ブナの沢旅ブナの沢旅
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2020.08.19
鳥海山 檜ノ沢源流
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2020年8月18-19日

今月初旬のナルミズ沢での体力の衰えに萎えて自信をなくし、緩やかな山レベルをさらに一段引き下げて東北の山旅へ。以前から関心のあった鳥海山麓檜ノ沢源流と山麓の広大な千畳ヶ原を歩いてみたかったのだ。

鳥海山は以前東面の残雪期ルートをスキーの山仲間に連れられて登った。始めから美しい山の姿を正面に見ながら快適な登りで、山がだんだん近くなるもののずっとその景色は同じだったことが印象的だった。美しい山だったので、緑の季節に別のルートから登ってみたいと思ったが、何しろ遠い山なのでなかなか機会がなかった。

健脚者は日帰りしているコースを小屋泊まりするため、当日発で電車を乗り継ぎ酒田へ向かう。羽越線に乗るのは10年ぶりだが村上を過ぎると海岸沿いとなるため景色を楽しむ。レンタカーで出発点の一ノ滝駐車場に着いたのは昼近かった。早速歩き始めるがどこも猛暑に変わりなく、すぐに汗でびっしょりとなる。素朴ながら歩きやすい道をたどると地図にはない予想外の沢にぶち当たる。一瞬戸惑うがどうもここは登山道の渡渉点らしい。けれど水量が多くとてもそのまま渡渉できそうもない。日頃沢を歩いているのにこれっぽっちのことでうろたえる自分がおかしい。諦めて沢ぐつに履き替えればなんということはないのだから。

小さなアップダウンを繰り返しながら河原が広がる檜ノ沢合流点の渡戸で一休み。出発前日に当地は局地的大雨だったので増水を心配したが、ここで見る限りでは大丈夫そうだ。ようやく登り基調の道になるとブナ林となり細いけれど樹肌が白くてきれいだ。

再び沢を今度はジャブジャブ渡るとすぐに小屋だった。万助小舎という看板の小屋はとてもきれいに使われており、気持ちのいい宿となった。日誌をみると管理人さんが頻繁に点検に来ているようだ。日が長いのでのんびり過ごしながら食事をとりまだ明るいうちに横になる。夜中に目がさめると窓から星がきらめいている。外に出ると冬山でも見たことがないほどたくさんの星が輝き、うっすらと天の川までみえて驚く。明日は好天が約束されていることを確信してふたたび寝床へ。

 

 

4時に起床するがまだ外は暗く、日が短くなっていることを実感する。当初は登山道を少し戻って900m付近で檜ノ沢に下って遡行する予定だったが、昨日のペースや沢の様子などから予定以上に時間がかかりそうだと判断。一方4時には下山する必要がある。下山路は長いけれど千畳ヶ原を歩く二ノ滝口登山道は外したくない。沢は大方が大岩ゴーロのようなので遡行自体にそれほどこだわらない、などと言い訳がましく説明してルート変更を提案。いつもながらの腰砕けだけれど、最近はへんなこだわりもない。年相応の楽しみ方をすればいいと開き直っている。

というわけで、源流部だけを逆コースで歩いて小さく周遊散策することにした。仲間も即座に賛成し、これで時間を気にせず楽しめると嬉々として出発する。岩交じりの樹林帯の急登をやり過ごすと一挙に展望がひらけ、これこそ期待していた鳥海山麓の大平原!という雰囲気となる。振り返れば眼下には庄内平野と日本海が広がる。お花畑のシーズンには遅いけれどまだあちこちに最後の花を咲かせていた。

万助道と下山路の二ノ滝口の分岐に荷物をデポし、身軽なハイキング装備で檜ノ沢源流の散策にでかける。しばらくは石畳の登山道を登り鍋森と登山道のコルを目指して谷筋に入る。すぐに平坦な草原が広がり脇に檜ノ沢源頭の湧水かと思われる水の流があらわれた。小さな池塘や岩が広い草原に点在している。途中の登山道は花の散ったチングルマだったが、ここでは今が最盛期とばかり咲き誇っている。きっとここは雪解けがおそいのだろう。あまり具体的なイメージを持っていたわけではないが、予想以上の素晴らしさに夢見心地の心境だ。ゆっくりじっくり味わいながらさらに源流へと下ってみる。

明瞭な沢筋に出る前に目の前の池塘に惑わされて一本手前の筋に入ってちょっと藪を漕いだのはご愛嬌。V字谷となってからは正面に庄内平野を見下ろしながらゴーロを下る。ずっと見える景色は変わらないので1450m上あたりを到達点としてザックをおろす。同じ時間で下から遡行してここまで来ることができたかどうかわからないけれど、今の自分にとってはこれでいいのだと改めて念をおしながら、向きを変えてちょっとインチキ気味の源流遡行。

頭上の登山道が近づいたところで斜面に這い上がり最後だけ少し藪をかき分けて登山道にでた。鳥海山にいっても山頂に行かないのだからせめて鳥海湖を見たいと思ったのだ。こじんまりとした美しい湖とはるか前方にギザギザの山頂がそびえ立っている。いいところだとしみじみ思う。初めて登山者の姿もちらほら見えるようになる。

荷物をデポした分岐に戻り下山路へ。波打つ千畳ヶ原の草原台地の真ん中に通る木道をたどる。どこまでも続くそのスケールに圧倒される。月山森が下山路のコンパニオンのよう。急斜面の樹林帯をくだって月山沢を渡る。増水時は渡渉不可でエスケープもないという看板が何箇所かに立ててあって少し気がかりだったが大丈夫でホッとする。火照った顔を洗い一息つく。長い長いブナ林の道を下り、最後は観光気分でいくつかの滝見を楽しみながら駐車場へ。時刻はちょうど4時少し前だった。

 

 

 

 

 

 

一ノ滝駐車場12:00ー万助小舎15:30//5:30ー蛇石流分岐ー檜ノ沢源流散策8:00/10:20ー蛇石流分岐11:20ー月山沢渡渉点12:10/12:30ー二ノ滝15:20ー駐車場15:50