ブナの沢旅ブナの沢旅
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2021.06.21
センノ沢〜尾瀬沼
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2021年6月21日

ようやく沢シーズンイン。といっても、仲間のリハビリを兼ねているので慎重に行き先を検討し、沢歩きプラス簡単に登れる滝がある尾瀬のセンノ沢を選んだ。センノ沢は短い沢だけれどきれいなナメとナメ滝をちりばめた好印象の沢だ。最初に遡行したのは10年ほど前のこと。まだGPSを持っておらず最後の詰めを間違えてなかなか湿原に抜けられずウロウロした。2度目は小淵沢を遡行した翌日に下降したのはいいけれど増水のため一ノ瀬川と合わせたところで渡渉できずウロウロした。そんな記憶と共にあるセンノ沢を久しぶりに歩いた。

短い沢ながら入渓後の下山ルートが長いため前夜発とした。当初は沼田の道の駅白沢を予定していたが日帰り温泉客が多いのか夜でも駐車場は一杯で、施設内でテントを張れるようなところもなかったため大清水まで進むことにした。奥の駐車場には数台駐車していたがみな小屋泊まりの人たちのものだということが後でわかった。

空が白むまえから鳥の鳴き声で目がさめるがまだ4時前だった。いつの間にか季節は進み21日は早くも夏至だということに気づく。日が長い沢シーズンにまだ泊まりの沢旅どころか沢始めさえできていない。これから少しずつ日が短くなっていくと思うと複雑な気持ちになる。軽く朝食をとって5時過ぎには出発する。予想以上に気温が低く、歩き始めた時気温は10度を下回っていた。車道を歩いていると早くもハイカーを乗せたシャトルタクシーが通り過ぎていくが、歩かないと寒い。一ノ瀬休憩所までは入渓前のウォーミングアップにちょうどよい距離だった。

休憩所で沢靴に履き替え三平橋から沢を見下ろすと平水のようで安心する。苔むした階段を下って本流を渡渉し出合は貧相なセンノ沢に入る。朝から沢に日が差し込み明るい雰囲気が気持ちを和ませる。すぐにあらわれる8mほどのナメ滝を左壁から登ると長いナメが続き、以前と変わらない溪相がうれしい。滝はみな容易に登れる小滝なので医者に右腕は90度以上上げるなと言われている仲間も不安はないようだ。

中盤で多少平凡になるが再び黒いナメとなり小滝が続く。早くも源頭の様相となるが、これで見所は終わりかと思うとフィナーレのように庭園風の幅広ナメがあらわれる。1660m二俣は右へ。初めて来た時は水流の多い左に進み軌道修正に手間取ったところだ。さらに1700mで湿原に続く右沢へ進む。水流にそって時々藪を巻きながら進むが、地図の明確な沢型より多少西に向いている。おかしいと思いながら水流に沿って湿原に向かっているのでそのまま進むとほとんど藪もなくセン沢田代の南端に飛び出した。

沢を詰めると湿原に導かれるというのは尾瀬の沢の魅力だ。それほど広くもないし華やかさのある田代ではないけれど、登山道の奥にひっそりとたたずんでいる。樹林に囲まれてぽっかり空いた草原と縁取りのように群生するコバイケイソウとタテヤマリンドウ。ちいさな沢を歩いてたどり着くのにふさわしい姿のように感じられた。

 

 

  

 

 

登山道手前で靴を履き換え、尾瀬沼へ向かう。ゆったりとアップダウンを繰り返す登山道には倒木が目立つ。尾根が広いので残雪期には迷いそうな地形だ。大清水平にはもう終わりかと思っていた水芭蕉の群生が見られた。皿伏山のコースは登山者が少ないようで誰もいない広い湿原の木道休憩場所でザックを降ろしてまったりする。もう少しするとワタスゲも最盛期の美しいワタゲを広げるのだろう。

尾瀬沼に下って沼尻分岐からは木道となり観光メインストリートの様相となる。尾瀬沼ごしに燧ヶ岳が美しい。三平下はいつも登山者で賑わっている印象だが今回は静かで閑散としていた。時間もあるので長蔵小屋まで散策する。開けた湖岸の散策路はとても気持ちがよく、燧ヶ岳がさらに美しい。人出が少ない静かな尾瀬なら尾瀬ヶ原なども歩いてみたい。キスゲが咲き始めると多くの人が訪れるのだろうが今回は端境期なのかほんとに静かで好ましい。小屋の休憩所で温かいコーヒーをいただき、長いけれどよく整備された登山道を淡々と歩いて大清水に戻った。

いわずもがなだが、沢遡行が3時間ほどであとは登山道と木道歩き。沢だけでいえばアプローチが長すぎるが、ハイキングに沢を組み入れたと思えば美しい沢と静かな尾瀬を楽しんだ充実の一日となった。あっ、でも沢始めってこと忘れてた!

 

  

 

大清水5:15ー三平橋下(入渓)6:30ーセン沢田代9:45ー長蔵小屋13:00ー大清水15:45