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2012.11.10
落石による滑落事故顛末記@津室沢
カテゴリー:雑記帳

11月4日午後1時半頃、津室沢の3段25m滝を高巻いて沢に下降中、背後から落石を受けて転倒、滑落し、第八肋骨を骨折して全治4週間の診断を受けた。具体的な状況については曖昧なところが多いが、事故情報はできるだけ共有することが望ましいと思い、顛末を記すことにした。

3段25m滝は下降の場合、滝下がすぐに泙川本流に出合うほぼ最後の滝だ。赤テープにしたがってある程度登ってから右方向にトラバースすると眼下に泙川本流の川原が見えた。そこで急斜面ではあるが、立木に補助ロープをかけかえながら下っていった。ある程度下ったところで傾斜が緩んだので、一足先にロープなしで左にトラバースして小尾根状の斜面に移動。そこからさらに少し下ったところで、落石を知らせる叫びが聞こえた。

トラバースしたので同行者は自分の真上にはいないはずだと思い、そのまま下り続けようとしたところ、ほんの2,3秒後に背中に大きな衝撃を受けた。落石の直撃だった。ドーンと突き飛ばされるように体が倒れて一回転したあと斜面を滑り落ちた。落石はザックにあたったため痛みとかはなく、一回転しているときも暢気なもので、「あれっ、なんだか平気だわ、どこも痛くないわ」と心の中でつぶやいていたことを覚えている。

どのくらい滑落したのかは不明だが10m前後ほどだろうか。滑り落ちながら前方に立木が見えたので、木を手がかりにして止まろうと膝を曲げて足裏で踏ん張る姿勢をとった。ドスンという衝撃音と共に滑落は止まった。ところが衝撃の弾みで上半身が逆さになってしまい、苦しい姿勢なのに起上がれない。ザックを捨てようとバックルをはずしてみたが、手の位置が悪くて肩からはずすことができない。諦めて大声で助けを呼ぶのとほぼ同時に同行者が降りてきて、引っ張り上げてくれた。

この間、自分は訳のわからないうちに転げ落ち、あれこれ考える余裕などなかったが、一回転して転げ落ち視界から消えそうになった様子を目撃していた同行者の方が恐ろしい思いをしたのではないか。あとで聞くと、手助けして起き上がるまではヘリを要請しなければならないかと思ったそうだ。

態勢を立て直し、一息入れるととくにひどく痛む所もなかったので、そのまま慎重に斜面を下って川原に降り立った。ここで落石の状況を聞いた。石の大きさは20センチ程度とのこと。石は同行者の足下ではなくすこし右の位置から斜め左に落ちていき、気付いたときはすでに2人の距離の中間にあったという。具体的な位置関係の記憶は定かでないと言うが、ロープを片付けたところから私がトラバースした方向へ進んでいる最中に落石が発生した。作業中か移動の際に間接的に浮石を誘引したのかもしれないし、そもそも自然発生の落石かもしれない。

やはりまったく無傷はあり得ず、しだいに左の背中と左の膝に痛みが出て来たが、なんとかザックを背負ったまま歩くことはできた。かなり時間がかかりそうなので同行者に先に戻ってもらい、車が入れるところまで迎えに来てもらうことにした。

最初は枯木を杖代わりにしてトボトボ歩いていたが、むしろ背中の痛い部分を手で押さえつけるようにして歩いた方が早く歩けることがわかった。車に合流後は着替えをすませ、洗濯物以外の山道具はすべて宅配便で送ってもらうことにした。ザックを軽くできたおかげでなんとか無事に帰宅し、翌日整形外科医で診断を受けた。

レントゲン診断の結果肋骨が1本折れていたが、医者からはこの程度ならたいしたことはないがしばらくは動かないようにいわれた。肋骨はもともと骨折しやすく、咳のしすぎや疲労などでも折れる場合があるらしい。

事実関係はざっと以上のとおりだが、自分としてもいくつか反省点がある。まずは2人とも落ち葉が積ったザレ斜面を下るさいの落石の可能性や危険性をほとんど頭に入れていなかった。あとでロープを出したあたりの写真をみると大きな石が点在している。落石の認識があれば、離れて行動することはしなかったはずだ。

もう一点は、ある程度下ったところでもう大丈夫と油断してロープ下降をやめてしまったことだ。あの時ロープで下っていれば落石の方向を確認でき衝突を回避できたかもしれない。事故というのは気の緩みの隙を突いて起こるものだと頭ではわかっていたはずなので悔やまれる。

けれど今回のような場合、落石を回避する方法が他にあったのかどうかよくわからない。ラクの声を聞いてからあっという間に落石をうけたので、とっさに避けることができたかどうか、かえって振返っていたら体の正面にあたっていたかもしれない、などと思ってしまった。

今回は骨折とはいえ、それほどの大事に至らずにすんで幸いだった。そして多少手荒な形ながらも貴重な教訓を得ることができた。この体験を無駄にせず、これからも気を緩めることなくリスク管理を万全に整えながら、今まで通りの遊びを続けていきたいと思うのだった。



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