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2020.10.11
クマとの遭遇顛末記
カテゴリー:雑記帳

10月7-8日、葛根田川を遡行して大石沢出合に泊まり、翌日戸繋沢に入って裏岩手縦走路に抜けた。その時仲間が最後の水汲みをした場所にポシェットを置き忘れたと取りに引き返した。その間登山道にザックをおろして沢装備をとき靴を履き替えたりしていた。しばらくすると登山道わきの笹薮がザワザワし始めた。最初はまさかクマとは思いもしなかった。仲間が急いで戻るためにヤブに入ってショートカットしたのだと思い「○○さ〜ん、こっちですよ〜」などとしきりに声をかけた。なのに一向に返事もなく姿もあらわれない。それなのにまだおかしいと思わず、他に沢を詰めてきた人がいるのかしら、なんて思って「誰かいるんですか〜」などとさらに声がけ。一向に返事も姿も見えないうちに笹薮のざわつきもなくなった。(思い起こせばかなり呑気)

。。。? それでようやく、ひょっとしてクマ? きっとそうだと思いなおす。でも姿は見えないし笹のザワつきもないのでいなくなったのだろうか。。一人でいるのも不安なので戻ってくる仲間のところへ合流した。近くにクマがいることを知らせて恐るおそるザックのところへ戻ろうとすると、ついに前方に黒いモノを発見。やはりクマだった! 少しザックを離れていた間にクマがやってきて私のザックを引きずったようで道の真ん中に転がっているのが見えた。二人で思いっきり笛を吹いたり叫んだりしたのだが、いっこうに立ち去る気配がない。そのうちに登山道を横切るクマの姿がはっきり見えてその巨大さに驚く。これまで何度かクマを目撃したことのある仲間はこんなに大きなクマは見たことがないという。

少し離れた登山道の木陰からずっと様子を見ているうちにクマは私たちに顔を向けた。その時クマと目があったように思った。真っ黒な巨体で目がキラキラ光って見えた。けれどこちらに襲いかかる気配も威嚇する様子もなく、あいかわらずのらりくらりしている。このクマは登山道をうろついているくらいだから人馴れしているのかもしれない。

ずっと様子見をしているうちに物音もせず姿も見えなくなったように思えたので少しザックに近づいて見た。すると、まだいた。離れたところに座り込んでいる。なにしてるんだろう。私たちがいなくなるのを待っているのだろうか。またもとの場所に戻って様子見を続ける。場所は蟹場分岐から200mほど西に下がったところだ。あれこれあせってもしょうがないし、根くらべを決め込む。小一時間ほどしてまったく音も聞こえず姿も見えない様子となった。今度こそ大丈夫かとふたたびザックに近づく。どうやらクマは立ち去ったようだった。ふうっ。またいつあらわれるかわからないので急いで散らかした荷物をザックにほうり込んで笛を吹きながら立ち去った。

それにしても、笛を吹いても声をあげても何をしてもまるで知らんぷりのどこ吹く風で、のそのそしているクマが登山道をうろついているとは。。。山の中とはいえ、少し下れば温泉場がある。そして、一息ついてみれば自分のおバカ加減に笑ってしまう。一生懸命クマに話しかけていたのだから。でもそのおかげでザックを離れるまでは姿をあらわさなかったのかもしれない。クマの身になってみれば、自分の棲息地に登山道なんかできて人がやたらと通って迷惑かもしれない。などと、離れて余裕ができてみればこんな気持ちにもさせられたクマとの遭遇だった。

(おそろしくて正面からの写真はとれなかったのですが、真ん中の黒いのがクマのお尻で、手前の白っぽいシートの下にザックが転がっている写真です)



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