ブナの沢旅ブナの沢旅
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2010.07.05
赤ノ浦川滝ノ沢
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2010年7月5日

 

またもや不安定な天候に振り回され、計画が二転三転となった。当初は「大人の休日倶楽部」の3日間フリー切符(今年度からは年二回に減って残念!)を使って1泊で東北の沢を予定していたのだが、悪天予報のため比較的天気のよさそうな山域の日帰りに変更。ところがそれも土壇場で崩れてトホホ。わが軟弱ブナの沢旅は、雨マークに弱いのだ。そこで水量が多い方が楽しめそう、少しの雨でも大丈夫そうと、ピンチヒッターに指名したのが奥秩父の笛吹川支流赤ノ浦川の滝ノ沢だった。

当日6時半に八王子駅で待ち合わせ、中央道を経て笛吹温泉郷先の大嶽山那賀都神社方面をめざす。天科のバス停近くから赤い橋を渡って道なりに進むと神社の第一駐車場となる。ここから神社の標識にしたがって歩き始めると、すぐに沢沿いの参道入り口となる。

参道沿いには小さな旗のような御札が多数さしてあり、これって買うんだよね、いくらだろうなどと俗なおしゃべりをしながら20分ほどで神社へ到着。説明書きによれば、修験場として開山され1300年の歴史をもつ由緒ある神社らしい。

神社の裏道をたどるとさっそく堰堤があらわれる。左から越えてしばらくすると前方に突然巨大な第二堰堤がドドーンと立ちはだかり、唖然とする。堰堤の上はダム湖となっている。よく言えば「上高地」風だねといいながら左岸沿いの踏みあとをたどり、広河原になったところで沢支度をする。

赤ノ浦川は穏やかな流れの小川風情なのだが、さらに三つ堰堤を越えなければならない。沢を歩いたり沢沿いの踏み跡をたどったりしてようやく最後の堰堤前へ。きれいなナメ滝の上が堰堤という面白い組み合わせだが、堰堤が無ければ二段滝だったのかな、それなら堰堤なんていらないのに・・・と恨めしい。

五つの堰堤を越え、単調なゴーロを進むと前方にようやく滝が見えてきた。弛みかけた気持ちが色めき立ち、わき目もふらず一目散に前へ進む。階段状の滝を快適に越えるとすぐに豊富な水で洗われた数mのナメ滝があらわれ、いいね、いいねぇーを繰り返しながらルンルン気分で進んでいく。

するとうしろから、ちょっと待って、これ滝ノ沢じゃないよ、という声。なんと二俣に気づかずにホトケ沢に入ってしまったらしい。二人とも気づかないなんて情けないが、単調なゴーロの目先に見えた滝に気をとられてしまったのだろう。けれどホトケ沢はとてもきれいだったので、間違えてよかったなどと負け惜しみを言いながら二俣へ戻って仕切りなおし。そして滝ノ沢はというと、ひとまたぎ出来てしまいそうな小川風情なのだった。

本流のホトケ沢のいいところを見てしまった後ではどう贔屓目に見ても見劣りする。けれど気を取り直して予定通り滝ノ沢へ。うーん、しばらくはぱっとしない。けれど木漏れ日を浴びた沢は水がキラキラひかり、あたりの緑と相まって雰囲気はとてもいい感じ。そして足元をみると、沢床の砂にキラキラ光るものがみえる。sugiさんがこれ雲母だよと、手にすくってみる。なんだか楽しくなってきた。

渓相も沢登りらしくなり、水量豊富な小滝が連続しはじめた。まさに滝の(多い)沢の面目躍如というところだ。どれもシャワーを楽しみながら簡単に越えられる。8m階段状滝、7m二条滝と、見栄えのする滝を次々と楽しく夢中で登っていく。

そして突然目の前に、ガーン。な、なんと予想もしていなかった真新しい林道が出来ているではないか。そういえば「山頂のてっぺんで!」さんの去年8月の記録に、このあたりが伐採で埋まっていたとか、測量の道具や図面が置いてあったということが書かれていたっけ。まさかそのあと1年もたたずに林道が出来ているとは夢にも思わなかった。林道の下は排水溝のようなトンネルになっていて沢水が流れている。この先どうなっているのか不安な気持ちでトンネルを抜けると、沢は元の状態を取り戻し、ひとまずホッとする。

すぐに8mチムニー滝があらわれ水中に手がかりを求めながら何とかクリア。現金なもので、滝登りが楽しくてすぐに先ほどのいやなことも忘れてしまう。5m滝をこえると前方に15m滝が見えてきた。ちょっと手ごわそう。途中までは右の水鉛が登れそうだが、上段がよく見えない。Yさん先行で登り、上段は少し苦労しながら岩溝をはいあがっていった。

岩溝に抜けるところでもろシャワーを浴びとても寒い思いをする。溝を這い上がるところは二番手のせいか技量不足なのか、いまひとつ気合が入らず最後は情けないことにお助け紐を出してもらう。頼ってしまい悔しいと言いながらも、sugiさんが頼もしくなってうれしくもある。さらにツルツル岩のナメ滝を右壁沿いに越えるとすぐに奥の二俣となる。河原が開け、左右ともきれいな滝を落として両門の滝のような出合だ。ここでしばしの休憩を取る。すっかり濡れてしまったので、しばらく休んでいると寒いくらいだ。

二俣を右へ進むと緩い傾斜のナメ滝があらわれ、その奥に滝ノ沢のハイライトともいえる20m滝がつづく。見上げると下段は左が登れそうだが、上段が傾斜もきつく落ち口がハング気味。もう十分にシャワークライムを楽しんだので、ここは即決で右から巻くことにした。とはいえ巻きも足元がグズグズで楽ではない。出来るだけ小さく巻いて滝上へ。ガイドブックには登攀グレード2級で直登可能な20m滝とあるが、グレードも高さも疑問だと思った。

さらに滝上のナメを快適に越えると早くも源頭部の様相となり、右岸の斜面にクリンソウの可憐な花が見られるようになる。もう遅いと思っていたのだが、むしろ蕾みのものが多く、今年は全体に花の開花が遅いようだ。期待していなかっただけにうれしく、しばらく時間をとって愛でる。

この先は伐採の木で沢がふさがれ、その先に林道が見えてきた。予定していた林道であり、ここで遡行を終了する。靴を履き替え、今回初めて今はやりの山スカートなるものをはいてみる。濡れたズボンを脱ぐとタイツに風が吹き込んでとても気持ちがいい。伐採された斜面を這い上がって林道に出るとボロボロの工事用トラックが土を運んで通り過ぎていった。

林道工事はさらに山奥まで進んでいるようで、途中から無残に伐採された山肌を見渡し、なんともいえない気持ちになる。当初林道をたどって牛首から青笹に下る登山道から下山するつもりだったが、それでは面白くないなどと「余裕」の変更。林道が1439m記号の尾根を回りこむところで笹の斜面を下り、下に見えた別の林道を横切って東南尾根を下ることにした。

途中からは最初にあった踏み跡も無くなり、所々枝尾根が微妙に派生して読図に注意がいったが、概ねふかふか土の歩きやすい尾根だった。沢に降り立ったところは第三堰堤の上の枝沢が出合っているところで、読図もうまくいった。あとは沢沿いの踏み跡をたどって来た道をたどり、神社を抜けて駐車場へ戻った。このころから雨が降り出し、帰路の途中一時的に土砂降りに見舞われたが、遡行中は梅雨時ながら晴天に恵まれるという、とても幸運な一日だった。

 

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 taki2

 

 

大嶽神社駐車場8:55-大嶽神社9:15-二俣10:50/11:15-林道下11:45-奥の二俣12:35-林道下13:10/13:40-1439mピーク東南尾根下降第三堰堤上14:50-大嶽神社駐車場15:30