ブナの沢旅ブナの沢旅
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2020.08.27
楢俣川洗ノ沢
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2020年8月27-28日

連日の猛暑で山に行く気力も萎えがちな日々、それではいけないと楢俣川の沢ではアプローチの短い洗ノ沢へ。5年前に遡行した際、泊まった翌朝の雨で急激な大増水のためテント近くまで水位があがりコッヘルなどを流されたという怖い思いをした沢だった。2日目は増水のため小滝群に入ることもできず様子がわからないまま詰めたので、再度遡行してみようということになった。

奈良俣ダムゲート前の広場に駐車してゲート先の林道へ入る。林道が洗ノ沢に近づいてカーブする所にテープがあり踏み跡をたどって沢に降りた。しばらくはゴーロ沢だ。3回目なのでこんなものだと淡々として歩く。最近はゴーロ歩きでバランスを崩しやすくまるでヨチヨチ歩き。2段8m滝があらわれる所からはナメが多くなりようやく楽しい沢歩きとなる。

しばらくは標高をあげずにナメ時々ゴーロの平瀬がつづく。人の記憶はあてにならないもので、いいところしか覚えていないし写真に残していない。ちょっと腑に落ちない気持ちながら木漏れ日の森と陽の光にきらめく沢を歩くだけで心が落ち着く。1200mを越えたあたりからはようやくイメージしていたナメとナメ滝が連続する美しい沢となり、やっぱりそうでなくちゃと心浮き立つ。

沢幅いっぱいにひろがるナメをヒタヒタと進み、小滝を幾つか越えると沢幅が狭まって右にカーブしていく。そろそろ大滝についたようだ。ここから岩盤の色が明るい赤茶けた色から黒っぽく変わる。ずっと穏やかで緩やかな渓相だったのでこうした変化がアクセントになる。それほど威圧感もなく滝下から見上げると大岩の多段状になっている。とはいえ、しばし眺めた後は右壁脇から踏み跡をたどって高巻く。滝上は再び穏やかなゴーロとナメ小滝となる。

そろそろ前回のテン場が近づいてきたはずだが、なんとなく荒れた雰囲気となる。5年も経過しているのでなくなっているかもしれないとちょっと不安に思いながら左岸に目を凝らしながら上がるとありました。しっかり整地された1張り分の平地が。朝発で出発が遅かったけれどなんとか4時前だ。さっそくザックをおろしてツェルトを張り焚き火の準備に精をだす。

一時は雨が降り出したので焚き火を諦めかけたが30分ほどでやんだ。せっかく楽しみにしてきたのだからと頑張って火を熾した。森にたなびく青い煙をみながらゆったりとした夕餉の時間は沢泊してこその至福の時間だ。日が短くなったことを感じながら7時過ぎにはツェルトに戻った。

 

 

 

 

翌朝は6時に出発する。前回は減水の様子見で出発が8時半だったので時間的にも余裕がある。この余裕が心身ともにとても大切なのだ。テン場からは傾斜も増して黒っぽい岩質の小滝が連続する。ルート取りもいろいろでチャレンジしたり巻いたりしながら進む。時々ビーバーダムのような倒木帯に遭遇するがどれも5年前にはなかったものだ。近年の台風豪雨災害の激しさが感じられる。

後半は消化試合気分で淡々と高度を稼ぐ。1450mから上にテン場はないと思っていたが1650mの左岸に1張り分の小さな平地があり利用されているようだった。けれど川原もなく焚き火はできそうにない。水流はいつまでも続き1830mの大岩を左に入ってもまだ流れていた。しばらく水流をたどり水枯れしたあたりで右岸の笹薮を抜けて草付き斜面へ。

靴を履き替えピンソールで滑りやすい草付きを登っていくとハイマツ帯にぶち当たる。短い距離だがどのルートをとっても避けられないようだ。10分ほどで抜けると開放的な岩稜帯となり笠ヶ岳が望まれる。お花畑の最盛期は過ぎていたが、それでも随所に名残が見られた。歩きやすそうな場所を選んで稜線下をトラバース気味に登り、最後は稜線を回り込むと踏み跡があって山頂に導かれた。

笠ヶ岳は隣の100名山の至仏山とは違っていつ来ても(といっても沢から3回)誰もいなくて静かなのが好ましく思う。ピークハンターではないけれど、やはり沢から山頂に至るとプラスαの達成感が得られるものだ。あれこれ展望を楽しみ沢筋をおったりして時間を過ごす。眼下には下山路途中の片藤沼が見える。

腰を上げて長い下山路へと山頂を下る。縦走路分岐までは岩稜帯の歩きにくい道で沢の詰めの方がよっぽどマシだと文句を言いながら下る。けれどそこかしこの岩陰にはまだ花が咲き乱れて目を楽しませてくれる。もう少し早い時期だとウスユキソウが群生しているところだ。湯ノ小屋方面の登山道に入ると途端に快適な道となるが緩やかで歩きやすい代わりに長い。片藤沼を過ぎると小さな湿原が2、3箇所あらわれる。最後の大きな湿原脇にシートを広げて食事休憩がてら寝っ転がる。背中が伸びて気持ち良く、再びあらわれた青空が広がる。

いい雰囲気のシラビソ林を淡々と下るが、暑さも加わって早くもばて気味になる。しばらく下ると小沢の水場がありカップで何杯も飲んで生き返った心地。その後も何度か沢筋が通っていた。

ようやく標高を下げ出すと今度は小さなアップダウンが続いて登るたびにこたえる。なんども休みながら大幅にタイムオーバーして登山口に降り立つ。ここからさらに車道を30分テクテク下りポツンと一台待ち続けてくれた車に戻った。あ〜あ長かったけれど、なんとか歩き通すことができたことを喜んだ。

 

 

 

 

林道ゲート前9:30ー入渓10:20ー1450m幕営地15:45//6:00ー笠ヶ岳11:20/12:00ー林道ゲート17:00