ブナの沢旅ブナの沢旅
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2011.12.28
鍋割山~尊仏ノ土平~塔ノ岳
カテゴリー:ハイキング

2011年12月28日

 

ブナが取り持つご縁山行に弾みがつき、三日とあけずに再び丹沢へ。鍋割山から北尾根を経て尊仏ノ土平に下り、そこから箒杉沢経由で塔ノ岳に登ると聞いたので、案内してもらうことになったのだ。ヒザの違和感があるのでわずか二日の間隔に多少不安があったが、この機を逃すのが惜しかった。鍋割山や塔ノ岳は何度も歩いていても、尾根の反対側は未知の領域だった。

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前回同様、瀬谷駅前でピックアップしてもらい丹沢方面へ向うが予想外の渋滞に巻き込まれる。帰省ラッシュには早いが、世間で12月28日といえば仕事納め。予定より1時間遅れで丹沢県民の森の駐車場に到着する。二俣から歩くと聞いていたので四十八瀬川左岸の林道ゲートに駐車するのだと思っていた。なんと最初から自分がどこにいるのかわからない。東屋やトイレが完備された公園のようで、案内板を見てようやく納得。

林道を少し歩いて橋を渡ったところから左手の踏み跡を登って行く。地図にはでていない道なので、とにかく後ろをついていく。沢を渡渉すると目の前に今は閉鎖されている山岳訓練所の建物があった。そういえば大倉から林道を歩いているときに見えた建物だなと思う。

沢沿いの踏み跡を登って行くと、ようやく勝手知る登山道に出た。ちょうど訓練所尾根コースの標識の前だった。車で来る人にはなんでもないルートだろうが、知らなかったし初めてだったのでもの珍しかった。

歩きながらこのあたりの沢の話をしていると、ミズヒ大滝が近いので案内してくれるという。明るい植林帯の踏み跡をたどって沢に降りると大滝はすぐ目の前だった。2段25mの立派な滝だが、渓相は明るく威圧感はない。大滝を見物できたので、ミズヒ沢の遡行はもういいかなと思う。思わぬ寄り道に喜んだが、babaさんは内心このペースでは予定のコースは歩けそうにないと思ったらしい。

鍋割山直下で前方にボッカをしている先行者が見えた。冷蔵庫を背負っているように見えるほどの大荷物を背負っていたのは鍋割山荘の草野さんだった。きっと正月には初日の出と鍋焼うどん目当ての登山者が大勢泊りに来るのだろう。

鍋割山はひっそりしていた。今回はここが出発点だ。ユーシン方面の登山道を少し進み、分岐から急斜面の北尾根を下るとブナの疎林となる。背が高く立派なブナだ。以前から北尾根を歩いて見たかったので嬉しい。

北面の急斜面なので、冬は凍結していたら厄介そうだ。下りきったオガラ峠で踏ん張るブナの大木でしばしたたずむ。オガラ沢に下る破線ルートからはなれ、北東尾根を下る。

鍋割山から北尾根に下ってからは標識代わりにブナの木に赤ペンキで矢印やカタカナ文字が頻発する。わかりやすさを重視するのは理解するが、少し無粋ではないか。小さな標識を木にくくりつけるとか、他にやり方があるだろうにと思ってしまう。

塔ノ岳西面の尾根がいくつかのびていて、すべてが自然林だ。目の前にスケールの大きな手つかずの自然が広がり、ちょっとした感動を覚える。気持ちのいいブナ林の尾根を下ると最後は植林帯の急斜面となる。以前から塔ノ岳から見下ろして異様な空間だと感じていた尊仏ノ土平に初めて降り立った。

尊仏ノ土平の広々と明るい川原を横切ったところで昼食の休憩を取ることにした。開放的な川原には太陽が惜しみなく陽を降り注ぎ、暖かい。気分も暖かくなって嬉しい。冬のハイキングはこうでなくちゃ。前回の大室山の寒さがこたえたばかりだったので、ことさら嬉しい。

塔ノ岳1 塔ノ岳2

当初は尊仏ノ土平から箒杉沢をたどって西尾根に取り付き、竜ケ馬場付近に抜ける予定だったようだが、出発時間が遅れた上に最初からのんびりモード。鍋割沢右岸の登山道を行くことになった。途中のブナ林が美しいというので初見の私は変更してもらってよかった。

登山道はとても歩きやすく、下部の植林帯も自然林のように太陽が地面に届いている。蛭ケ岳から不動ノ峰ノ稜線を左に見ながらゆるゆる登ると、しだいにブナの大木があらわれ台地状に尾根が広がる。下草もなくどこでも自由に歩けるのは丹沢の特長か。大きなブナを見つけては撮影大会となり、パーティがばらけてなかなか先へ進まない。こんなすてきな登山道が塔ノ岳にあったなんて不見識なり。

ユーシンの隧道工事中は閉鎖されていたが工事終了に伴い最近再開されたとのこと。アクセスの悪さがネックなのだろうが、まだ歩いたことのない人には是非おすすめしたいコースだ。山頂下の水場は尊仏山荘の重要な水源となっているとのこと。いろいろと解説してもらいながら山頂へむかう。ここからは一直線の急登となり、かなりのアルバイトでようやく目的地の塔ノ岳へ。ずいぶんと寄り道しながらの粋なコースだった。

一升瓶をザックに入れたkazikaさんはようやく肩の荷を下ろすことができた。そもそも今回の山行は、山荘のご主人に慰労のお酒を届ける宅配山行だったのだ。ご主人はあいにく留守だったが、知り合いの小屋番さんに手渡すことができた。

コーヒーをのみながら話が尽きないが、暗くなる前に下山するにはあまり長居はしていられない。時間が遅いせいか山頂は人もまばら。下る前にbabaさんが嬉しそうに山荘の裏へ案内してくれる。すると立派なツノの鹿がどっしりと腰を下ろしていた。近づいても動じる様子がなく、まるで山荘の住人のようだ。塔太郎と呼んでいるらしい。

鍋割山稜へ進み、小丸から訓練所尾根を下る。淡々と下り、杉の植林帯をやり過ごすと尾根は緩やかに長くなり、赤松林となる。雰囲気が丹沢らしくなく、ちょっといい感じかな。長いなあと思うころ二俣に降り立ち、来た道を駐車場へ戻った。

かなり長いコースだったが、ブナ林の美しい尾根を二つ繋いだコースは新鮮で魅力的だった。丹沢はまだ知らないところがたくさんあるので、フィールドの異なるメンバーとの「異文化交流」山行をこれからも機会があればつづけていきたいと思った。

塔ノ岳4 塔ノ岳3

塔ノ岳5 塔ノ岳6

県民の森駐車場7:50~ミズヒの大滝往復~二俣8:50~鍋割山10:25~尊仏ノ土平11:40/12:25~塔ノ岳14:05/14:25~小丸~県民の森駐車場16:25