ブナの沢旅ブナの沢旅
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2021.02.02
白毛門
カテゴリー:雪山

2021年2月1日

なぜ毎年冬に白毛門に登るのか。確かに雪を纏った一ノ倉谷の荘厳な岩壁を間近に眺めることができるし、その奥に広がる山々の展望もいい。けれど急登一辺倒の往復はそれほど楽しいこともなく、ブナ林は中腹に少しあるけれどゆったりとした森歩きの雰囲気ではない。

なのに毎年必ず足を運んでいる。というのも、車を使わないでも朝発の電車とバスで容易に行ける数少ない雪山であり、谷川岳のように晴れた日の休日でも登山者が鈴なりに列をなすなんてことはない静かな山だから。だと思う。

上毛高原駅から谷川ロープーウェイ駅行きのバスに乗るが、平日はロープーウェイが運休中なので好天にもかかわらず他に登山者はいない。こんなことは初めてだ。出発間際にピッケルをさした単独登山者が乗ってきたので、ひょっとして白毛門かななどと思う。今回は荒天後の平日なのでトレースがないかもしれないが、それはそれでラッセルを楽しめる。トレースがあれば山頂を踏める。どちらのオプションでもいいと思ってきた。

しばらくすると、同乗の男性がどこへ行くのかを声をかけてきた。話を聞くとロープーウェイが運休だということを知らずに来たのだという。ならば白毛門で一緒にラッセルしませんかなんて言ってみたけれど、シューやワカンも持参していないとのこと。土合橋で別れたがどうされただろうか。雪山を予定する場合はちゃんと調べないといけませんね。

バスを降りるとすぐにオプション後者であることがわかった。昨年は松ノ木沢の頭までも行けずに引き返したので、これで山頂行けそうだなと思う。東黒沢の橋を渡るところで早くも単独の若者が降りてきたので聞くと、松ノ木沢の頭でトレースがなくなり戻ってきたけれど、その後に馬力のある若者が先を進んでいったとの情報。

最初からアイゼンでもそれほどもぐらず歩き易い。膝痛の心配を抱えている仲間は最初白毛門は避けたいと言っていたが、雪が多いので無雪期の嫌な木の根やゴロ岩の急登りより楽なようで、ゆっくりペースで登る。ふたたび若者が降りてきたので最初にあった若者の話をすると、(先に進んだのは)それは私です、とのこと。山頂は風が強いので注意するようにとのアドバイスを受ける。

天気は最初は上々だったが風が出てきて雲が広がり始めた。松ノ木沢の頭を超えて最後の急斜面を登る頃にはトレースも消えて視界がほとんどなくなってしまった。いつも青空山行を心がけているので悪天になると気持ちもなえてくる。けれど帰りのバスのタイムリミットまでは頑張ろうと、ひたすら急斜面のラッセルに励む。

後ろで、そろそろ引き返してもいいのでは、なんて声もする。もう少し上の尾根に乗り上げるまでと進んでいくと、これ以上言うのは諦めたようで付き合うことにしたらしい。急登をやり過ごすと緩やかになる。ここまできたら山頂まで行くことに。何も見えないのだけれど、意味のない意地のようなものに突き動かされていた。幸い風が弱まったのが気持ちを楽にしてくれた。

今までで一番大変な思いをして登ったので、標識が見えた時は嬉しかった。本当はもう少し先なのだけれど、ここまできたらまあいいかなという気分。何も見えないのですぐに下山開始。するとどうだろう、見上げると雲の上にわずかに青空が見える。そして文字通り雲のカーテンが開けるように青空が広がり始めた。とてもドラマチックな展開に粘った甲斐があると喜ぶ。

苦労して登った雪壁も下りは早い。ふたたび青空の山並みを見下ろしながら、今日は頑張ったと気分がいい。今回はめまぐるしい天候の変化を体験でき、終わり良ければすべて良しの白毛門となった。

 

 

 

 

 

 

 

土合橋バス停8:50ー松ノ木沢の頭12:15ー山頂13:50ー土合橋バス停16:35