ブナの沢旅ブナの沢旅
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2014.02.09
棒ノ嶺
カテゴリー:雪山

2014年2月9日

 

東京周辺は前日記録的な大雪に見舞われ、交通機関も大混乱。閉鎖された道路も多く、山行計画の変更を余儀なくされた人達も多かっただろう。土曜日午後に檜枝岐に移動予定だったが、暴風雪予報や交通機関の乱れを恐れて予定を中止し、天気の回復がみこまれる日曜日は近場でハイキングをすることにした。

とはいえ山への足がすぐに正常化するとは思えない。西丹沢や奥多摩はバスが運休している。大倉へのバスは動いているが塔ノ岳方面は人出が多そうだ。そこで奥武蔵を地元の山とするいつもの仲間に話を持ちかけた。道路事情が不確かなので通行が確実な飯能のさわらびの湯まで行き、その先の除雪具合などを見て決めることにした。このあたりはいくつもハイキングコースがあるので融通がきき、こういうときは便利な山域なのだ。

現地に向かうとさすがに雪深く、この先は除雪されていなかった。雪原となった駐車場には車が一台。棒ノ嶺に登るため前夜移動して大変だったらしいが、その割に朝はのんびりしており、山に登る気配もない。

当初は、有間林道の奧に進んで仙岳尾根から県界尾根に乗り日向沢ノ峰方向の尾根を歩く計画だったが、とても無理。一番手っ取り早く取り付ける滝ノ平尾根から棒ノ嶺に登るコースで手を打つことにした。そのときは棒ノ嶺くらいは大したことがないだろうから、仙岳尾根を下ろうかなど話したりしていた。

私はワカン、kukenさんはシューをはいて出発するが、軽く考えていたせいか、しょっぱなからあさっての方向に進んでしまう。なめているからだと二人で自戒しながら民家脇の登山口へ。すると単独者のツボ足トレースがある。きっとすぐに追いつくだろうと言いながら、きれいに手入れされた植林帯の道を登る。気温が上昇しているために、スギ林の中はとけた雪が雨の様に降り注ぐ。

もともと植林の山は興味ないので淡々と雪を踏んでいく。1時間もしないうちにツボ足の先行者に追いつく。軽く挨拶を交わして先に進むが、次第に雪深くなる。尾根に乗ると谷筋から吹き上げる風で小さな雪庇となり、膝上ラッセルをしいられる。ここは飯豊かなどとつぶやきながらkukenさんはまんざらでもなさそう。植林ばかりで面白くないけれど、足下の雪だけをみてラッセルしていれば遠くの雪山と変わらないなどと相槌をうつ。

尾根は時々林道と交差する。kukenさんが何十年か前に来たときにはなかったらしい。尾根をぶち切って無理に道路をつくったものだから登山道の付け方も乱暴だ。二度目に横断したあとは壁のような窪地を登るのだが、両側に張り付いた雪が底雪崩のようにくずれ落ちた。

木製やぐらがある見晴らしのいい台地にのる。雪が吹きだまるのか腰ラッセルとなり楽しいね〜。深雪に難儀しながら植林の痩せ尾根をすすむとようやく変化があらわれる。大きな岩は岩茸岩と命名されている。関東ふれあいの道の標識があらわれ、白水谷登山道への分岐となる。これまで標識らしいものはなかったが、見ると私たちが歩いて来た滝ノ平尾根は冬道と表記されている。谷沿いの登山道の方が一般的らしい。

ようやく権次入峠の稜線に乗り上げたが、ここも南面は植林だ。登山道にトレースはない。棒ノ嶺までもうちょっとだというと、kukenさんは結構あるとか、最後は急登だなどという。ここで引き返す手はないので、さあ行こうと先行して意思表示。観念したのか、その後は先行してどんどん進む。山頂手前は登山道に雪が吹きだまりとても進める気がしない。登山道を避けて斜面を膝ラッセル。そしてようやく山頂へ。

何の予備知識もなかったので、目にした山頂の姿は意外だった。まるで広い公園のようで東屋まである。ずっと展望のない植林帯だったので、一面刈り取られた開けた山頂の展望がとても新鮮に感じられた。普段はハイカーで賑わうらしいが、私たち以外誰もいない。まっさらの雪原にできた風紋がきれいだった。1000mにも満たない低山ながら、こんなときは、たかが棒ノ嶺されど棒ノ嶺の感慨だ。最初はあれほどなめていたのに、二人で達成感を噛みしめる。

午後2時を回っていたので空はかすみがかっていたが、それでも日光白根や赤城山,谷川方面の山並みが見渡せた。ただ、足下の山々はみな黒々とした植林で覆われている。あんまりにもスギ林をけなすものだからkukenさんは、この一帯は西川材と呼ばれるスギ、ヒノキの産地で歴史が古いのだと説明してくれた。武甲山の奥にみえる大持山だけは自然林の山で、以前冠岩沢を遡行したあとで下った西尾根はブナの大木が点在して好印象だったことを思う。(西川材について後日調べたところ、元々は古くから地元で消費されていたスギ・ヒノキ材だった。江戸時代に江戸で火災が多発したために木材が不足したため川で江戸に運んだところ、西の川から運ばれる材木ということで西川材と呼ばれるようになったとのこと)

時間も押しているので当然おとなしく来た道を戻ることに。下りでは、登りで避けた深雪の登山道をヒャッホーと滑りおりあっという間にゴンジリ峠へ戻る。下りは早いがけっこう長いコースなのでいい加減飽きてしまう。最後の林道交差点で私たち以外のツボ足トレースがあらわれる。行きに追い越した単独者はこの辺りまでで引き返したようだ。さらに駐車場の例の2人組のトレースもあらわれる。せっかく吹雪の前夜にやって来てここまでなのかと思うが、まあ人それぞれ。山頂までいった私たちは偉いね〜などといいながら登山口に降りたった。

今年は谷川岳でも武尊山麓でもラッセルするほどの山行はしていないため、はからずも奥武蔵の棒ノ嶺で今年一番の深雪を体験。時と場合によって里山も侮れないことを感じさせてくれた楽しい雪山ハイキングとなった。

駐車場9:10−棒ノ嶺登山口9:20−ゴンジリ峠13:35−棒ノ嶺山頂14:10/14:25−登山口16:23−駐車場16:35