ブナの沢旅ブナの沢旅
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2021.03.16
枯木山
カテゴリー:雪山

2021年3月15-16日

いつもは南会津のブナ街道から眺めていた枯木山。福島側から登るものだとばかり思っていたので積雪期に小さなコブが連続するあのギザギザ尾根など無縁だと思い込んでいた。けれど後に栃木側から普通の尾根をたどって容易に登ることができることを知った。でもそれって裏口ルートのようだと思った。今はそんなことはコレッポチも思っていないが、これも「若気のいたり?」だったのだろう。

そんな山に湯西川温泉から登ってみることにした。なにしろ南会津の奥の地味で取り柄がないながらも気になる山だったからだ。せっかくだから山麓の歴史を少し調べてみた。湯西川温泉から枯木山に続く北に延びる尾根は古の人々の下野と会津の交流を支える古道だったらしい。がぜん興味が湧いてきた。(雑記帳へ)

ルートは幾つかあるが、最近の遅いペースを考え一番短くて登りやすそうな木ノ沢林道から登ることにした。野岩鉄道で湯西川温泉駅へ。今シーズンはよく利用している路線だ。バスの本数が少ないのでタクシーを利用して木ノ沢林道出合へ。しばらく林道沿いを歩き小沢をまたいで枝尾根を登る。最後の100mほどは雪の消えた急登となる。1050m付近の尾根にのると傾斜のゆるい雪尾根となる。

ところどころ急斜面や雪のはがれかけた痩せ尾根となるが、おおむね穏やかな尾根歩き。1220mで尾根が西向きになると1692m峰と県境尾根が見渡せる。1400mを越えるとブナの尾根となり雰囲気がいい。また南会津のブナ尾根のようだと思ってしまう。1467mからは麓の花和付近から登る尾根が見えてくる。枯木峠古道だ。

しだいに風がでてきたので幕営地が気になる。山毛欅沢山では強風のテント泊で大変な思いをしたのでできるだけ風の通り道は避けたい。1500mを越えた三方境のような平坦地は樹林に囲まれていて風が弱い。もう少し進んでもいい時間だったが防風を優先してザックを下ろした。整地が不要なので設営は楽だった。枯れ木が豊富なので焚き火もできたが、最近の足尾の山火事を思うと憚られたため早々とテントに入った。

 

 

 

日の出を見て出発するとしだいに雲が出始める。しばらくは傾斜のない樹林の尾根を進むと二重山稜のような地形となって尾根が開ける。どこでもテントが張れそうな気持ちの良い広尾根だ。1692mが近づくとガチガチの急斜面となりピッケルをさしながら慎重に登る。ポコ直下は雪庇の張り出しがすごいが東側を容易に登って乗り上げる。まるでここが山頂のように展望がいい。荒海山が凛々しくそびえているのが目に入る。

一旦下って山頂の南端に乗るところが無木立の急斜面。ちょっと怯んだがアイゼンでしっかり踏み込みながら周りを見ないようにして登る。最後は雪庇の壁になっており先行した仲間の手を借りて乗り上げる。東側は大きく波打った雪庇が張り出している。振り返ると田代山の白い台地が遠望される。大嵐山に続く尾根も明瞭だ。おおむね穏やかな雪尾根でいつか(なんてもうないだろうけど)歩いてみたいと興味をそそられる。

山頂までは緩やかながら意外と長い。これ以上高いところが無いところの木(ツゲザクラ?)に標識がみえた。ようやく着いたようだ。どうということのない山頂だが嬉しい。少し前までは縁がないと思っていた枯木山にやってこれたのがうれしい。西の端に進むと会津駒から遠く丸山岳につづく真っ白な稜線が見渡せる。さらに奥には浅草岳と守門も。稲子山から山毛欅街道もずっと続いて見えて目を凝らせばはるか端にはちょこっと白い城郭朝日山も。飯豊連峰は蜃気楼のように浮かんでみえる。こんなに展望の良い山だとは思わなかったので山座同定が楽しい。眼下の土倉山はかなり渋いらしいが顕著な山容だ。南会津の山がみんな見えるような気さえする。

山頂で過ごしているうちに青空が広がる。無木立の斜面を下って枯木山を振り返る。ほんとに来れてよかった。太陽がでてくるととたんに雪が緩み始め、行きはこわごわと登ったので心配だった急斜面はアイゼンがしっかり刺さって安定して下れた。あとはゆるゆると余韻に浸りながらテントにもどった。

 

 

 

 

 

 

木ノ沢林道入口9:30ー尾根取付き10:30ー1050m11:45ー1467m14:15ー1510m幕営地15:00//6:30ー1692m7:35ー山頂8:25/8:50ー幕営地10:15ー林道入口14:05