ブナの沢旅ブナの沢旅
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2018.03.04
赤沢山~宵ノ越山~丸山乗越~白毛門
カテゴリー:雪山

2018年3月3~4日

 

11年ぶりに赤沢山から白毛門の尾根を歩いた。前回は悪天候でほとんど展望が得られなかったが、今回は両日ともこの上ない快晴に恵まれ、予想以上のブナと展望のよさに印象付けられた。

好天の週末の谷川岳といえば相当の人出が予想されはしたが、上毛高原駅から谷川ロープーウェイ駅行きのバスは登山者で超満員。臨時バスはでないので取りこぼすわけにいかず、運転手さんは相当苦労して全員を乗せていた。土合駅前で降りたが、超満員のバスから降りるのも容易な事ではなかった。

まずは土合山の家へ向かう。かなり駐車していてこの時期は宿泊者が多いようだ。以前とは違って土合駅はかなり厳しく利用が制限されているので、こちらに素泊まりする登山者も増えているのかな、などと思う。シューを履いて斜面が緩んでいるあたりから適当に取り付く。ここで赤沢山へ日帰りするというシニアPと挨拶して先行するが、すぐに追いつかれ、その後は彼らのトレースをたどって楽をさせてもらった。傾斜がきついのは最初の100mほどで、あとは雪も締まって思ったよりも歩きやすい。

尾根が東に向くあたりから南面の展望が得られるようになる。北面は傾斜が緩んで広場のような斜面となりブナと針葉樹の混合林が広がる。さらに登ると樹林がとぎれ、谷川岳が間近によくみわたせる。南面も緩やかな斜面となり端正なブナ林が続く。そこからひと登りで赤沢山の山頂へ。山頂は東と北面は無木立で武尊や至仏方面の展望が広がり壮快だ。11年前は3月下旬だったので標識はちょうど目線のあたりだったが、今回は膝くらいの高さにおなじ古びた標識があった。一方新しい青い標識は頭上にあり、付けられた時の積雪の状態が想像された。

 

 

私たちにとって赤沢山は出発点のようなもの。一休みしたのち、先行パーティのおかげで順調に進むことができたことにお礼を言って先へ進む。しばらくは東面に雪庇が張り出した痩せ尾根だが、1381mを超えたあたりから尾根が広がり林層もブナが卓越するようになる。それにしても天気が良く気温も高くて歩くには暑すぎる。手袋をはずして腕まくり。

小さなアップダウンを繰り返しながらゆったりとした尾根を進む。それほど太いブナはないけれど、雰囲気がとても好ましく南会津の山のようだと思う。1482mのポコに近づくと東面が雪庇の壁となった急斜面となる。仲間が取り付いてみるが、足元から雪が崩れ嫌な予感がすると引き返してきた。そこで東側の緩やかな斜面をトラバースして北東側の尾根から登ることにした。とてもなだらかな尾根に端正なブナが点在している。

尾根に乗り上げるとさらに展望がひらけ、まっさらな平らな雪面が広がっていた。暗黙のうちに、テントを張るのはここだろうということになり、めいめいザックをおろす。時間もちょうど行動を終える潮時だった。整地もほとんど不要で風もなく、とても快適なテン場となった。

 

暗くなって外にでると、眼下にスキー場の照明がみえるがどこだろう。ちょっと違和感。夜更けになると満月の月が出始め、あたりを煌々と照らしている。こんな夜にブナの森歩きをしたら面白いだろうなと思う。

翌朝食事を済ませて外をのぞき、空のあまりの美しさに歓声をあげる。日の出前の茜雲だ。日の出と共に茜雲の空は黄金の空に変わっていった。その変化がとても美しく興味深かった。こんなことも山に泊まらないと見ることができない。だから体力の衰えを感じつつも、もっと続けたいと思うのだ。

1482mに乗り上げてから鞍部に下るところがわかりにくかった。かなりの急斜面に見えた上早朝で雪がガリガリなためアイゼンに履きかえてから下った。再びシューにかえてポコを二つ超える。ナルミズ沢源頭の山並みが広がり、そのクリーミィーななだらかさにうっとりしてしまう。遠くに端正な山容の雨ヶ立。布引山から真っ白に尖った大烏帽子。何年か前布引山で引き返したことを思い出し、つぎはあの稜線を歩きたいと思う。

 

丸山の山頂は北側が針葉樹なのでパス。山頂下をトラバースして西側の尾根を下り丸山乗越へ下る。ここであまりにも魅力的なナルミズ沢側の下り斜面に引き込まれそうになり軌道修正をする。次回があれば、むしろこちらを下って冬の広河原に降りてみるのも悪くない。

丸山乗越は東沢からウツボギ沢へ下るときに何度か通っているが、無雪期は背丈を越す藪に覆われている。今はその藪がすべて雪でかくれ、ブナだけが林立するとてもすてきな空間となっている。ここに立つと、乗り越す時の一番近道がどのラインかがよく分かる。

さて、いよいよ白毛門に続く尾根に乗る。1526mは雪庇の壁となって立ちはだかっているため、最後は北東の尾根に回り込む。ここからは右手に白毛門から朝日岳の山並が、左手には一ノ倉の岸壁を臨む。最高の稜線漫歩を楽しみながらジリジリ白毛門に近づいていく。

 

 

登山道から見える白毛門の姿しか知らないので、全く別の角度からみえる姿が新鮮だ。山頂に乗り上げるとすでに登山者が何人かくつろいでいた。赤沢山からここまでは誰にも会わずまっさらな雪面にトレースをつけていく静かな山歩きができた。私たちが別の方角から登ってきたので、2人組の男性が「どこから登ってきんですか」と興味をそそられたようだった。

山頂の片隅に腰を下ろし歩いてきた尾根を追った。なんだか10年越しの宿題をやり遂げた気分になり久しぶりの満足感を得る。あとは一直線の急斜面の雪道を下るだけなのだが、気温の上昇と共に雪が腐ってぐずぐずだ。アイゼンでも滑っていやらしい。これまでで一番悪いと泣き言をいいながら登山口に降り立った。

 

山の家9:10ー赤沢山12:50/13:10ー1480m幕営地16:00//6:35ー丸山乗越8:40ー白毛門10:50/11:15ー登山口14:10

(岳人の記事によると1482mポコを宵ノ越山というらしい。他に使われている資料は知らないが、表題は11年前の記録と同じにしてみた。)