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2012.05.30
甲斐荒沢伝丈沢左俣~県境尾根~チョキ~金石沢
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2012年5月30日

 

今回はあまりなじみのない山域の沢ハイキング。去年あたりから関東以西の山域にも目配りして情報を集め始めていた。伝丈沢?それってどこ?「奥秩父・両神の谷100ルート」に掲載されている中級☆印一つのガイド解説だけでは決してそそられる沢ではない。けれど、沢シーズンが始まる新緑の季節は、どんな沢をも輝かせる魔法の力を持っている。(遡行感触は初級☆☆)

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伝丈沢の右俣を遡行すれば手短に登山道から下山できるが、それでは少々もの足りない。そこで本流の左俣を計画したが、こんどは下山路がネックとなる。我々の足では金峰山まで行って登山道を下るとなると日帰りは無理。そこで金石沢を下降する周遊コースとした。

甲府駅でピックアップしてもらい、前夜のうちに奧御岳林道を進んで入渓口の伝丈橋へ。橋を渡ったところに車10台ほど駐車できる広場があり、ここで仮眠する。翌朝朝食を取っていると車がきて、単独の男性が挨拶に来てどの沢に入るのかとたずねた。

平日にこんな沢に来るなんて釣師に違いないと思い、自分たちは沢登りで伝丈沢へ入ると伝えた。沢ではよく釣師とのトラブルが報告されているが、この男性はとてもフレンドリーで、ならば自分は下流の精進川を釣り上がることにするといって一件落着。

林道ゲートの脇を通って少し進み、林道がカーブするところで沢に下ると対岸に踏み跡が続いていた。しばらくは右岸から左岸へ続く山道を歩く。いくつもの古い堰堤を見下ろしながら進み、道が判然としなくなったところで沢に降りた。

最初は平凡なゴーロだが花崗岩の明るい沢で気持ちがいい。すぐに傾斜の緩い幅広のナメ滝があらわれ、右の乾いた岩を快適に登る。あまり期待していなかったので、さっそくいい感じ。その後もゴーロとナメ、小滝を繰り返し、時々樹林に入ってショートカット。新緑と明るい岩盤、沢水の白い流れが適度に混ざり、とりたててどうということはないけれど、いい雰囲気だ。

小滝の上でYさんが立ち止まってこちらを見ているので、どうしたのかと声をかけた。沢音で声は聞こえなかったが、表情や口元から、いい感じ~と言っているのがわかり、私もニッコリ頷いた。

ゆるゆる遡行していくと前方に2段30mといわれている大滝が見えて来た。下からは上段の全貌は見えないが、これまでの渓相からは想像がつかない美しく豪快な滝だ。もちろん直登は不可能なので、左岸の高巻きルートを探る。落ち口へのトラバースに不安があったが、とにかく手前右手の斜面から取り付くと、何となく踏み跡があり、残置テープもあって問題なく滝上に抜けることができた。

ひとまず核心を抜けてホッとする。しだいに沢にも陽が射しはじめ、見上げると真っ青な空に新緑がまぶしい。これだけで幸せな気持ちになれる瞬間だ。滝上も気持ちのいいナメが続き、すぐに二俣となる。

左へ進むのだが、右俣はしばらくきれいなナメが続くらしいので、ザックをおいて少し遡ってみることにした。覆われた岩と緩やかな傾斜のナメが続いている。どおってことはないが、ゆったりとした気持になれて、いい感じ。

二俣に戻り、左俣へ進む。右ほどではないが、しばらくナメが続く。その後はゴーロとなり倒木やら落石帯となり、水も涸れる。あら、まー、これで終わり?と思う頃、ようやく荒れた渓相がおさまり、1800mくらいからは沢登りらしくなって滝が続く。

前方に5x2mの2段滝が覆い被さるように立ちふさがるが、水が少ないのであまり迫力はない。左壁から小さく巻いて滝上に上がるとふたたび両岸が開け、振返ると山並みが見渡せる。源頭部の雰囲気がただようなか、5x5mの幅広2段滝は真ん中を快適に登る。途中荒れた沢になってガッカリだったが、最後に挽回してくれた。1900m越えると傾斜が緩み、倒壊した廃屋があらわれる。作業小屋にしては立派で興味をそそられる。

そろそろ稜線の鞍部に抜ける枝沢に注意するが、いったん見逃す。戻ってよく見ると一段高くなったところから窪状になっていた。コンパスの方角を注意しながら進むとしだいに窪が判然としなくなり、最後は藪もなくすっきりした林床の樹林帯をゆるゆる登って稜線鞍部へ抜けた。鞍部の平坦地にも仮小屋のような跡があった。

 

 

 

 

ここからは県境の尾根歩きとなる。2036mピークまでは明瞭な踏み跡があったが、しだいに尾根はシャクナゲの藪となり、続いているはずの踏み跡を見失う。とくに次の1990mピークからの地形が厄介で尾根が判然としなくなる。小さな枝尾根に引き込まれそうになっては軌道修正の繰り返し。

二人で地図とコンパス、GPSをフル稼働で神経をとがらせて方向を探る。時々赤テープを見つけては大喜びするが、すぐに見失う。その連続で、ようやく明瞭な西向きの尾根に乗ったときはほんとうにホッとした。

唐松林の新緑が美しい尾根は登山道のような踏み跡となり、新緑シャワーの稜線歩きが続く。ピークをいくつか越えるので、チョキまでは意外と遠く感じられた。1883mのポコだけはなぜか3等三角点があって、チョキという名前がついている。面白い名前だが、由来は不明とのこと。

一生懸命調べたというある人の推論では、林道が近くまで通っていて、ちょっくら登れてしまうからなのだとか。清里ネイチャーガイドクラブによるチャーミングな標識が木に掛けられていた。薄曇りだったが、瑞籬山のギザギザの岩峰が遠望できた。去年11月に登ったので親近感がある。金峰山はあいにく雲に隠れていた。

チョキから下った尾根ははっきりわかりやすく、道も落ち葉がフカフカでキックステップで快適だった。左手には金石沢の谷筋が緩やかに広く広がっている。1600mの広い鞍部から尾根を外れて左の緩やかな斜面を下る。まるで森の中に吸い込まれていくような気持ちのいい源頭部で、枝沢からあっさりと金石沢に降り立った。

金石沢も穏やかな流れの沢だ。しばらく下ると5mほどの幅広滝となる。中段までは下れたが、下段が垂直で側壁も足場が悪い。諦めて滝上へ戻り高巻くと上に山道があった。たどると延々山服をトラバースしていく。最初は道があると喜んだが、気疲れするトラバースに嫌気がさし、適当なところでふたたび沢へ下る。きれいなナメ小滝が続いている。なぁーんだ、もっと早く沢へ下ればよかった。

下って行くと両岸に何となく踏み跡があらわれ、ちょっとした悪場は簡単にどちらかを巻けるように道が続いている。そして突然前方が切れ落ち、一瞬緊張する。大滝があるのだろうか。金石沢はなんの情報もないので、出たとこ勝負。巻き道から滝下の枝沢へ下ってから本流へ降り立つと、15mほどの立派な直瀑の手前だった。予想外の展開に興奮気味となる。

滝下からは巻き道をたどる。時々樹林の中に入ったり少し登ったりするが、最後は金石橋に導かれ、沢から這い上がることなく林道にでた。何となくたどったけど、珍しくうまくいった。ご苦労さまでした。10分ほど林道を歩いて駐車広場にもどった。(sugi、ako)

  choki1

 

 

伝丈橋6:00-大滝下7:55-二俣8:40/9:05ー八幡山コル10:40/10:55-チョキ13:05/13:15-金石沢本流出合13:55/14:10-金石橋15:20-伝丈橋15:30