ブナの沢旅ブナの沢旅
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2021.07.20
大行沢〜樋ノ沢〜カケス沢左俣
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2021年7月20-21日

久しぶりのテント山行。長野県境の穏やかな沢歩きと焚火とキスゲの群生を楽しみにしていたのだが、山沿いは午後から連日雷雨予報だった。予期せず雨に降られるのは仕方ないとして、最初から宣言されては気持ちが怯む。いつもならそんなときはすぐに日程を変更するのだがワクチン接種が控えている。ぐずぐず悩んだ末夜に雨予報のない東北南部、おなじみの二口山塊に落ち着いた。

行きたい沢は他にあっても仲間のリハビリ仕上げ的性格のため、緩めの沢にした。そういえば2年前は私の腰椎骨折のリハビリ沢歩きで大行沢樋ノ沢に日帰りした。大行沢は世間のなんとか言う決まり文句の評価とは違い、今の私たちにとってはリハビリ沢になっている。

いつものように二口キャンプ場近くの登山口から歩き始める。何度訪れても下部のゴルジュから入渓することはない。途中の巨岩帯も疲れるのでパスする。一度くらいは経験してもいいかなと思わなくもないけれど、そこに限られた時間とエネルギーをかけるよりは上流部の樋ノ沢を最後まで歩いた方がブナの沢旅らしい。(と、いいわけがましい?)標高が低いので早くも暑さにバテ気味になりながらケヤキ沢を過ぎたあたりで入渓する。ちょうどナメが始まるあたりだ。

沢幅いっぱいのナメを進む。以前よりも倒木が増えているようだが、沢は生き物。そのうちにまたクリーンアップされるのだろうか。カケス沢出合のテントサイトはよく整地されており、太い薪がたくさん残されていた。本来はきれいに片付けて撤収すべきなのだけれど、ありがたく使わせてもらう。ツェルトとタープを張り、軽く食事をしてから空身で先に進む。避難小屋下の滝を登り、樋ノ沢に入る。こちらは以前と変わらないきれいな渓相のままだ。沢幅は小振りだが、ブナ林に囲まれた穏やかなナメが続く。大きな滝はないけれど甌穴と小滝、ミニミニゴルジュがアクセントを添える。

 

 

 

 

 

二度のゴーロを挟みナメ帯が三箇所つづくと記憶していたので、奥の二俣手前の三度目のナメが途切れるところまで行って戻る。いいとこ取りの沢歩きなので往復するのが楽しい。避難小屋をのぞいて沢沿いの幕営地に戻り焚火に取り掛かる。避難小屋はすてきな場所にあってきれいに整頓されているのだけれど、沢中にあるせいかいつ来てもカビ臭い印象であまり泊まりたいとは思わないのがホンネのところ。

夕方も空は晴れ渡り、焚火のためにはるばるやってきてよかった。近場の沢では得られない穏やかなブナ林に囲まれたテントサイト。火はどんどん燃えさかり青白い煙が森の中を漂う。ささやかな夕餉でお腹と気持ちを満たしてツェルトにもどっても外はまだ薄明るい。

と、これでおやすみなさ〜いとなればいいのだけれど、やぶ蚊に悩まされる。今まで夏でもあまり虫の被害はなかったので油断していた。おまけに中は蒸し暑い。たまらず夜中に起き出して、もうヤケクソ気味に焚火の第二ラウンド。樹林越しに星が見える。翌日も晴れてくれればいいな。

 

 

翌朝も午前中までは天気がもちそうだ。テントはそのままにして6時前に出発し、カケス沢の左俣を遡行する。カケス沢は小難しい滝がつづく右俣の方が遡行価値があるように思われているらしい。じつは10年前の6月初旬に右俣に入ったのだが、途中から連続するスラブ滝が雪渓で覆われていてそそくさと引き返したことがあった。自分たちには向いていない沢だった。左俣はナメ滝が続く沢なのでいつか遡行してみたいと思いながら月日がながれようやく機会を得た。

テントサイトの裏からカケス沢に下るとすぐに二俣となる。左俣に入るとさっそく緩やかなナメ滝に迎えられる。しばらくは小さく平凡な沢を進むと前半のハイライトか。3段50mのナメ滝があらわれる。下段は倒木伝いに登って上段を見上げるが全容は見えない。それほど傾斜はきつくないのでフリクションで登れそうだが、一度スリップすると下まで止まらないだろう。後半は樹林ぎわを巻く。

滝の落ち口を確認したところで沢に戻ると数十メートルのナメ滝が見下ろせた。実際には続く5m滝も巻いたようだった。その後はしばら穏やかなナメとなったのち、しだいに荒れ気味のゴーロ沢となる。う〜ん、もっときれいな沢を想像していたのだけれどなあ。でも、沢はイマイチだけれど両岸のブナ林がきれいだ。

小滝を巻いたり登ったりして進み、いよいよ2段60mナメ滝となる。1段目15mは左岸の岩壁状からとりついて樹林ぎわに逃げた。上段はかなり斜度のあるナメ滝がはるか頭上の奥まで続いている。藪に入って水流沿いを登るが、足元が崩れて登りにくいため傾斜が緩むところまでロープを出した。

上部で水流を左にまたぐのだが、なかなか足がだせない。滑らないとわかっていても万万が一滑ったらはるか下まであっという間に滑り落ちてしまうからだ。補助ロープで確保してもらい足をおけば予想通りなんということはなかったけれど。。。右岸の樹林ぎわを巻くように登り傾斜がなくなったところで沢にもどる。普段はめったにしない長い高巻きを終えてホッと一休み。これで悪いところは終わったと安堵する。

その後現れる小滝は概ね直登または小さく巻くことができる。しだいに源頭部の様相となり登山道の交差点に気をつけながらの遡行となる。水流のある沢筋をたどればいいのだがGPSの地図の登山道が実際より数十メートル下についていたため惑わされてしまう。(下調べをしっかりしておけばよかったのだが、これもルーファイの面白さと思うことにする)登山道はトラバース道から明瞭な尾根を下るので尾根の方向に軽いヤブを進むと涸沢を横断するところにテープがあり登山道に合流した。

とても雰囲気のいいブナ林の登山道を気持ち良く進むが、1000mあたりから一気に痩せ尾根の激下りとなる。暑さと苦手な激下りでかなり参る。カケス沢右俣に降り立った時は沢に倒れ込まんばかりに水につかってクールダウン。少し下ると有名な北石橋だ。これまで二回下から登山道を登って見学に来ている。上に登山道が続いているのが気になっていたが、その道を歩いてきたわけだ。

石橋の下におりる道もあるがもう十分だと言ってパスする。ブナの森が広がってとても雰囲気がいい登山道を脱力気味にくだってテントサイトにもどった。いままで何度も訪れている大行沢だが、今回は新たにずっと気になっていたナメ沢に踏み入ることができてよかった。なるほど、こういう沢だったのかと。。。そして改めて思った。やっぱりナメは横がいい。テントサイトを後にし、ゆったりとした大行沢をもう一度いとおしむように下ってから下山した。

 

 

 

 

 

 

 

(右上の北石橋は10年前に下からとったもの)

 

登山口9:40ーカケス沢出合12:45/13:15ー樋ノ沢往復ーテントサイト16:30//5:45ーカケス沢左俣ー北石橋10:20/40ー11:40テントサイト12:30ー登山口15:20