ブナの沢旅ブナの沢旅
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2011.10.22
打当川立又沢~裏安ノ滝林道
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2011年10月22日

 

森吉山の南東面に位置する奥阿仁の打当川には大滝を秘めた沢がいくつかあり、前回源流部を散策した中ノ又沢もその一つ。今回は、さらにその奥にある立又沢を訪れた。

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連瀬沢遡行後、奥阿仁へ移動。道の駅で食事ができればと期待するが、食堂は終わっていた。食材を求めて隣のコンビニ風の店へ寄り、店の若夫婦と話しついでに食事ができるところを訪ねたら、あちこちに電話までしてくれてマタギの湯が大丈夫と教えてもらう。買い物が不要になり恐縮しながらも、あたたかく親切な地元の方に感激する。

マタギの湯はずいぶん奥まった所にあるが、盛況で泊まり客だけでなく日帰り入浴の客もよく食事に利用するらしい。おかげで、ゆったりとおいしい食事ができた。温泉にも入りたかったが、気分がふやけてしまいそうなので、明日までおあずけとする。

当初は立又渓谷登山口の駐車場まで入ってテントを張るつもりだったが、雨予報になってしまったので雨露がしのげる道の駅へ戻った。車の出入りも気にならない、ちょうどいい場所にテントを張って就寝。

朝起きると薄曇りでなんとか持ちそうだ。立又渓谷駐車場へ一番乗り。沢沿いの散策路を10分ほど登ると、色づいた樹林の間から白い筋が見えて来た。一ノ滝は落差40mほどの立派な滝で、ごつごつした岩の摂理を水量豊かに流れ落ちている。滝壺まで降りられるようなので、帰りによることにして先へ進む。

滝を巻くように道がついているので、いろいろな角度から楽しめる。滝上に出ると穏やかな小川となり、道は沢へ下って渡渉する。すると前方に堰堤風の滝があらわれる。近くへ寄ってみると、その上にも滝が見える。二ノ滝だ。落差は10mほどだが、幅広の多段状で美しい。紅葉した樹林が額縁のように滝を囲んでいる。

さらに進むと立又渓谷のハイライト、幸兵衛滝が見え歓声をあげる。落差108mの巨大スダレ状滝だ。遊歩道は展望のきく小尾根に延びている。両岸は紅葉した木々と針葉樹のコントラストで色鮮やか。上部は傾斜が緩いナメになっているのが見て取れる。これからあの滝上へ降り立つのかと思うとワクワクする。

ほとんどの人はここで引き返すようだが、しっかりとした道が続いている。滝を見下ろすと稜線が間近となる。900m近くなるとブナの紅葉は終わりかけている。しばらく尾根沿いに歩くと眼下に立又沢のナメが見えてきた。どう見ても舗装道路にしか見えないナメがずっとつづいている。

途中で枝沢を横断するところから沢に降りる。この枝沢も完全なナメで、快適に下ってすんなりと本流に降り立った。立又沢は沢幅も広く滑らかな平ナメだ。紅葉は終わりかけのしぶい色合いだが、かえってしっとりとして美しい。まずは幸兵衛滝上の方向へ下ってみる。沢は右へと優雅に蛇行し、斜度が増す。さらに下ると前方が開け、いかにも滝上の雰囲気。けれどこれ以上下るのは少々度胸がいる。ロープを持ってこなかったことを後悔する。

 

 

 

ここで引き返し、今度は上流へと散策。こちらも緩やかな傾斜のナメがつづくが、細かく洗濯板のように波打ち、さざ波となっている。夢心地のナメ沢歩きはあっという間に時間が過ぎる。すぐに林道が横断する橋があらわれる。沢沿いの歩道はここまでで、この先は佐渡杉林道となる。

橋をくぐり沢通しに進む。少し沢幅は狭くなるが、ナメがつづく。ときどき両岸から枝がせり出してくる。ただ歩くだけなので少し飽きてくるころ道が横断する。これが前回歩いた地図には表記されていない裏安ノ滝歩道なのだが、調べてきた予想ルートとずれているのでもう少し先に進んでみる。案の定その先に道の横断はなかったが、引き返すのも面倒なので斜面に取り付いて尾根にあがる。

少し藪をこいで抜けた歩道は、前回引き返した地点から数十メートルほど手前だった。つい先日のことなのにとてもなつかしい。これでノロ川と打当川を繋ぐことができたと、こだわりの自己満足。前回歩いた歩道以上にすばらしいブナ林に気をよくしながら歩道を進んで行くと、最後は小沢沿いを下って最初に立ち止まった横断点に戻った。

ここからは林道へ抜けて戻るつもりだったので、水がとれる場所で昼食のうどんをつくって温まる。大滝巡りもできたし、ノロ川からの縦走路もつないだ。頑張って来たかいがあったと喜び合う。

沢を渡って西に延びる歩道は荒れたところもなく、今でも使われているような気配だ。佐渡杉と呼ばれる天然杉とブナの共存がますます冴えて見応えがある。巨木があらわれる度に道草をしながら楽しく進んだのだが、突然Yさんが焦った様子で、おかしいという。よく見ると25000分の1地図に書かれている林道とGPSの軌跡が一致している。林道があるはずなのに気配がない。おかしいと少し先へ進むと今度は軌跡が林道を通り越してしまう。ウロウロしていてもらちがあかず、諦めて来た沢を戻る。

あとから思えば、位置がずれていても歩道と林道がつながっていることは確かなのだから、GPSの軌跡に惑わされずもっと歩道を進めばよかった。どうしてそんな常識的なことが思い浮かばなかったのか。いまこうして記録を書きながら思い出すとあらためて自分に腹が立ってくる。

さてと、気持ちを切り替え、沢の方が距離は短いと言い訳しながらせっせと沢をくだり、あっという間に橋へ戻った。さあ、もう一度あのナメを堪能して滝を見ながら帰ろう。天気が回復し、日が射しはじめると、紅葉はさらにあざやかに輝く。幸兵衛滝で立ち止まり、我々がぎりぎり下ったところを確認した。

一ノ滝では滝壺に降りてみる。水しぶきを浴びながら瓦礫の山を越えて滝下へ。見上げた滝は頭上にのしかかるようで恐ろしく、滝に吸い込まれそうな恐怖を感じるほどだった。駐車場に戻り、昨晩は我慢したマタギの湯へ直行する。ゆったりと湯につかり、隣接するマタギ資料館に立ち寄って、森吉山周辺の時差集中山行を締めくくった。

 

 

 

立又渓谷駐車場7:10-幸兵衛滝8:10-立又沢8:55-裏安ノ滝歩道横断点10:03-930m地点10:40-駐車場14:25