ブナの沢旅ブナの沢旅
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2011.11.24
東日原~一杯水避難小屋~長沢背稜~雲取山~七ツ石山~鴨沢
カテゴリー:ハイキング

2011年11月24-25日

 

沢シーズンが終わり、雪山にはまだ早い今の時期は計画が立てにくい。これまでは日帰りハイキングでつないできたが、今年はテント泊で縦走を計画した。意外だったが、ブナの沢旅をはじめてからは無雪期の縦走をしたことがなかった。そこで宮城県境の縦走を計画した。ところが天候が悪化したため仕切り直しとなった。関東以外はどこも天気がよくない。さてと、困った。

奥秩父や上州、八ヶ岳など、いろいろ案はでたが、どれも一長一短。前夜発ができない制約もあった。そこで最後は半ば諦め気味に、奥多摩に目を向けた。そういえば、以前から長沢背稜を歩いてみたいと言っていたっけ(ただし一人の場合)。せっかく同行者がいるのだからもう少し足をのばしたかったけれど、沢と違って圧倒的に引き出し不足だった。

という具合に次善のプランであり、最後まで東北に行きたいという気持ちを引きずりながらの出発となった。

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奥多摩駅から鍾乳洞行きのバスに乗ると平日にもかかわらず満席だった。週末の混雑ぶりがうかがえる。東日原のバス停で身支度を調え、一杯水避難小屋への登山道から長沢背稜をめざす。ヨコスズ尾根は以前長尾谷を遡行して下山路で歩いたときに新緑がきれいだった記憶がある。下部の植林帯をやり過ごす明るい自然林となり、まだ紅葉が残っていて雰囲気がいい。

快晴の空のもと、汗ばみながら一杯水避難小屋へ。少し東へ進むと水場はあるが、補給は酉谷山ですることにして先へ進む。登山道は稜線直下をほぼ水平に通っているのでアップダウンがなく歩きやすい。すでに樹林は落葉しているので南面の石尾根の展望を楽しみながら進む。

酉谷避難小屋までは単調なトラバースが続き、長く感じた。小屋の前の水場で翌日の雲取山まで必要と思われる水を補給する。こじんまりとして快適な小屋に泊ってみたいが、ここに泊ると翌日の行程が厳しくなるので先へ進む。

しばらくは相変わらずの巻き道が続くが、滝谷の源頭部にさしかかると緩やかな斜面にブナの純林が広がり好みの雰囲気となる。滝谷もいつか遡行してみたいと思いつつなかなか実現しない。山岳会に在籍していたときに計画があり、前夜に現地入りしていたのだが、雨で中止となった経緯があるのだ。

滝谷ノ峰直下で登山道が尾根を回り込むところがタワ尾根分岐。今回コースを計画する際にタワ尾根からウトウの頭を経て背稜の登山道に乗ることも考えたのだが、やはり最初は全コースを歩きたかったので一杯水避難小屋経由とした。タワ尾根方向には明瞭な踏み跡があったが、テープが貼られて登山道ではないという表示がしてあった。確かに下山の場合は読図ができないと枝尾根に迷い込みやすそうな地形だ。

ようやく稜線にのり、北面の展望が開けてきた。そして少し先には新しく作られたヘリポート。周りの樹木が伐採されているので当然ながら展望は抜群だ。秩父の山並の先には両神山から赤岩岳、さらに天丸山方向に続くギザギザの稜線が顕著な姿を見せている。両神山から秩父御岳山まで長大な尾根が伸びている。

登山道は水松山と長沢山の鞍部で尾根を交差して北面へと続く。鞍部は尾根が広がり、どこでもテントが張れる地形となったので予定通りここで初日の行動を終えることにした。

夜はかなり冷え込んだが、まばゆいほどの星空だ。眼下には秩父盆地の夜景が燦めき、予想外の光景に魅了される。奥多摩の最深部を歩いていると思っていたので意外な発見だった。

 

 

 

 

なかなか夜が明けないので朝は6時半の出発となったが、これがあとでひびいてしまった。気温はマイナス3度と冷え込んでいるが、凛と張り詰めた空気の中を霜柱を踏みながら歩くのは清々しく気持ちがいい。しばらくは日の当たらない北面のブナ林を進み、ふたたび尾根に戻るとすぐに長沢山山頂となる。

長沢山からは尾根通しの道となる。桂谷ノ頭への登りになると南面の樹林が途切れ、光る空間が広がる。一瞬なんだろうと思ったが、よく見ると海が見える。地図を取り出し確認すると相模湾だ。顕著な山頂の大岳山の向こうに見える際だって高い建物に、ランドマークだと色めく。

さらに左手奥には東京都心の高層ビル群。少し離れてひときわ高い影が陽炎のように見えるのはスカイツリーに違いない。さらに左手奥には筑波山。意外な展望にちょっとした感動をおぼえる。空気が澄みきった季節ならではの眺望だろう。今の季節にきてよかったと思う。

芋ノ木ドッケは針葉樹林帯の広い平坦地で標識がなければどこが山頂かわからない。三峰方面の道を分け、登山道は200mほど急降下してベンチのある大ダワへ到着。大ダワ林道も崩落で通行止めの表示があった。シラビソやコメツガの原生林の道となり、重厚な雰囲気がただよう道を進む。

雲取山荘はひっそりとしていたが、シーズンの週末は大賑わいらしい。週末は宿泊者が220人もいたとのこと。Yさんは初めて泊った山小屋が雲取山荘で、混雑していたために畳1.5枚分のスペースに6人の割り当てとなり、こりごりした思い出があるという。

ここからはいかにもメインストリートといった感じで、人の手を感じる。200mほど登って山頂へ。今回の到達点だ。ちょうどヘリが山頂すれすれに飛来したので目一杯手を振ったら、隊員達がみな手を振り返してくれ、のどかな雰囲気だった。

 

 

山頂に着いたときは誰もいなかったが、方位盤を見ながら山座同定をしているうちにつぎつぎと登山者がやって来た。2年前の同じ時期に日帰りでやって来たときはガスで展望がなかったため、今回は存分に堪能する。東京都の古びた標識とは違って、埼玉県の新しい標識はちゃっかりと富士山を背景に写真に収まる位置に立てられてある。

南アルプスの山並は真っ白だ。今月初めに登った和名倉はずんぐりとした地味な山容で、雲取山側から見ると200名山らしくない。奥秩父縦走路の稜線が手に取るように見え、一度は歩いてみたいと思う。

展望を楽しみながら気持ちのよい登山道を下る。この間もハイカーが続々登ってくる。奥多摩小屋を越えブナ沢手前でカラフルなグループに遭遇。山ガールかなと、すれ違いを楽しみにしたら、なんと4人とも山ボーイだった。レインボーカラーのパンツやタイツをはじめ、みんなしっかりカラーコーディネイトしてる。う~ん、時代は変わった・・・

七つ石山も雲取山に劣らない絶景だ。さて、これからどのルートで下山しようか。当初は欲張って、鷹巣山から東日原も視野に入れていたが、あらためてコースタイムを計算すると東日原で4時台のバスに乗るには30分ほど足りない。途中のんびりしたのはいいのだけれど、出発を6時にしなかったことを少し悔やむ。ということで、おとなしく鴨沢に下る。

七つ石小屋に立ち寄り管理人さんと話をしたら、人柄に惹かれ泊まりに来たくなった。小さく地味だけれど山小屋らしい山小屋で、畳の部屋から山頂と同じような景色が楽しめる。場所が中途半端なせいか泊る人は少ないらしい。

あとはゆるゆると、ひたすら下るだけ。最後はまだ十分楽しめる紅葉見物をしてバス停へ降り立った。バスを待っていると車がとまり、若い男性が駅まで乗せてくれると申し出てくれた。うれしいことに最近はいつも車に拾ってもらっている。もう一人バスを待っていた男性も同乗し、ひとときの会話を楽しみながら奥多摩駅へ向った。

沢も雪もない縦走は濡れて汚れることもなければ装備もきわめてシンプルで快適だった。落葉して明るい樹林と展望を楽しみながら、誰にも会わない静かな山歩きができた。これ以上のぞむべくもないのだが、正直なんだかひと味足りない気持ちも残った。

 

 

24日 東日原8:45-一杯水避難小屋11:05-酉谷避難小屋13:35-水松山と長沢山の鞍部幕営地15:40

25日 幕営地6:30-芋ノ木ドッケ9:10-雲取山10:50/11:15-七ツ石山12:40-鴨沢バス停15:40