾根に近い左俣へ進むが出合い8m滝の上段がのっぺりとしている。右手に岩角があったのでそこから這い上がろうとしたところ足元がぐずぐずですぐに崩れるため断念。右沢を少し登って小尾根をまたぎ左沢にもどった。流れは次第に細くなり源頭部となる。岩の隙間から湧き水のように流れ落ちる水がとても美味しかった。右沢はまだしばらく流れが続いているようだったが、もう十分だと思いケモノ道のような踏み跡を拾いながら日向山北東尾根方向を目指して斜上トラバース。1450m付近で尾根にのった。

あとは尾根を下ればいいと思ったのだが、これがなかなか一筋縄ではいかず、今回の核心かもしれなかった。1240mからは北尾根に入り1130mから北西尾根をくだるつもりだったが、最後のところで予定外の地形が続いて迷いがでた。コンパスで方向を確認しGPSで現在地を見てもずれていないのに目の前の地形はどうも地図と違う。そういう例はいままでもあったはずなのに目先の方向にとらわれて違う小尾根にのってしまったらしい。幸い眼下には樹林越しに白い河原がみえたのでヒヤヒヤのトラバースを続けながら下り最後は涸沢から林道におり立った。まったくヤレヤレ、こんなはずではなかったが、対岸がちょうと林道車止め。終わりよければ全て良しといいながら林道をテクテク駐車地点にもどった。

沢自体は短い流程の中にぎっしりと中身が詰まった手軽に楽しめる沢だった。いくつかある下山路はどれもひと癖ありそうな印象だったので、長くても楽そうなルートを選んだつもりが地図ではわからない地形に惑わされた。いままで経験したことのないタイプの地形で、あとで振り返ればいい経験をすることができ、(先があるかどうかわからないけれど)今後の教訓にしたいと思った。う〜ん、今頃それをいうのは10年遅い!ですよね。

 

 

 

 

 

林道車止め10:10ーヤチキ沢出合10:25/10:40ー1250m左沢源頭12:30/12:50ー北東尾根13:40ー林道車止め15:40