ブナの沢旅ブナの沢旅
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2015.12.20
西大巓〜西吾妻山
カテゴリー:雪山

2015年12月20日

 

最近は世間の仕事カレンダーから解放されているので、あえて日曜日に山へ行かなくなった。けれど12月20日の日曜日は稀に見る晴れ日らしい。ずっとぐずついた天気の山に青空が期待出来るとあっては行かずにいられない。郡山駅でyukiさんと待ち合わせ、ぎりぎりで朝発日帰りができる吾妻連峰の西端、西大巓に向かった。

道中あまりの雪の少なさに季節を間違えそうな気分になったが、グランデコスキー場に近づくとさすがに雪が出てきた。そして駐車場について驚く。はやくも広い第一駐車場が満車状態だった。いまだオープンできないスキー場も多いらしいので、みんな殺到するのかもしれない。そんなわけでゴンドラに乗るまでに時間がかかり、歩き始めたのが10時過ぎとなる。

今シーズンはじめてのスノーシュー。いつも最初はぎこちないが、いつもよりちょっぴり遅い雪山シーズンの到来を実感する。ひとたびゲレンデを離れれば、いつもの静かな山の世界だ。前日の新雪で雪面はサラサラしている。シューで踏むとキュッ、キュッと雪がきしむ。心がはずむ。

ゲレンデ開発で伐採を逃れたダケカンバやブナが点在する緩やかな斜面を登り、まだ営業していないリフトトップへ。ここから樹氷が美しい樹林帯に入る。曇りがちだった空に青空が広がり始め、見上げると樹氷とのコントラストがあざやかだ。

登るに連れ雲が速いスピードで流れて行く。右手には流れる雲の合間から西吾妻山が見えてきた。前回は展望がなかったのだが、一瞬ガスの切れた時にみえた西吾妻山方面の雄大でおおらかな山容が目に焼き付いた。今回はその展望が楽しみだった。

にせピークを越えると西大巓の山頂が近い。中ノ沢源頭部には幾筋かのシュプールが見え、山頂からスノボーの若者が雪煙をあげながら滑りおりていった。みんな楽しんでいるなあと嬉しい気持ちになる。誰もいない山頂は風もなく穏やかだ。さっきから流れていた雲が眼下で雲海となっている。スキー場は雲に覆われているのかもしれない。見上げる空は青いというよりこわいほどの群青色だ。

さて、ここでちょっと迷う。出発が遅かったりリフト一本分よけいに歩いたりで、山頂に到着したのは正午をまわっていた。当初は西吾妻山まで足を延ばすつもりだったが、冬至間近の時期であり、4時までには下山したい。逆算すると今から西吾妻山を往復する時間はないが、さりとてこのまま下山するのももったいない。

そんなこんなでグズグズしたあげく、行ける所まで行ってみようということになった。ここからはトレースのないまっさらな雪面をそれぞれスキーとシューで下る。一旦下ってからはおおむね緩やかな斜面をトラバースして進むのだが、雪面が固くなっている所はいささか緊張気味。

鞍部を登り返して樹林帯のポコを抜けると気持ちのいい雪原が広がる。山頂も間近だ。眼下には雲海が広がり、まるで黄泉の世界に足を踏み入れたような幸せ感につつまれる。そして思う。今日はここまでで充分だと。雪原の真ん中に腰を下ろす。

西大巓という山は、あれが山頂だとめざして登るというよりは、いつの間にか登る山だと思っていた。けれど西吾妻山方面からみた西大巓は違っていた。この山も、ちゃんとした山なのだと認識をあらたにするほどカッコよく見えた。そして山頂にもどって見渡した光景に息をのんだ。四方が雲海に囲まれ、あちこちから山のテッペンが頭を出していた。

おおっーと歓声をあげながら、まずは飯豊連峰に目が釘付けとなる。さすがに山並みは際立って白く惚れ惚れする。冬の山頂から飯豊の展望が得られるのは稀なことらしい。さらに南に目を向けると今度はもっと近くに磐梯山が浮き上がっている。こちらは独立峰でカッコいい。でもちょっと白さが足りない。

展望に夢中になっているうちに雲海に隠れていた安達太良の山並みが姿をあらわし、中吾妻から東吾妻方面もクリアになる。ねばってよかったと喜び合うが、内心時間が気にならなくはなかった。下山にどれほど時間がかかるかよくわからないのに展望に見とれて楽観的だった。

順調に下ったが、樹林帯に入ってから錯綜するトレースに引きずられ予定外のリフトトップに降り立った。ここからはゲレンデを淡々と下る。時間の余裕がなくなったせいかとても長く感じ始めた頃、リフト駅がみえてきた。営業時間は終わっていたが、まだ動いていたので乗せてもらえないかと尋ねた所、リフトは乗せられないがスノーモービルで下るスタッフがいるので乗せてくれるという。このまま歩いて下ったら暗くなりそうな気配だったのでホッとする。スキーのyukiさんに伝えて先に下ってもらう。

思ってもいなかったありがたい厚意に甘え、最後はちゃっかり楽をして下山した。自分が恥ずかしく恐縮したが、スタッフの方は快く、また来て下さいといってくれた。もちろん、「ありがとうございました。また来ます!」来年になって積雪がふえモンスターが育てば、きっと目に映る景色が変わって見えるだろう。そのころにまた行きたいと思う。

後日友人に話をしたところ、それって救助要請して救助されたってことじゃない、といわれてしまった。う〜ん、実はそれに近い状況だったかも知れないと反省しつつも、好天と好展望に祝福された雪山始めとなった。(yuki、ako)

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ゴンドラリフト上10:05−西大巓12:35/12:45−西吾妻山手前鞍部13:40/13:55−西大巓14:35/14:50−駐車場16:30