ブナの沢旅ブナの沢旅
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2014.12.28
白毛門
カテゴリー:雪山

2014年12月28日

 

年末の慌ただしい時期ではあったけれど、28日の日曜日は日本海側を含め本州中部がすっぽり高気圧におおわれるという今の時期では珍しい晴れの特異日になるという。ずっと悪天続きだったあの山もこの山も晴れマーク。電車で一人でも気軽に行ける谷川方面が手招きする。

今年は谷川岳で始まったので、谷川岳で締めるのもいいかななんて思ったが、みな考えることは同じ。あまり人が多いところよりはと、地味な白毛門に落ち着いた。そういえば2ヶ月前の紅葉の時期に登ったときもセカンドチョイスだったような気がする。世の中にはそういうポジションの山も人もなにやらも、ちゃんと意味のある大切な存在だ。

上毛高原駅からバスに乗る。いかにも谷川岳に行きますという雰囲気の、上から下まで真新しいいでたちの単独の若者が目に付く。若者に限らず、これから雪山を始めようという人には、ロープーウェイを利用した好天の谷川岳はうってつけの山だ。私も何年か前、初めて雪山に単独登山したのは谷川岳だった。

そんな風に同乗者を観察しながらふと思う。白毛門は大丈夫かな。まあいいっか。トレースなくて手に負えなかったらすぐにロープーウェイ駅に駆け込めばいい。と、気楽に思っていたら土合橋でもう一人単独の男性がバスから下りた。よかった、これで一人じゃない。それどころか、駐車場入り口の雪堤の上に大パーティが支度をしているではないか。その上早朝に出発したパーティもいるとの情報。

急にお気楽ムードとなり、アイゼンを履いて先行する。真っ青な空と雪のコントラストがまぶしく早速サングラス。なんだか残雪期の雰囲気だ。

出だしのブナ林の急登で汗だくになる。バスを一緒に下りた単独者は先週も白毛門にきたけれど、そのときは一人ラッセルで、ブナ林を抜けて尾根に上がるまで2時間近くかかったと言っていた。今回は無雪期のコースタイムとあまり変わらない。

なんだか楽すぎて拍子抜けだと、調子に乗りながら進む。左手には落葉した樹林の間から対岸の一ノ倉が見えてきた。やっぱり積雪期は迫力があってカッコいい。

このペースでいけば山頂を踏めてしまうのかな〜など楽観ムードがマックスになったころ先行者が目に入る。最後尾にいた人に聞くと、最初のパーティは5時に出発し、すでに5時間半もラッセルをしているという。驚くとともに自分の能天気ぶりに苦笑し、お礼をいってラッセル隊に加えてもらう。ここでシューに履き替える。

相前後して歩いていた単独者も加わり合計8人ほどのラッセル隊となる。順番が回って来たが、雪の深さは膝程度なので所々の急斜面以外はそれほど沈むこともなくまずまずのペース。

振り返ると後続と距離が開いている。ほとんどの人はワカンなのでシューのトレースがあっても潜るらしいのだ。私は決してパワーがあるわけでないしそんなにラッセルできるわけでもないけれど、それほど新雪は深くなかったのでシューの威力が発揮されたという感じだった。

とはいえ時間はかかる。そうこうしているうちに登山口であった大所帯のパーティも追いついてきた。先頭はまだあどけなさが残る男の子。聞けば高校生だという。なんだかとても賑やかだ。まさか遠足じゃないよね、などと冗談めかして聞くと、高校の山岳部とのこと。今どき高校の山岳部でこれだけの部員(20人ほどもいた)がいるなんて珍しいと感心する。そして子供というより孫のような彼らをなんだか急に可愛く思う。

「元気なんだから先頭でラッセルしなさいよ。あれ、ツボ足なの。ワカン持ってないの。山岳部でしょ。ワカンなしで雪山に来るなんて山岳部員失格だよ〜」面白がって口うるさいおばあちゃんとなる。

松ノ木沢の頭手前の広いポコが暗黙の到達点。すでに正午をまわっており、誰もその先に進もうとしない。せめてあと一歩先の松ノ木沢の頭まで行こうと思ったけれど、あまり違いがなさそうだし、こちらの方が広々している。だから私もここまでとする。朝早くからトレースをつけてくれた方々のおかげでここまで来れた。ほんとうにありがたいことだった。小さなポコに腰をおろし、展望を楽しみながらのティータイム。

短い距離だったけれど、真っ白な手つかずのブナの疎林をラッセルできてとっても楽しかった〜。来年また来よう。一人ラッセル遊びしてみるのも悪くないかも。きっとブナ林で力つきそう。。。雪が締まる3月には山頂まで行きたいな。そしてその先までも、ね。目の前の真っ白な稜線を見ながらあれこれ想いが駆け巡る。

こうして2014年最後の山をふたたび青空の雪山歩きで締めることができた。一年間、無事で山を楽しむことができたことに、心からありがとう!

登山口8:50−松ノ木沢の頭手前12:20/12:45−登山口14:05