ブナの沢旅ブナの沢旅
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2015.12.01
大平山松木尾根〜社山南尾根
カテゴリー:ハイキング

2015年12月1日

 

沢シーズンが終わり、少し慌ただしい身辺に気を取られていたらあっという間に12月。例年なら雪山始めをしてもおかしくない時期だが、今年はあちこちの山で雪が少ない、雪がないという報告を目にする。

かつて山の会に所属していた時は今の時期、雪山にそなえたボッカ山行なるプログラムが恒例だった。今でもこうした山行がおこなわれているのだろうか、あまり聞かなくなった気がする。もうしばらくは重いザックを背負って山で泊まりたいけれど、体が楽をしたがっているのも事実。今回も最初は山中泊のつもりだったのに、ちょっと頑張れば日帰りできそうというささやきに傾いた。

以前は足尾の山にそれほど関心がなかったが、少しずつ沢で足を踏み入れるようになってからは、その不遇な歴史に心引かれるようになった。これも歳を重ねたせいなのか、最近は山にかかわった人々の歴史がいとおしい。

前夜桐生駅で待ち合わせ、銅親水公園へ向かう。去年の6月に笹ミキ沢と仁田元川を繋いで歩いて以来だ。明日の好天を約束するかのような星空を仰いで早めにシュラフにもぐる。

山中泊のつもりを日帰りに変えたほどなので、長い行程だ。日が短い上に時間がかかる事は明らかなので翌朝は6時前に出発する。ヘッドランプが不要なほどの月明かりのもと、松木川添いの林道を進む。沿道には長年にわたり続いている緑化工事の諸施設や機材が散在している。

かつて百戸以上の人家があったという松木村跡に進むと「旧松木村に緑の森を」という標識柱が目を引いた。ボランティアによる地道な緑化活動が今でも続けられているが、山をもとの姿に戻すには数百年という歳月がかかると言われている。10年ほど前にNHKが放映した「足尾銅山よみがえる森」に感銘をうけたことを思い出す。壊すのは簡単だけれど、元に戻すのは大変な時間と手間がかかる。何事も。

あれこれ興味がつきず、まだ尾根に取り付いてもいない所で随分と道草をしてしまった。ゲートを越えるとすぐに大ナギ沢出合いだ。沢を渡り、右手に延びる小さな尾根に取り付く。いきなりの急登をやり過ごして990mピークへ。松木川対岸の中倉山の稜線が間近となる。山頂付近は数日前の降雪で真っ白だ。鉱毒で裸地になった急斜面の中腹をみると整地され緑化作業が施されている。松木川源頭は国境稜線に消え、皇海山もしだいにその姿をあらわしてきた。ちょうど朝日が当たり始め、山頂の新雪とジャンダルムの岩壁、青空のコントラストが清々しい。

登につれ傾斜も緩み、笹原についた幾筋もの獣道をたどる。ダケカンバやシラカバ林があらわれ、陽だまりハイキングの雰囲気をもり立てる。笹原とカヤトが交互にあらわれる尾根はしだいに丸みを帯びて広がる。振り返れば中倉山から庚申山につらなる尾根の山並み、さらには袈裟丸連峰も見渡せる。遮るものが何もない一直線に延びる尾根なので、展望の素晴らしさは格別だ。なんて気持ちのいい尾根歩きなのだろう。

雪がつき始め、しだいに深くなっていく。雪の笹原は軽いラッセルのようになり、まるで雪山始めのようだと喜ぶ。1800mを越えるとほとんど平原台地状となりルートも判然としなくなる。問題になるほどではないが予想以上に時間がかかっていることが気になり出した。

大平山に続く尾根に乗ると雪はさらに増し、気温もぐっと下がって寒い。大平山についた時は10時半をまわっていた。ここで腹ごしらえをして進路を相談する。明るいうちに下山する時間から逆算するとギリギリなのだ。こういうときはいつもYさんがブレーキ役となる。私も大丈夫という確信はなかったので、少なくとも登山道が合流する黒檜岳分岐までは進み、正午をめどに決める事に。

しばらくは茫漠とした樹林帯となり雪で歩みもはかどらない。不安が募るころ樹林帯を抜け、一挙に視界がひらける。黒檜岳分岐からは標識があらわれトレースもあって気が楽になる。右手に足尾の山並み、左手に中禅寺湖北岸の山並みが広がるすばらしい展望だ。予想以上の雪景色と真っ青な空と湖、ササハラの淡い緑が絶妙な景観を見せている。足取りも軽く、当初の心配はどことやら。予定通りのコースを進む。

社山に近づくと尾根がくねり、近いようで遠かった。今年の2月に一人で登った社山。まさかまた来るとは思っていなかったが、大平山からの稜線歩きがとてもよかったので、今度はもっと雪があるときにテント泊で日光側から黒檜岳へ縦走してみたい。

社山の南尾根も一直線に延びる展望のいい尾根で迷いようがない尾根だった。下り始めは30cm程の深雪だったが一組のトレースがあった。きっと週末のものだろう。この南尾根はかなり歩かれているようで、松木尾根よりも踏み跡が明瞭でテープもついていた。所々笹原の急斜面だが、とても歩きやすい尾根で順調に下る。

安蘇沢源頭部の崩壊地は危うい細尾根となる。1568mの笹原ピークで休憩し、寝転んで背筋をのばす。1450付近は尾根が広がりなんだか別天地のような穏やかな光景となる。ダケカンバやシラカバ林が美しい尾根をさらに下る。

何箇所かルートが判然としない所もあったが、そういう所ではテープが頼りになる。1012mの草木ダム久藏沢雨量観測所まで下ると、その先からは観測所の径路を示す新しいプレートがあらわれる。径路は途中から枝尾根方向に下るようだったが、最初の予定通り尾根末端近くまで進む。

一見尾根が切れ落ちて見えるところまで下り、南西に急斜面を滑り降りると傾斜が緩み林道が見えてきた。ちょうどジグザグにカーブする手前だった。明るいうちに下山できてホットする。あとは林道をてくてく歩いて駐車場に戻った。予想以上にすばらしい周遊コースだった。日の短い初冬に、日帰りでもこんなに充実した山行ができたことに感謝。

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銅親水公園駐車場5:40−大ナギ沢出合6:30−1805m−大平山10:45/11:00−社山14:00−1182m−安蘇沢林道16:40−駐車場17:05

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