ブナの沢旅ブナの沢旅
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2019.08.27
箒川下戸倉沢
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2019年8月24日

しばらくは日帰りの沢歩きを中心に少しずつテントを担いで山泊りする復帰を目指すつもりだ。リハビリ山行といってもやはり多少のワクワク感がないと気持ちがのらない。まだ遡行していない沢は、どんなにシンプルでも楽しみなもので、今回はその手始めに那須塩原にある小さな沢を選んだ。

とくにレアな沢というわけでもなく、けっこう歩かれている。ナメがきれいだというので以前からいつか行ってみたいと思っていたが、そんな沢がたくさんあるので、少し遠くて短い沢というのは後回しになっていたのだった。

腰の具合はうす皮を剥ぐように回復しているが、先日整形外科の先生に叱られたのでしっかりとコルセットを装着して歩いた。

那須塩原駅から塩原ダム方面へ向かう。下戸倉沢は今ではすっかり人気が定着している鹿股川桜沢と尾根一つ挟んだ東側にある沢だ。出合広場に駐車してゲート脇を通って沢沿いの林道をすすむ。沢を見下ろしながら様子をみると下流部には堰堤がいくつか見える。大方の記録どおり三つ目の橋から入渓するが、最初の橋から沢に降りても障害はないようだった。

最初はナメ混じりのゴーロだがすぐに思わず声をあげたくなるような美しいナメとなる。沢幅いっぱいのナメは多少の段差があるので水量の白波がダイナミックで楚々としたナメというよりも躍動感がある。水量が多少多めだったのがよかったのだろう。

フリクションもよくて滑りがまったくなく安心して歩くことができる。ナメが途切れてもゴーロ滝が周りの緑とコケと相まって雰囲気がいい。一箇所だけ取り付きが厄介そうな小ナメ滝には左岸にトラロープがかかっていたが釜の倒木に絡みついて使いずらそう。ここは左壁を這い上がるが、やはり途中の一手で力が入らずお助けを出してもらう。

太陽が出始めて白波が輝く。倒木に腰掛けておやつタイム。その時同行者が指を蜂に刺されてしまう。すごっく痛がっていて心配だったが大丈夫そうということで遡行を続ける。(後で調べたところ毒性の弱いクマバチだったとのこと)こんなこともあるので、ポイズンリムーバーもファイストエイドキットに入れておいたほうがいいと言い合う。

沢床はゴツゴツした岩肌だが、進むにつれて色が赤っぽくなったり青っぽくなったり。柱状節理を寝かしたような岩相もでてきて意外と変化がある。地図では沢沿いに破線の道がひかれているが、途中朽ち果てた石垣もあったりしてしっかりとした作業経路があったことがわかる。

せっかくだからと積極的に水戦通しに進んだためか、時間がかかり途中からは枡形山へ登らず引き返すことに決めた。少し傾斜がでてきても相変わらずナメは続き予想以上にいい沢だと思った。

 

 

前方に白い壁が見えてきた。そして大きな倒木も。ゆるいナメ滝を登って倒木をまたぐとこの沢のハイライトの大滝だ。安達太良湯川の霧降の滝に雰囲気が似ている。一枚岩の真ん中がえぐれており、それがむしろ飛び出していてひとの顔のように見えなくもない。面白い形状だしとても優美だ。

滝を眺めながら倒木をベンチにしてお昼休み。少し戻った右岸の顕著な小尾根が高巻きルートだ。上に行ってもすぐにゴーロになるようだし、何しろ未だ故障中の身。無理せずここから引き返すことにした。

午前中は曇りがちだったがすっかり晴れてきて違う沢のように見えたりする。ナメのきれいなところは沢をくだり、ゴーロは沢沿いの踏み跡をたどる。さすがに下りは早い。トラロープのかかっていた小滝は上から見ると岩溝が段々になっていたのでクライムダウン。最後は足元の深そうな釜を避けてロープにつかまり着地した。

そしてフィナーレは沢で一番美しいナメを堪能してくだるとすぐに入渓点の橋が見えてきた。行きに観察したところさらに下るとまたきれいなナメがあったので、もう一つ先の橋まで沢を下ってみる。一箇所大岩滝のような堰堤を林道に出て巻いて茶ナメを下る。橋が見えたところで遡行終了。林道の所々にはヒガンバナに似た花がたくさん咲いていた。後日調べたらキツネノカミソリとのこと。そんな花に寄り道しながら自然に回帰しつつある林道を戻った。

こんな時だからこそ来ることができた沢だと思っていたが、こんな時でなくても十分に楽しめる好感触の沢だった。他にもきっとあるはず。しばらくは第二、第三の下戸倉沢を探して歩いてみたいと思う。

 

 

 

林道始点8:50ー第3号橋入渓点925/9:45ー大滝12:15/12:45ー第2号橋14:25/14:45ー林道始点15:15