ブナの沢旅ブナの沢旅
▲トップページへ
2013.09.27
中御所谷西横川
カテゴリー:

2013年9月27日

 

あわただしい一週間だったが、ようやく一段落した。上京中のYさんとめずらしく日程が合ったので手軽に行ける日帰りの沢に行こうということになり、遅まきながら中央アルプスの人気の沢、西横川に決めた。

前夜のうちに現地へ向かい、駒ヶ根インター手前のサービスエリアで仮眠することに。トラックの駐車場は満車状態で驚いたが、奧の乗用車エリアには一台ずつ仕切られてゆったりとした駐車スペースがあり、静かで快適だった。中央アルプス方面に行く場合はこのSAを定宿にできそうだ。直前になって予報は曇りから快晴に変わり、満天の星空に気をよくして就寝。

翌朝菅の台バスセンターに移動し、6時に予約したタクシーでしらび平手前のしらびそ橋で下ろしてもらう。タクシーの運転手さんも西横川が沢登りされていることはよく知っており、さすが人気の沢だと思う。

橋を渡ったところから踏み跡をたどって沢におりる。最初の堰堤は左岸から巻き、次の堰堤は右岸の壁際から越える。大岩ゴーロと小滝が交互に続き、険悪な雰囲気が微塵もなくて最初からリラックスムードだ。ただ下流部は倒木や流木が多く、最近の台風の影響なのかもしれない。

すぐに東横川との二俣になる。東横川の奧には見栄えのする滝が見えるが、進むのは一見さえない雰囲気の西横川。とはいえしばらくすると沢に陽が射しはじめ、渓相は俄然耀きをます。やっぱり沢はこうでなくちゃね~とホクホク顔。

簡単なナメ滝をいくつか越えると前方の草地斜面に目がとまる。ナントこの時期にニッコウキスゲが咲いている。キスゲだけでなく、ピンクや黄色、薄紫の花が咲きそろう季節外れのお花畑に驚くやら大喜びするやら・・・今年は雪解けが遅かったせいなのだろうか、すごく得した気分になる。

快適にどんどん登っていくと早くも30m大滝があらわれる。多くの滝は、遠くからでは登れそうになく思えても近づくとルートが見えてくるものだが、この大滝は遠目でも傾斜が緩く手足も豊富で登れることがわかる。水流左の乾いた岩を快適に登って滝上へ。登ってきた沢床がはるか下まで見渡せて気持ちがいい。見上げれば怖いくらい真っ青な青空が広がる。

その後も10mクラスの滝が連続し、どれも快適に登れる。快適なのだが、川原がないためひたすら岩登りを続けているような感じで疲れがでる。太陽が背中を照り付け夏のような暑さだ。衣類調整の休憩をしたところは素晴らしい展望台で、振り返ると谷の向こうにたなびく雲の上には南アルプスの山々が勢ぞろいして壮観だ。

20mナメ滝もルートを選べば難しいことはない。西横川の滝はほとんどが左右のどちらかが開けた岩壁で登りやすくなっている。さらに幅が狭まった長いナメ滝を登っていくと上部がやや立ってきた。

あとで気づいたのだが、これがガイド本でいう「待ちに待ったゴルジュの中の30mナメ大滝」らしかった。らしかったなどと思うくらい、実際にはずっと続いたナメ滝の続きくらいにしか見えなかったのだが・・・

その後幅広の8m滝を最後に水流が次第に細くなり、間もなく水枯れとなる。あとはひたすら涸れた急斜面のゴーロやナメ床を登ると薮っぽくなり、トラロープが見えて長谷部新道にでた。休憩をはさんで遡行時間は5時間と、我々にとっては上出来のコースタイム。ロープやお助け紐を出すこともなく快適な沢登りというより岩登りのようでもあった。

ナメ滝は水流の真ん中を登ればもっと難易度がましてチャレンジングだったと思うが、今回は手軽に気楽に沢登り!がテーマだったので、これで十分なのだ。

長谷部新道はところどころ崩れていたりハイマツがうるさかったが、おおむね良好。完全に廃道にならないのは沢登り愛好者にかなり歩かれているからなのだろう。途中からは展望がひらけ、駒ヶ岳から宝剣へ続く岩稜と千畳敷カールの展望がすばらしい。

沢登りの後の山登りほどつらいものはないのだが、ずっとトラバース道をたどりながら抜群の展望を楽しむことができ、しかも一般登山者は歩かないので誰もいなくて靜かだ。西横川の良さの三分の一くらいは、この展望の廃道あるきだと思ったほどだ。

千畳敷に近づくととたんに静かな山から賑やかな観光地に迷い込んだ気持ちになる。天気がよいからなのか、平日にもかかわらず大勢の人に驚く。大半は観光客だ。ロープーウェイにも行列ができていたが臨時運行のおかげで10分待ちですんだ。シーズン中は沢の記録でも2時間待ちなんていうのをよく目にしたが、この有様ではさもありなんと思った。

あっという間に下山してバスに乗り継ぎ、駐車場のあるバスセンターにもどった。アラ還パーティにとっては登り一辺倒のくたびれる沢だったが、谷から見上げる抜けるような青空と素晴らしい展望、ロープーウェイの楽チン下山、手頃でなかなか楽しい沢だった。(sugi、ako)

nishiyoko1 nishiyoko2

しらびそ橋6:30-二俣7:05-長谷部新道11:35-ロープーウェイ駅13:30

写真集