ブナの沢旅ブナの沢旅
▲トップページへ
2012.12.27
天狗岳
カテゴリー:雪山

2012年12月27日

 

冬型の気圧配置が続き、ブナの森はなかなか好天気が見通せなかったこと、たまには耐寒訓練もいいかなということだった。比較的短時間で難しくない天狗岳の周回コースとした。夏の天狗岳は、2011年8月、河原木場沢を遡行した際に訪れているが、冬は初めてだ。

結果は、またとない好天気で素晴らしい展望を味わえた。しかし、寒かった。家を出るときにマイナス10度以下だったから、登山道はマイナス15度以下だっただろう。

6時、凍結した道路を慎重に登山口の唐沢鉱泉に向かう。明るくなってきた6時半過ぎ、宿の前の無料駐車場に到着。初めからアイゼンを装着して歩き始める。宿のすぐ先で、中山峠と西天狗への分岐があり、我々は西天狗に向かう。さすが八ヶ岳、トレースがしっかりついている。踏み固められており、念のためわかんを持っていったのだが全く不要だった。

陽が射さないしらびその林を登っていくが、寒い。手足の先がジンジンしてくる。手袋をもう一枚追加して三重に。いつもはしばらく歩くと体が温まり、手足にも血が通ってくるのだが、なかなか温まってこないどころかむしろ冷えてくる。凍傷にならないかと心配になり、akoさんは秘策、テルモスの熱いお茶にしびれた手を浸して人心地ついたようだ。

展望のない森の中を黙々と登っていくが、ときどき少し開けたところがあり、陽が射してほっとした気持ちになる。そういうところから展望が広がってくる。背後に中央アルプス、木曽御嶽がどーんと座っている。8時ごろには雲一つない快晴が確認できた。1時間強の急な登りの後、西尾根の稜線に乗る。道標があり、稜線を下っていくと枯尾の峰に至ることがわかる。

枯尾の峰からは、河原木場沢を遡行した沢人が下りに使うバリエーションルートがある。さらに1時間で大きく展望が開けた第一展望台に着く。霧氷が海老の尻尾となりびっしり付いている。東に西天狗、そして南側に八ヶ岳の八つのうちの一つと言われる峰の松目、その奥に阿弥陀、赤岳、そして南アルプスの甲斐駒、仙丈、北岳、中央アルプス、木曽御嶽。パノラマが広がりうっとりとするが、展望の良いところは風もあるためのんびりできない。

すぐに西天狗山頂手前のピークである第二展望台に向かう。ここまでくれば、もう西天狗は目の前に。森林限界を超えて岩場の登りになると、トレースがやや不鮮明になるが、問題はない。無雪期のコースタイム2時間半のところを4時間かかって西天狗山頂に到着した。

さえぎるもののない大展望、後立山連峰や妙高戸隠まで見渡せる。空腹だが風があり寒いため用意したカップ麺を作る余裕はなく、菓子を口にしただけで東天狗へ向かう。かなりの急下降だが、トレースがしっかりしているので恐怖は感じない。30分で東天狗の山頂に着いた。コルまでは風もそれほどではなかったが、東の山頂に近づくと急に強風になった。西天狗の手前ですれ違った人から、東天狗と中山峠への稜線は風が強かったという情報は得ていたのだが、その通りだった。

東天狗に来ると、急に登山者が多くなる。黒百合ヒュッテから、あるいは南から、北からの稜線縦走者が集まるからだろう。中には、ヒュッテから空身でやってくる強者も。

東天狗からは、7月に友人と登った稲子岳とその南壁、そして稲子岳の西に広がる深さ数十メートルのかもしか平と呼ばれる凹地が見下ろせた。その稲子岳や北八の山々を見下ろしながら下降していく。振り返ると山頂は強風で雪煙が上がっている。あっという間に中山峠に着いた。7月には、ここで野口健のテレビ撮影隊に出会い、言葉を交わしたのだが、この番組が天狗に登った翌日に放映された。もちろん、我々は画面には出てこなかったが・・

峠からわずかで黒百合平、黒百合ヒュッテの周りは陽が当たり風も納まり、ここでようやくカップ麺ということになった。ヒュッテのベンチを借り、熱湯を注ぎ待つこと5分。口にした麺は固く、スープはぬるかった。外気温に熱を奪われたのであろう、失敗であった。

ここからの下りは快調で、コースタイムより早く、2時過ぎには唐沢鉱泉に戻り、2012年の締めくくりとなった。

2012年一番の快晴。2012年一番の寒さ。日頃低山が多く、寒冷や強風に慣れていないブナの沢旅にとって、課題も残った山行だった。

唐沢鉱泉7:00-第一展望台9:20-第二展望台10:00-西天狗山頂10:50-東天狗山頂11:20―黒百合平12:20/12:40-唐沢鉱泉14:10

写真集(編集中)