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2015.03.17
タカマタギ~日白山〜東谷山
カテゴリー:雪山

2015年3月17日

 

北八ヶ岳では悪天候のためまたしても予定変更を強いられたが、北八のシラビソの森には厳冬期の雰囲気こそふさわしい。そんな風にポジティブに捉えてみたものの、帰宅直後から山は好天続きとなり気持ちが落ち着かない。

好天が続くならテント泊のチャンスなのだが装備や何やらのため、思いつき山行としては気が重い。そこで気楽な日帰り、しかも馴染みの山へ行くことにした。

土樽周辺は駅から登れるいい山がたくさんあって公共交通利用者には魅力的。なのにまだ一人で土樽から山に登ったことがない。というわけでタカマタギに決めた。山岳会に入って初めての雪山シーズンとなった9年前に会の若者2人とタカマタギ〜日白山を縦走し山中泊して長釣尾根をくだった。あの年は最初の雪山がクロガネの頭北尾根で、あとで思えばよく連れてってくれたな〜、よくついて行ったな〜と感慨深く、土樽駅にはよくお世話になった。

あれから9年。ようやく一人で土樽へ行くなんて、なんて進歩がないんだろうと思わなくもないが、Never too late!の精神でボチボチ行けばいいのだ。

厳冬期でも二居から東谷山や日白山へはスキーヤーがたくさん入るけれど、土樽から登る棒立山やタカマタギは急斜面のアップダウンでスキー向きの山ではなく、入山者も稀だ。したがって残雪期登山がメインとなる。

3月も半ばなので、週末に人が入っているとは思ったが、雪の状態がわからないので油断は禁物。土樽まで電車で行こうとすると毛渡橋の登山口から歩き始めるのが9時近くなってしまう。前夜発はやっかいなので妥協策として越後湯沢からタクシーを利用した。山行で一人でタクシーに乗るのは始めてだが、年齢を考えれば、もっと利用してもバチはあたらないと思い始めている。

おかげで8時前には歩き始めることができた。除雪車が林道の除雪を始めていたが高速道路鉄橋下までで、その先は2m以上の雪壁に乗り上げる。昨日来の気温上昇のためトレースも融けかけている。ここからワカンを履いてしばらく林道を進む。

前回は平標林道の分岐あたりまで除雪してあり、雪壁に乗り上げてすぐの尾根に取り付いてしまった。要注意なので地図でしっかり確認しようと思っていたら赤テープ。さらに進むと尾根の取り付きにも赤テープ。すっかり人気の山になったようだった。

最初は急斜面の植林帯を登る。ほんの少し登っただけで展望がひらけ、目の前にお馴染みの荒沢山から足拍子岳の山並みが迫る。前方には万太郎や仙ノ倉北尾根が真っ白くそびえてカッコいい。蓬沢と国境稜線の山並みも広がる。いきなりの絶景に早くも気分が高揚する。

いつの間にか植林帯がブナ林にかわる。傾斜も緩み快調に進む。けれどとにかく暑い。休んでは一枚ずつ脱いでシャツ一枚に。シャツも脱ぎたくなるほど。火照った顔を雪に埋めてクールダウン。気持ちがいい。バテないよういつもよりこまめに休憩する。

棒立山直下は急斜面なのでここからアイゼンにかえるつもりでいたが、雪が適度に緩んでいたためキックステップで登れた。そして山頂に乗り上げて思わずワォー!一人でも、急登をやり過ごしたあとの360度の展望に圧倒され声が出ないわけがない。いちいちあげきれないほどで、飯豊連峰もはるか彼方に真っ白に浮かんで見える。

四方の山を一つずつ同定しようとするときりがなく、しばらく小さな山頂に座り込んでほうけてしまう。これまではひたすら登ってきたが、前方にはゆったりと穏やかに広がった尾根が続いており、ここからは気楽な稜線漫歩となりそうだ。ペースも順調で、内心うまくすれば、と思っていた二居までの縦走が現実的になってきた。

タカマタギ直下の急斜面もワカンのまま登ったが、標高が高いためか雪の緩みがあまりなく部分的にガチガチとなる。アイゼンに替えるほどでもないのでピッケルを取り出すと安心感がぐっと増した。

ずんぐりした山頂は東側に雪庇が張り出している。あまり際まで近づけないので棒立山のようにグルリ360度の展望とはならなかったが、タカマタギ再訪!と思うだけで達成感。あらためていい山だなあと目を細める。そして来年は厳冬期にテントを担いでこようと思うのだった。

さあ日白山へ向かおう。しだいに見慣れた景色が広がり早くもやり遂げた感が広がる。一旦下ると運動場のように広い鞍部となり心が和む。ちょっと足取りも重くなってきたけれど、もう少しだ。最後は天国の青空に続くバージンロードのような雪面を一歩一歩登って行く。

山頂に人が見える。1時半なのでもう誰もいないと思っていた。誰にも会わなかったのでなんだかうれしく、手を振ったら応えてくれた。2人パーティの人達で、平標山から下ってきたという。虎視眈々と狙っていたのでいろいろと話を聞く。二居俣の頭附近の痩せ尾根通過が踏み抜きが多く大変だったとのこと。同行の女性からは、もう限界に近かった、一人で行くのは危ないと言われてしまった。う〜ん。

東谷山経由の下山が同じなので、よければ一緒に下って車で駅まで送ってくださるという。バスの本数が少ないので場合によってはお言葉に甘えさせてもらうことにした。

日白山から東谷山はさすがに人気のコース。おびただしい数のトレースがあり、いきなりメインストリートにでた感じ。内心1ヶ月前に来ておいてよかったと思ってしまった。ステキな展望が続くけれど、さすがに消化試合感がでて淡々と下る。「魚沼さん」がドンドン下るものだからつられて足早になる。

二居峠近くの鉄塔まであっという間に下った。二人は車を置いた場所の近くへショートカットで下るというが、ペースメーカーになってもらったおかげで4時のバスに間に合いそうだ。お礼をいって別れ、少しまわり道だが二居峠を経由してバス停へ下った。

好条件に助けられ、念願の土樽から二居への日帰り縦走が思いのほか余裕を持って実現できた。さあ快適な残雪期春山シーズンの到来だ。思いは募る、テントを担いで春山へ。

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毛渡橋7:50−棒立山11:25−タカマタギ12:15−日白山13:35−東谷山14:35−二居峠15:25−二居田代バス停15:45