ブナの沢旅ブナの沢旅
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2021.01.25
窓明山〜家向山
カテゴリー:雪山

2021年1月25-26日

ようやく心待ちにしていた南会津の雪の山旅シーズンとなった。厳冬期とは思えない暖かく穏やかな天候に恵まれ一年ぶりの再訪を喜んだ。最近はシーズン最初に窓明山に登り、これから行きたい山をあれこれ遠望することが恒例のようになっている。今年は仲間が膝の不調で多少無理をしてもらったため、安全を見越して三岩岳へと周回せず窓明山往復とした。

会津高原尾瀬口駅から乗ったバスは相変わらず乗客がおらず高杖スキー場で一人下車してからは私たちだけとなった。保太沢橋手前で降ろしてもらう。昨年1月末には雪が少なく登山口の道標が出ていた。今年はさすがに埋まっていて1mほどの雪壁に乗り上げてからシューをはいて出発する。

歩き易い斜面を適当に登って登山道のある尾根に乗るが湿雪で重い。しばらく急登をやり過ごすと尾根が広がりブナ林となる。積雪が多いので低潅木はすべて雪に隠れてすっきりとしている。汗ばむほどの陽気の中、気持ちのいい山歩き。やっぱり南会津の山はいいねえー、ブナがきれいだねーとなんどもなんども思わず口にでてしまう。巽沢山から家向山の尾根に向かうとブナ林はさらにいい雰囲気となる。高度を上げるにつれ積雪が増えている。このところ雨が降ったり気温が上昇した日もあったので標高が低いところでは雪がとけたようだが、雨にならずに雪が降り積もったせいなのだろう。雪質も軽くほとんどラッセルせずに進めた。

家向山から尾根は西に方角を変え、一旦鞍部に急降下。少し登り返したあたりでザックを下ろした。もう少し先の平坦地を予定していたが、今回はピストンに切り替えたので先に進むまでもないと1410m付近の三岩岳と南面の展望がいい所にテントを張ることにした。雪も締まっていて整地が楽だった。それほど寒くもないのでこれで焚き火ができたら最高なのだが、枯枝一本落ちていない真っ白な雪面の厳冬期。わずかずつではあるけれど日は一日ごとに長くなっている。日が落ちてからは月が明るく星が煌いている。翌日も好天であることを期待しながら眠りについた。

 

 

 

窓明山を往復するだけなので朝はゆっくりと7時過ぎに出発する。朝陽を浴びたブナの影が雪面に影をのばして美しい。前方には真っ白な三岩岳から窓明山の稜線がそびえる。去年は低潅木がでていてイメージを損ねていたブナの広尾根は手つかずのまっさらな雪面となっている。以前はなぜか残雪期にくる山だと思っていたが、厳冬期の美しさを知った最近はどんどん前のめりになっている。

1600mを超えるとブナからダケカンバの疎林となる。振り返ると太平洋側は雲海に覆われており、幾重にも重なる大小の山並みが墨絵のようなグラデーション。栃木県境は雪も少なく一山ずつはあまり見栄えがしないけれど、こうして雲に浮かんで重畳する姿はとても美しい。

真っ白な山頂が近づいてくると、大きく枝を広げて樹形が美しいダケカンバが今年も目に止まる。稲子山から坪入山のブナ街道終端の尾根を懐かしく認めながら、最後は針葉樹林の低潅木をぬって真っ白な山頂への花道を登る。広く平らな山頂は周囲を囲むシラビソも雪に埋もれて展望が抜群だ。去年は積雪が少ないため展望が邪魔されたため少し下がった木々の隙間から見たところだ。

ザックをおいて山頂の北端にすすみ、丸山岳に10m近づいたなんて冗談を言いながら尾根筋を追う。どこからアプローチしても南会津最奥の山が意外と近く感じられた。またまた、きっと気持ちの強さが距離を縮めるんだよね、なんて喜びいさんで仲間に同意を求める。まるで春山のような穏やかな陽気のせいなのだろう。日程さえとれれば今でも行くことができそうだね、とも。

北側は会越の山並みが目一杯に並んで広がる。粟ヶ岳から守門、御神楽と顕著な山からさらに奥にはどこから見ても立派な飯豊連峰。今年はまた粟ヶ岳にも行きたいと思っている。もう12年前だが砥沢ヒュッテから登った粟ヶ岳の双児峰のかっこよさが今でも目に焼き付いている。雪山経験浅い時だったのでとても印象付けられたのだ。今年は視界がことさらクリアで越後平野が見渡せる。うーんと奥にポツンと見える三角錐の山はどこだろう、あれが米山かななどと地図を持たなかったことを悔やむ。

いうまでもなく西面は越後、奥只見のひときわ白い峰々の伽藍模様。だけど立派すぎて自分にはあまり縁がない山だな。未丈ヶ岳は昨年撤退したので、今年また行けるかな。こちらから見るとジャンクションピークはほんの小さなイボみたいな突起で、あんなところを下れず引き返したなんて笑っちゃうよね、とポツリ一言。梵天岳の奥に村杉岳が見えたことが意外だった。初めて気づいたのだが、なんだかうれしい。

お馴染みのブナ街道は今度だね。城郭朝日山も去年行ききれなかったけれど、途中のブナの森はとくに好きな場所なので何度でもトライしたい。文字どおりまん丸の丸山の奥に大博多山。複雑な地形だけれど丸山から繋げて歩けないだろうかと以前から興味があるところだ。

こんな風に一山ずつ見ていくとあっという間に時間がたつ。栃木県境の山々にも目を向ける。今回南会津にくるまで二回雪山始めをした。熱量は同じというわけにはいかないけれど、もっと知ろうとしなくちゃと思う。いつの間にか真っ青な空に霞がかかり始め天候の変化の予兆があらわれた。名残惜しいけれど戻るタイミングのようだ。爽快な展望を楽しみながら快適にすべり降りる。膝痛を気にかけていた仲間も順調なようでホッとする。テン場に戻ってテントを片付け下山の準備。

 

 

 

 

 

 

 

バスの時間までたっぷり時間がある。家向山でザックをおろし、地図で1526m表記のある本当の山頂まで行ってみることにした。10年以上通っているのに一度も足を運んだことがなかったからだ。山頂はブナに囲まれた平たいポコでちょうど稲子山が北真正面に見える。ここから倉淵山を通って小立岩に下る尾根も以前から関心があったのだが、下半分くらいは針葉樹の細尾根のようでこの頃はあまり触手が動かなくなってしまった。

 

 

高曇りとなって朝の青空と白い山並みのコントラストも薄れてきた。あとは淡々と、けれどまた雰囲気のいいブナ林を気持ち良く脱力して下る。シューは快適なのだけれど雪の締まった急斜面の下りに弱い。最後1000mからの細尾根の急斜面は途中でアイゼンに履き替え登山口にもどった。いつも目印となる保太沢橋脇の別荘が売りに出ていた。340万円とのこと。南会津の山と沢に関心のある山岳会や岳人の方々、いかがでしょうか。またも誰も乗客のいない野岩鉄道に乗り、遠い遠い道のりを帰路についた。

 

 

登山口11:10ー巽沢山13:15ー家向山15:20ー1410m幕営地15:40//7:00ー窓明山9:20/9:50ー幕営地10:50/11:15ー家向山11:40/12:15ー登山口14:30