ブナの沢旅ブナの沢旅
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2021.03.24
栗子山〜七ツ森
カテゴリー:雪山

2021年3月23-24日

栗子山塊の滑谷沢や栗子山に行くたびに、背稜から離れ奥まったところにある七ツ森が気になっていた。美しいブナ林を抱える栗子山塊の最高峰(といっても栗子山よりわずか2m高いだけだが)であり、縦走路からもひときわそびえ立つ「名峰」なのだ。冬の栗子山へは11年前に初めて訪れた。滑谷沢源頭部の尾根をつないで七ツ森に続く尾根に乗り栗子山に戻ろうという計画だったが悪天候のため計画を縮小した。栗子山ではホワイトアウト状態となった。

そんないわくのある栗子山から七ツ森へ行くことが今回の山旅の目的だった。当日発という時間の制約があるので一番短時間で栗子山に登れる山形側の栗子隧道への道を利用することにした。福島駅から国道13号を一路米沢スキー場隣の採石場へ向かう。休日や午前8時前では国道から採石場に入る道が閉鎖されるが、幸い出発が遅いので奥まで入ることができた。採石場の事務所で来場者名簿に記帳すると採石場の奥にある万世大路栗子隧道散策路入口前に駐車するよう指示を受ける。

散策路入口からは除雪しておらず栗子隧道まで4キロほどの道のりをワカンで進む。かつての万世大路だ。保存会が手入れをしているようで、随所に標識が立てられていた。いつもは福島側の二ツ小屋隧道をくぐり抜けていたが山形側の隧道は初めてだ。雪に埋もれた隧道の中を覗くと奥には何本もの氷柱が見えた。山形側の隧道は立ち入り禁止で通り抜けることはできないが、2010年2月に二ツ小屋隧道を通り抜けた時には途中何箇所かと出口に大きな氷柱ができていて感激したのを覚えている。

 

(上の写真は2010年2月二ツ小屋隧道と隧道内の氷柱)

隧道の隣にはほとんど崩壊した明治時代の古い隧道跡もあり、こちらではめずらしい氷筍が見られた。一通り見学したのち杭甲山1202m鞍部に登る取り付き口を探す。アイゼンに履き替えピッケルを出す。粉雪が舞い木々には霧氷がついて寒々としているが美しい。傾斜の強いクラスト斜面となっているため樹間を縫いながら強くアイゼンをけり込み慎重に登る。灌木帯となり傾斜が緩みだすと稜線の鞍部が近い。赤布が巻いてあった。

 

 

滑谷沢右俣を遡行して栗子山へ登るとこの鞍部から三本松沢へ下って大平橋に乗り上げる。一番最近の遡行はわずか5ヶ月前のことで、沢と雪山と、今回で5回目だ。低山のちっぽけな山域なのだが、何もないけどブナ林のゆったりとした雰囲気が好きなのだろうな。

栗子山に向かうがガスが濃くなり、またしても山頂はほとんど視界がない。翌日は晴れると確信しているのでこれまでの記憶とGPSで山頂を特定してすぐに先へ進む。山頂付近は茫漠としているのでルート取りが難しい。コンパスで方向を定めて時折霞んで見える地形で尾根を確認しながら七ツ森分岐へ。ゆったりとした広尾根なので頻繁にコンパスで方向を確かめながら進む。視界があれば何の問題もない尾根だ。

淡々と進んでいくうちにどんよりとした空が多少明るくなり視界も出てきた。予報では午後3時から晴れマークが出ていたので期待する。1127mで尾根は東に曲がる。鞍部からポコに乗ると突然のように青空が広がり豪士山につづく尾根を見下ろす。思わず歓喜の声をあげ悲壮感ただよっていた気持ちも晴れる。北東方向にひときわ白く際立つ峰が見える。きっと七ツ森に違いない。

両岸にブナの森が広がるこんもり盛り上がった尾根を緩やかに降って七ツ森分岐へ向かう。しばらくは青空と雲のせめぎ合いとなるが霧氷が青空に映えて美しい。

七ツ森分岐でザックを降ろし、ようやくゆっくり休憩する。初日は最低限分岐まで進みたかったので一応目標は達成した。翌日のコース状況がわからないのでもう少し先へ進む。霧氷に飾られた尾根歩きなんて久しぶりだと喜ぶ。滑谷沢の源頭部に張り出した尾根には霧氷のブナ林が整然と並んでいる。美しい光景に目を細めながら小さなポコに乗ると眼下に広い鞍部が見える。そこまで下ってテントを張ることに決めた。

風もなく整地がまったく不要なため設営は短時間で完了。青空のもと、しばらくは外で景色を眺めたり散歩したりして過ごす。日が沈むと東は福島市街、西は米沢の街灯りがキラキラと明るくきれいに見える。とても贅沢なテントサイトと明日の七ツ森に乾杯して初日を終えた。

 

 

 

 

春分の日を過ぎると朝が早い。見渡す限りの快晴だが霧氷がすべてなくなり山は一夜にして冬から春に衣替えしている。テントを潰しハイキングのいで立ちで出発する。目の前のポコに乗り上げると行く手の広尾根にはすばらしいブナ林が広がっており思わずため息交じりの歓声。と同時に欲張って昨日もっと進めば霧氷の姿を見ることができたのにと悔しがる。

1124m手前の広い鞍部はさながらブナの楽園といった雰囲気だ。訪れる人もまれなこんな小さな山にひっそりとたたずむ姿が愛おしく感じられる。1124mポコは360度の展望で、まるでここが七ツ森かしらという錯覚さえおきるほどだ。見渡す七ツ森は部分的にヤブがでているが概ね雪が繋がっている。

いよいよ山頂に向けて細尾根の登りだ。雪が繋がって見えたところは雪庇の張り出しなので見かけ以上にヤブを絡めての登りとなる。それほど密ではないが途端にペースが落ちる。1時間ほどでヤブから解放されると傾斜が緩んだ雪尾根となり、まさにビクトリーロードの感あり。平頂に乗ると奥に白い三角錐が見えた。三角点のある山頂のようだ。反対側は切れ落ちているので立って近づくのが怖いが、ささやかながらも登頂達成。10年来の山についにやってきたという深い喜びを感じる。

蔵王連峰が近い。月山は霞んでいるが3週間前に行った赤見堂から朝日連峰の山並みを見渡す。さらに一息おいて真っ白な飯豊。南にはお椀をひっくり返したようとも言えない山らしくない栗子山の向こうに吾妻連峰が広がりその奥には安達太良山。南東北の山がみんな見える。

 

 

 

 

 

きっともう来ることはないだろうと思いながらおセンチに別れを告げて来た道をもどる。ヤブを抜けもう一度ブナの森を歩く。七ツ森まで行かなくても1124mまでならまた立ち寄ってもいいなと思いながらテン場にもどる。荷物を片付けコーヒータイムでくつろぐ。さあこれからはきのう悪天で見逃した栗子山までの稜線漫歩を楽しもうと出発する。

小さなポコは谷側をできるだけ巻いて進む。平坦な地形ながら小さなアップダウンが次第にこたえてくる。栗子山でやれやれとザックを下ろすと昨日は気づかなかったテープがあった。ぴたり山頂だった。無雪期には背丈ほどのヤブに囲まれているが今はヤブがすっかり雪の下だ。雪面も朝晩はクラストしておりとても1200mぽっちの山とは思えない。冬は常に強風にさらされ悪天候の日が多いらしい。日本海に面しているわけでなく朝日も飯豊もあるのに湿った日本海の空気は低いながらも分水嶺にまで届くのだろうか、なんて素朴な疑問を語り合う。

1202m鞍部からの急斜面の下りが気がかりだったが午後になり雪が緩んだためアイゼンがしっかり刺さる。仲間はどんどん下っていくが私はどうしてもへっぴり腰だ。傾斜が緩みブナ林の広がりを見下ろすようになってようやくペースを取り戻し最後は快適に隧道の林道終端に降り立った。

 

  

 

栗子隧道入口9:40ー栗子隧道11:30/11:50ー杭甲山鞍部13:00ー栗子山14:00ー七ツ森分岐15:20ー幕営地15:55//6:15ー七ツ森8:35/8:50ー幕営地10:40/11:20ー栗子山13:15/13:30ー栗子隧道14:40ー登山口16:00