ブナの沢旅ブナの沢旅
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2014.04.27
鳥海山
カテゴリー:雪山

2014年4月27日

 

週末は関東以北の天気も良さそうだし、だらだらした家の片付けに疲れてきたので、気分転換をかねて山へ行きたいと思った。そんなときyukiさんが鳥海山へ行くという。自分の選択肢にはなかったけれど、去年神室山から見た美しい姿が目に浮かび、いい機会だと思って同行させてもらうことにした。

今の時期に鳥海山へ行くのはほとんどが山スキーヤー。樹林帯がなく麓から一直線に山頂へと雪原を登って行くので、積雪期は私の好む山ではないといわれたが、まだ登ったことがない山はどこでも一度は行ってみたい。

とはいえ鳥海山は秋田県の日本海からせり上がる遠い山だ。そんな山へ前夜発とはいえ日帰りするのだから、自分でも物好きだと思う。郡山からも5時間かかるというので新庄駅で待ち合わせることにした。

新庄へは今の時期に3年続けて来ている。電車が新庄駅に近づくとどっしりとした山容の杢蔵山が手に取るように見え、奥には八森山と神室連峰の山並み。去年3日間で端から端まで歩いたことを思い出し懐かしい気持ちになる。

今年の冬は週末になると悪天がつづいたため一度も檜枝岐の山に行く機会がなく、yukiさんとはほぼ半年ぶりの山行だ。途中のスーパーで買い物をして祓川の駐車場へ向かう。雪壁のくねった細い道を登っていくと駐車場にはなんとすでに多くの車が駐車していて驚く。駐車場の奥に空いたスペースを見つけると隣の車は静岡ナンバー。前日の車道の除雪開通に合わせ、全国から鳥海山の初滑りを楽しみにスキーヤーが押しかけて来ているらしい。片隅にテントを張って仮眠する。

夜が明け外に出てみた鳥海山の姿に一瞬息をのむ。聞いていた通りの美しい姿が目の前に広がっている。さっそく出発の準備をしているパーティもいる。私たちも6時には出発。朝には駐車場が満車になっていた。ルートは明瞭だしスキーのトレースもたくさんある。予想以上にシューやツボ足のトレースもある。中旬に行った会越の、誰もいない藪と雪の尾根とは対極にあるような山だ。

yukiさんはスキーでさっさと滑るように進んで行くが私は雑事の疲れがたまっているせいかシューの足取りが重い。見渡す限り雪原の広大な斜面を淡々と登るが、いつも山頂の美しい姿が見えるのがせめてもの慰めか。言い方をかえると見える景色はずっと同じで次第にズームアップされて行く感じだ。だから同じ写真しかとれないと軽口がでてしまう。

途中に屋根だけ出ている七ツ釜避難小屋があり、ここで休憩する。下からは続々とスキーやボーダラーが登ってくる。下から上まですべてが見える山というのも私には珍しい。昨年燧岳に登った時にあっけらかんとした印象を受けたが、鳥海山はそれがさらにスケールアップしている。

遠目には山頂までなだらかな斜面がつづいているように見えるが、実際には山頂下は傾斜がましてくる。スキーを履いていると直登はきびしそうだ。場合によってはここからアイゼンを想定していたが、気温が高いので適度にシューのエッジが潜り直登も問題なかった。

いつの間にか頭上に人の姿が見えると思ったら山頂だった。なんだかあっけなく登ってしまった気がするが標高差は1000メートル以上ある。正式には七高山という「山頂」には10人位いたが、なんとか混み合わない第一陣グループの登頂となった。真正面には標高が一番高いドーム状の新山が大きい。奥につづく外輪山の尾根は雪庇が張り出し、ようやく違った景色となる。

時間も早いしトレースも見えるので、隣の新山を往復することにした。アイゼンに履き替えてまずは垂直に近い雪壁をバックステップで下る。登って来た斜面の反対側は荒々しい岩峰だ。新山の山頂からは今まで見えなかった山並みが広がる。ほとんどの人は七高山で引き返しているが、ほんの少し足を伸ばしたおかげで変化と多様性を感じることができてよかった。

日本海が近いのだが、霞んでいた為にほんの微かに海岸線が認められるだけだった。もう一つ楽しみにしていた神室連峰の山並みも霞んで見えなかったのは少し残念。七高山にもどると山頂は大にぎわいとなり、さらにおびただしい数の人たちが列をなして登ってくる。

帰りはスキーとシューで別々に下る。とにかくだだっ広い斜面なのでいつの間にか違う所に下ってしまうことも多いらしい。yukiさんから簡単に注意事項を教えてもらい避難小屋で合流することに。確かに正面の広い尾根に下りたくなるがルートは途中から左にそれて行く。今日は視界も良好だし人がどんどん登ってくるので問題ないが、ガスってトレースが消えていると恐い思いをしそうだ。

避難小屋からは祓川ヒュッテをめざしてどんどん下って行く。ほとんど下山間近なところでもこれから登ってくる人がいるのにまた驚く。いつもの山行と勝手が違うので驚いてばかりいる。きっと地元の人なのだろうというとyukiさんが相槌をうち、自分も安達太良山に午後から登ったりするという。

新山への往復というおまけをつけて充実度を上げることができた鳥海山だったが、なんと下山してもまだ正午前。昨夜は暗くてわからなかった雪壁の回廊を下って行くとまわりはブナ林となる。さらに下ると芽吹きが始まりブナの新緑と残雪のコントラストがとても美しい。振り返ると鳥海山が近くで見たのと同じ優雅で美しい姿を見せている。

早立ちを心がけたおかげで下山後に余裕ができた。麓の鳥海山荘でゆったりと食事をして温泉につかった。新庄発の新幹線は2時間に1本しかないが、それでも予定より1本早い電車を40分ほど待った。

こうして短い時間だったけれど、新しい体験ができた。雪の鳥海山はきっとこれが最初で最後だろうが、山麓のブナ林を楽しめる沢登りができるなら、またぜひ訪れてみたいと思った。

 

 

祓川駐車場5:55−七ツ釜避難小屋7:10−七高山9:10/10:10(新山往復)−駐車場11:45