ブナの沢旅ブナの沢旅
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2013.03.10
高曽根山
カテゴリー:雪山

2013年3月10日

 

高曽根山は吾妻連峰と飯豊連峰の間にはさまれた登山道のない地味な山だが、ブナと山頂の展望がすばらしい山として知る人ぞ知る「地元のいい山」だ。

喜多方市の最高峰(といっても1443.2m)であり、飯森山、雄国山と合わせ「喜多方三山」と呼ばれており、会津百名山でもある。と、まあざっとこんな山だが、

2年前に計画したものの天候不順で中止になってからは棚上げ状態になっていた。3月に入ってようやく天候も安定してきたとフクシマ便りが届き、前々から行きたいと伝えていた高曽根山が実現した。

いつものように当日の朝郡山駅でピックアップしてもらい、裏磐梯の檜原集落から蘭峠をめざす。1ヶ月ほど前の西大巓とほぼ同じルートだが、驚くほど雪が少なく道路は乾いている。檜原湖を回り込むように走るが、湖ではワカサギ釣りのテントがあちこちに点在している。桧原集落から旧米沢街道の蘭峠を越えて少し下ると車が4台も駐車していて驚く。手軽なシューハイキングの山として最近はますます人気なのかもしれない。

駐車地が一杯だったのでさらに進んで適当なところに車をとめる。数メートル先の道路脇に雪に埋もれた標識らしきものが頭だけだしていて頭の「史」という文字が読み取れた。少し気になったので帰って調べたところ、「史跡物見ノ岩」の標識で、昔山賊がこの岩から通行する旅人の様子をうかがっていたと伝えられているとのこと。さらにその少し先には中ノ七里(米沢からも若松からも七里の一里塚跡があったという、歴史ある街道筋であることを知った。

先行車の駐車地脇の雪壁にとりつこうとしたら数名のスキーパーティが早々と下ってきた。聞くと雨が降り出しこれから天気が崩れるので途中で引き返したとのこと。思い切りの早い若者達だと思いながら、私たちは遅い出発となる。小雨がぱらつくどんよりとした空で、雪は残雪期のようであまりきれいではない。しばらくは沢沿いの林道歩きなので、淡々と進む。空模様はますます陰鬱になり視界も悪くなってきたが、山の斜面のあちこちにブナが目立つようになり、これから乗り上げる尾根に期待がふくらむ。

林道から尾根にあがるところで2組の先行者を追い越す。尾根の取り付きは広い斜面で、さっそくブナの大木が点在するようになる。高曽根山は全山ブナ林ながら50年前に営林署の伐採が入りかなり伐採されてしまったと聞くが、この尾根ととなりの小塩川右岸尾根は大木が残っている。そこでブナのきれいな二つの尾根を周遊するコースを予定したのだが・・・

Yukiさんは連日の飲み会で体調が悪いらしく、いつもと違って足取りが重そうだ。視界も悪くおまけに風が出て来た。そんなこんなな状況なので、ブナの森を歩くのがちょうどいい。雨が雪に変わり、木々の枝にうっすらと霧氷がつき始めた。短い行程なので、幻想的なブナに見とれたり写真をとったりしてゆっくり登っていく。1400mあたりからブナが矮小化し、さらに低灌木の疎林となる。風はますます強く、ガスはますます濃くなっていく。

まったく視界がないので山頂に行っても仕方がないが、少しの辛抱なので風雪を押して山頂を踏むことに。なんの変哲もない広い台地上の山頂だ。しばらくすると後続の1パーティも登ってきた。ほんとうならば、こっちに飯豊や飯森山、あっちに磐梯山、吾妻、安達太良がみんなみえるはずなのにーと残念がる。このような天候なので周遊コースなどとんでもなく、素直に往路を戻ることにした。それにしても風がつよいが、痩せ尾根ではないので先日の旭岳のような恐怖感はない。

長居は無用とすぐに下り始める。天候はあまり快適ではないけれど、登りよりも雪がふえただけブナのたたずまいが美しく感じられる。下りのyukiさんはいつものような早足で、つられてドンドン下るとあっという間に尾根取り付きの谷筋におりた。ここまで下ると風もほとんどなくなるが、雪はますます降りしきる。適当な所で休憩する間にも、体中雪で覆われてしまいそうになるほどだ。おかげで残雪期のような少し汚れた雪がすべて新雪で覆い隠され、景色がとてもきれいになった。これはこれで、なかなかいい感じではないかと思う。

車道に戻るとつい先ほどまで乾いていた道路が真っ白に覆われ、春から真冬に逆戻り。こんな天気なので予定のコースを歩くことができなかったし、展望もなかったが、ブナの尾根は期待通りいい雰囲気だった。そして、また来てもいいかなと思った。きっともっと早い、ラッセルするくらいの厳冬期の方がいいだろう。もちろん晴れた日という条件付きだが・・・

4時間ほどの短いシューハイキングだったので時間はたっぷりある。まずは喫茶店でご主人が趣味から始めたという裏磐梯で一押しの蕎麦を食べ、安達太良の温泉で湯につかる。そして帰り道yukiさんの自宅によって古い山岳図書を貸してもらい、コーヒーを飲みながらご家族とおしゃべりなどして駅まで送ってもらう。考えてみれば雪山シーズンがはじまって以来、yukiさんとの山行はいつも天候不順で展望がない。それというのも今シーズンは週末のたびに関東以北は暴風雪に見舞われたからだ。次回はきっと天気のいい山に行きましょうと念力をかけて車をおりた。

蘭峠駐車地9:15-高曽根山11:40-駐車地13:15