ブナの沢旅ブナの沢旅
▲トップページへ
2020.12.11
三ッドッケ〜酉谷山〜ウトウの頭
カテゴリー:ハイキング

2020年12月10~11日

しばらく遠のいていた奥多摩。何度か計画しかけたことはあったのだが、近郊の山域のわりに時間がかかる、南武線が苦手だ、などの理由で尻込みばかりしていた。そんなわけで9年ぶりに前回泊まってみたかった酉谷山避難小屋を目当てに長沢背稜を小さく周回してきた。

9年前は山中テント泊だったが、避難小屋に泊まると一泊で雲取山を経由して下山することは難しい。体力も落ちている。まずは奥多摩に足を運ぶことに意義があるという理屈をつけてタワ尾根を下ることにした。健脚な人なら日帰りコースだ。

奥多摩駅からコンパクトになったコミュニティバスで東日原へ。平日ながらそこそこハイカーが乗車していたが、ほとんどが川苔橋で下車した。川苔山は人気の山と聞いている。東日原の鷹ノ巣山登山道は一部崩壊のため現在は通行止になっているとのこと。

ヨコスズ尾根を登る。最初は植林帯の急登だが後半は雰囲気のいいゆったりとした尾根歩きとなる。すっかり落葉しているので明るく展望がいい。一杯水避難小屋からは小屋の裏に張り出した尾根を登って三ツドッケへ登る。前回は長い縦走だったので、ほとんど巻くように付けられた登山道をたどって山頂はすべてパスした。

山頂の標識は天目山と書かれていたが、三ツドッケの方が一般的のようだ。なるほどほぼ360度といってもいいくらいの好展望。奥武蔵と奥多摩の山並みが手に取るようだが、全部の山を同定するまでの知見が乏しいのが残念だ。いわばここからが長沢背稜縦走路のスタートだ。(天目山の好展望については、後日確信犯的な天目山愛好者が違法伐採をして作り上げたものである事を知った。本人は伐採を管轄の東京と埼玉当局に事後報告して罰金を払ったとの事。)

 

 

ゆったりとした尾根歩きが気持いい。ハンギョウ尾根の取り付きにはロープが張られ通行不可と書かれていた。この後小川谷林道に下るバリエーションルートの尾根にはすべて通行止のロープが張られていた。多分慣れている人はそれでも歩いているのだろう。

大栗ノ頭や七跳山、坊主山といった峰は、登山道がすべて基部を絡んでいるので上り下りが少なくて歩きやすくなっている。沢の源頭部は概ねゆったりとしていて穏やかだ。久しぶりに歩いて、奥多摩の山はおおらかな雰囲気でいいなあと思う。酉谷山避難小屋が見えてきた。三ツドッケを経由したことを割り引いても前回より1時間ほど多くかかって小屋についた。ロケーションのいい、こぢんまりとした心地いいログハウスだ。

小屋泊まりとはいえ、小さな小屋なので「三密」を避けるためと万一にそなえて自立式ツェルトを運んだ。水場があるとはいえ枯れている恐れもあるので水も運んだ。テント泊と変わらない装備でやってきた。小屋泊まりは私たちだけだったのでゆったりできたが、案の定水は枯れていた。

時間の余裕があるので酉谷山に登ることにした。早朝ガスっていたら展望が台無しになるかもしれないからだ。天祖山から七つ石山(?)方面奥に富士山が頭を出している。しばらく待っていると雲取山方向に日が傾き始め空を染め始めた。暗くならないうちに小屋に戻り、続きは小屋の窓から展望を楽しんだ。

いつもより行動時間が短いので久しぶりに鍋の食材を持ち込み早々と夕餉の開始。もうすぐ冬至だけあって夜が早い。意外なことに広い平野の街並みが煌めいてみえる。酉谷山はある意味東京都で一番奥深い山なのだという。雲取山が西端の山だとすれば酉谷山は確かに北端の山だと知る。早々とシュラフにもぐるがとても暖かい夜だった。

 

 

 

気温がそれほど下がらなかったのとログハウスの温もりで、快適に朝をむかえた。久しぶりに10時間以上も眠ったため目覚ましを待たずに目覚める。ゆっくりと食事をしてもまだ薄暗いのでコーヒーを飲みながらグダグダしてから出発する。歩き始めると東の山から太陽が登りはじめる。登山道はいくつもある小川谷の緩やかな支沢源頭部を越えていくが、ブナの疎林が広がってとても美しい。朝日で赤く染まった落ち葉を踏みながら気持良くすすむ。滝谷の峰あたりまでが長沢背稜で一番好きなところだ。

上滝尾根取り付きもロープが張られていた。地図で見ても緩やかな尾根で、以前小川谷上段歩道から四間小屋尾根を登った時、ブナの疎林のいい雰囲気にうっとりと見下ろした喜右衛門小屋尾根につながっている。いつか歩いてみたいなと思いながら滝谷の峰下へ。あの時には、つぎは滝谷を遡行して喜右衛門小屋尾根を下ろうなんて話をしたなあ。まだ実現していない滝谷。。思い出は他にも。以前沢の会に入会して間もなくの初夏、滝谷遡行を目指して小川谷林道終点の広場でテント泊した。けれど翌日は朝から雨となったため遡行を中止して戻ったことがあった。だからなのか、滝谷ということばに特別な響きを感じる。

滝谷の峰下からはタワ尾根を下るのだが、せっかくだからとザックをおいて山頂とも言えない山頂を往復する。さあこれで背稜とはお別れだ。長いタワ尾根の始まりは尾根というより広い台地のようにゆったりと広がっている。通行止めのロープを避けて入ると登山道にもおとらない立派な踏み跡がある。すぐにモノレールがあらわれる。

 

 

 

しばらくはモノレールに沿って緩やかに下るが大京谷の峰でモノレールはウトウ沢右岸尾根に下る。この尾根も以前オロセ尾根中間歩道からウトウ沢を越えて歩いたななんて、なんだか思い出ばかりが蘇る。それほどに今回の奥多摩 again は久しぶりの郷愁を誘う山旅なのだ。

などと思い出に浸っている間もなく、ここからは岩場がつづく。前回と違いテープが頻繁にあらわれ巻道が明瞭なので不安はない。ウトウの頭に登ると陶板のウトウの絵が愛らしい。裏を見ると、一つ(写真で下の絵)はうとうさんという方が作ったものであることがわかった。心憎くいきな計らいだ。

1443mからは尾根が緩やかに広がるブナとミズナラの疎林帯となり、タワ尾根で一番雰囲気がいいところだ。とくにミズナラの大木が多い。篶坂ノ丸にも前回はなかった絵馬のような手製の標識がかけられていた。オロセ尾根分岐をわけて更に下り、山名由来が知りたくなる金袋山はどこが山頂かと思うほどだが、やはり比較的新しい手製の標識。小判がたくさん入っていそうな金袋の形をしているのが面白い。下が少し齧られていたが、これはシカ?も中味に興味があったからかしら。

ミズナラ巨木は倒壊して久しくこれから年月をかけて朽ち果て自然に回帰していくのだろう。一石山を越え、道標に導かれて日原方面に下るところはザレた急斜面。下りは怖いのでチェーンアイゼンをはく。やれやれとやり過ごしベンチのある鞍部からは再び急斜面をジグザグに下る。下に車道と建物が見えてきて油断してしまったのか、最後は間違った踏み跡に導かれてしまう。数十メートルほどだが登り返すのも面倒だと少し強引に柵の隙間を超えたりしてちょうど神社入口の石段前に降り立った。(あとで登り返すべきだったと反省)

最後がちょっとアドベンチャーになってしまったが、あれもこれも含めて奥多摩リユニオンの山旅は今まで忘れていた気持を引き出してくれた。鍾乳洞から始発バスに乗り、これからはもっと奥多摩のあちこちを歩きたいと思いながら短い初冬の山旅を終えた。

 

 

  

 

東日原バス停8:45ー一杯水避難小屋11:35ー三ッドッケ12:25ー酉谷山避難小屋15:00(酉谷山往復)//6:30ー滝谷ノ峰8:00ーウトウの頭9:30ー鍾乳洞バス停13:00