ブナの沢旅ブナの沢旅
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2014.07.06
御霊櫃峠〜大将旗山〜額取山
カテゴリー:ハイキング

2014年7月6日

 

安達太良山麓二日目はyukiさんの裏山ともいえる額取山に軽くハイキング。前日の赤留川〜中ノ沢が予想以上に充実していたので、天気がよくてもまた沢に行きたいなんて思うこともない。yukiさんが町内会の早朝草取り行事に参加している間、宿泊した逢瀬荘の向かいにある逢瀬公園を散策してみた。山全体が自然観察公園のようにデザインされ、学習の場にもなっている。いい山が近くにたくさんある上に、さらに雑木の里山を作り替えて公園にしてと、都会の人間から見るとうらやましい環境だ。

毎年6月から8月の第一日曜日は町内会で河川敷の草取り行事があるため夏山のいい時期にサラリーマンにとってはなけなしの日曜日が取られてしまうとyukiさんは恨めしげ。

宿をチェックアウトして登山口のある御霊櫃峠へ向かう。1000mちょっとの山に登るというのに峠の標高は876m。一見楽勝に見えるが、途中の大将旗山を含めて小さな瘤を7つも越えて行くので、そこそこ歩きがいがあるらしい。

30分もかからずに御霊櫃峠につくと峠の反対側に猪苗代湖が広がり開放的な展望だ。以前から御霊櫃峠という名称はいわくありげだと興味があったのだが、こんな形でさっそく機会をもてるとは思っていなかった。さっそく名称の由来と歴史伝説を記した看板を読む。ふう〜ん、なるほど。(写真参照)

砂利道の登山道を登ると最初のポコに風神社と雨神社という二つの石祠が置かれていた。空は晴れているのにガスが流れ行く手の視界を遮っている。早くも暑さでぐったりするが、二つ目のポコを越えると樹林帯に入り、涼しい風に吹かれる。ブナの二次林だ。さらに急登で次のポコを越え大将旗山手前になると樹林帯を抜けてお花畑となる。6月にはヤマツツジが咲き乱れるらしい。第一陣の花の盛りは終わっていたが、大将旗山直下にはイワキンバイがたくさん黄色い花を咲かせていた。

大将旗山。この辺りは源義家伝説が各所に残されていることを知る。山名から想像できるように、義家が軍旗を掲げて戦勝祈願した山らしい。御霊櫃峠の反対方向の山稜にある高旗山も由来は同じだ。だいたいこの手の歴史伝承は各地にあって珍しいことでなはないが、そうした言い伝えがいつどのように作られて定着したのだろうか。源の義家はもともと西の出身でこの地へは前九年の役として知られる東征にやってきて名を残している。ってことは地元から見れば征服者。どう見ても草の根の伝説ではなさそう。だからといってわざわざ歴史を調べるほどの意欲はないのだが。。。

そんなことよりも、この小さな山稜が奥羽山脈の一角をなす分水嶺だということの方が私にとっては意味深い。会津と中通りの気候もここが境目になっている。大将旗山からは起伏も緩やかになり、いい感じのブナ林を進む。ほとんどがまだ若い二次林なので昔はどうだったのかたずねた所、この辺りは炭焼きが行われていたとのこと。yukiさんの家もお父さんが滝口登山口側の山腹に炭焼き釜を持っていて炭焼きをしていたと聞いて興味津々。若いときは山から炭俵を担いで下ったという。そのときの体力が土台になっているという話を聞き、どうりでいつまでたっても健脚なのだと納得する。

額取山につくと多くのハイカーがくつろいでおり、中には早々と宴会をしているグループも。ガスがでていたので吾妻や安達太良の北西方向の展望が無い。時間もたっぷりあるのでコーヒーを入れて待つことにした。みな思いは同じなのだろうか、誰も山頂をあとにしようとしない。

額取山は地元では安積(あさか)山として親しまれている山で、小学校の遠足で必ず登る山なのだという。yukiさんもこれまで何度登ったかわからないほどで、大げさに解釈すると、人生をともにして来た愛着ある山。1000mほどの裏山とはとても思えないほど奥深さが感じられ、見下ろす山並みも緑が深い。猪苗代湖の向こうには頭が雲で隠れた磐梯山。早くもアキアカネがまっている中、のんびりとコーヒーを飲みながらくつろぐ。

最近は県外からの登山者も多いらしい。なにしろ古今集や万葉集にも歌われているらしく、ものの本によれば、古くから歌枕として知られていたとある。(あさか山かげさへ見ゆる山の井のあさき心をがわ思はなくに 采女 万葉集)そんな話を前夜夕食帰りに、山登りをするという車の代行ドライバーさんに話したら、歌をすらすら暗唱してくれて驚いた。こうなると詳細な歴史考証云々を言うのは野暮な話で、ロマンをふくらませて楽しもう。

いつまでたってもガスがすっきり晴れないので2杯目のコーヒーを入れてのんびりしているとガスが流れ始め、展望があらわれた。待ったかいあり。分水嶺は磐梯熱海で一旦落ちて再び安達太良方面に続く。熱海方面の稜線を見下ろしながら、yukiさんは敬愛する川崎精雄さんが登った熱海からのかつてのヤブ尾根ルートを目で追う。

川桁山と吾妻連峰がうっすら見えたが、安達太良はやはり雲がかかっていた。磐梯山もようやく全貌が見えてきた。深田久弥は「日本百名山」の磐梯山の項目で、高旗山から額取山につづく山稜からみた磐梯山が一番美しいというようなことを書いているが、何度も登っているyukiさんはその記述がどうしても納得いかず、ほんとうにこの山稜を歩いた上での感想なのか疑問に思っているようだ。お調子者の私は、確かに類似の前科があるからそうかもしれないなどと軽々と相づちをうつ。

1時間ほどのんびりして一通りの展望を確認した所でそろそろ下山することに。アップダウンが多いコースは行きも帰りもコースタイムはあまり変わらない。yukiさんは若いころは2時間で往復したなんていっている。若いときは展望や草花を楽しむというより、とにかくガツガツ歩きたい時があるようだ。そんな歩き方して何が楽しかったんだろ〜と今では思うらしい。

大将旗山を過ぎた所で振り返ると岩場が見える。チョットしたクライミングが楽しめるため、yukiさんは何度か足を運んでいるとのこと。話を聞くと遊びが過ぎて危ない目にも遭ったなど、いろいろな話が飛び出す。最初は岩場によって帰ろうなどと話していたが、ハイキングだけで満足したのでそのまま御霊櫃峠にもどった。

こうしてこれまで何度か話をきいていた額取山にようやく登る機会を得、いつもとは一味違う山歩きを楽しんだ。時間もたっぷりあるのでレトロな雰囲気の北川温泉ごれいびつ山荘で温泉につかり、食事をして郡山まで送ってもらい帰路についた。

 

御霊櫃峠9:20−大将旗山10:10−額取山11:05/12:05−御霊櫃峠13:45