ブナの沢旅ブナの沢旅
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2019.11.11
日光 寂光滝〜芦沢
カテゴリー:ハイキング

2019年11月9日

ヤキバ沢からいく日も経たないうちに再び日光の沢へ向かう。自分でもいったいどうしたことかと不思議なのだが、日光低山の沢はまだ紅葉が楽しめる、このところ軽いハイキングばかりであまり疲れていない、好天が続いている。。。などの条件が重なって気持ちにはずみがついているようだ。

特急リバティの始発は行楽シーズンだけあって満席状態。東武日光駅からバスに乗り田母沢で下車。まるで観光地なのだが、一歩メインルートから奥に入ると静かな別荘地風情となる。若子神社の広い駐車場を通って境内の登山道を登る。途中で地図にもでている寂光滝という七段の滝に下る踏み跡をたどる。下からは全景が見えないが、「日光八景」の一つに数えられているだけあり、立派な滝だ。けれど威圧感はなくそれほど切り立ってもないので3級程度の滝を登れる人なら登れそうに見える。とはいえ歴史のある神社の滝を登るのは、那智の滝ではないけれど、控えたほうがいいのだと思う。

ひとわたり鑑賞したのち登山道へ戻って滝上から沢に降り立つ。ちょうど七段目の滝上で、ここからはひたすら穏やかな優しい沢となる。紅葉は盛りを過ぎたとはいえまだ美しく、陽に照らされて煌めいている。両岸は広く緩やかな斜面で笹と紅葉、芦沢の白波のコンビネーションが鮮やかだ。両岸が広葉樹林帯なので、多少落葉している時期の方が明るい沢となりそうだ。

 

 

大きな滝もない穏やかな沢なので水量は少し多めの方が見栄えがする。のんびり紅葉狩りしながら沢ハイキングという目的なので、それほどの期待感もないためちょっとした滝があらわれるとおぅ〜となる。前方左岸に天から降るようなナメ滝が見える。近づくと出合は苔岩の間を水が幾筋にも流れており、緩やかな階段状だ。短い沢なので、ここで登って遊んでみたいという衝動にかられる。ストック片手にスタスタと中段へ。ここからはコブのあるナメ滝となり、最上部へ。ここまでくれば滝の上を覗きたいと、仲間にも登ってきてもらう。彼曰く、途中からはきっと自分も登るんだろうなと観念したとのこと。

滝上に這い上がって目をみはる。地図では全く読み取れない小さなコケの沢がずっと上まで緩やかに続いており、あたり一面は色づいた木々が笹原に点在する丘陵のようだった。この景色を見ることができたことに満足して本来の沢にもどる。その後も穏やかな溪相は続き、地図にはでない浅い谷が頻繁にあらわれ楚々と水を落としている。

 

 

1100mを越えて両岸がますます低くなり、最後の二俣を右へ進むと小さな沢のフィナーレにふさわしい美しい幅広ナメ滝があらわれる。ここでも予想外の美しさに歓声。気持ちよく乗り越し、階段状の滝とも言えない滝をこえると平坦な湿地帯となる。これもちょっと意外な展開だった。沢の源頭部に入ったようだ。左岸の斜面のあちこちから水が湧き出ている。一番太い水流をたどって斜面を登ると土壁となり、足元から水が湧き出している。この湧水はどこから来ているのだろうと興味深い。

湧水湿地でしばらく遊んだ後は最終目的地の聖天岩へ向かう。一旦伏流となった沢筋は登ると再びあらわれて岩の基底部で消える。目の前は一面の大岸壁だ。白い岩なのであまり威圧感はなく、見上げると紅葉の木々が岩を囲んでいる。正面の洞穴には小さい地蔵が安置されている。年代は読み取れなかったが、ものの本によると1756年と彫られているとのこと。そういえば、前回のヤキバ沢を囲む修験尾根の祠で読み取れた年号は「元文」で1740年代だった。洞穴は他にもあったがかつては安置仏があったのかもしれない。短い沢だけれどドラマチックに収斂しているので、満足感がある。

 

 

 

岩壁の下で休むのは気がやすまらないため、登山道に向かう。岩壁の下をトラバースして斜面を登ると一帯はカラマツ林となる。笹を軽くこぎながら下るとテープがあらわれ、登山道に合流したことを知る。しばらくは判りにくい道だ。寂光滝から始まる女峰山への登山道なのだが、とにかく長い道のりだからか、あまり歩かれていない印象だ。

カラマツ林から自然林に変わると道も明瞭となる。笹原の穏やかな雰囲気が足尾の山と似ている。紅葉を愛でながら沢音が近づくと寂光滝上の芦沢が近づく。朝沢に下った分岐で立ち止まり、短いながらも穏やかで美しい紅葉の沢歩きができたことを、あたらめて喜んだ。

 

 

田母沢バス停8:40ー寂光滝9:30ー聖天岩12:30ー若子神社14:00