ブナの沢旅ブナの沢旅
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2010.04.17
未丈ヶ岳
カテゴリー:雪山

2010年4月17-18日

 

ブナの原生林に覆われた山、未丈ケ岳。未丈という響きに惹かれ去年訪れる機会を得たのだが、初日の悪天であまり進めず結局時間切れで撤退。その未丈ケ岳に再チャレンジしてきた。先週の村杉岳から手に取るように見渡すことができ、来週はきっとあの山頂に立つのだと自分に約束してきたのだ。

冬の恒例となった始発の上越新幹線に乗るとkukenさんから連絡があり、電車が動いているかと聞く。熊谷から先が大雪で道路規制されているとのこと。新幹線は大丈夫と応えたものの、大宮駅でストップ。季節はずれの大雪でポイント切り替えが故障したという。

結局1時間半の遅れで浦佐駅にメンバー全員がヤレヤレの集合。さあ、済んだことは忘れて楽しもうと、一路シルバーラインを経て下山予定の銀山平へ向かう。ここでsamさんの車をデポ後、全員がkukenさんの快適な車に乗って奥只見丸山スキー場へ。先週に続き、今週も来てしまった・・・大好きな奥只見。

スキー場の駐車場はどこも満車状態だ。カラフルなウエアの若いボーダーラーに混じり大きなザックを背負った異質な中年5人組。でも、気持ちは若者よりも熱いはず。なにしろ彼らより先が短いだけに遊びも真剣なのだ。登山者はリフトに乗せてくれないスキー場も多いが、ここは問題なく親切に対応してくれた。

リフトを二つ乗り継ぐと、もうそこは標高1200m。ラクチンなり。小雪模様で天候はあまり思わしくないが、コースが読めないほどではない。去年は初日が悪天のため、丸山スキー場から尾根に乗るまでの茫漠とした地形を避けるため、日向倉山コースに変更したのだった。

全員がしっかり読図できるので心強い。季節はずれの大雪で数十センチほど新雪が積もり、予想外の新雪ラッセルとなるが、早々と5人パーティの威力が発揮される。この時期にラッセルなんてと言いながらも、皆まんざらではない様子。山々は厳冬期並みの美しさを取り戻し、雪山の季節におまけが付いたようでうれしい。

丸山から1376m峰(JP)に続く尾根に乗ってからは視界が悪くなるが、痩せ尾根の雪稜となっているので見えない方が怖くない。緩やかなアップダウンを繰り返しながら淡々と距離をかせぐ。できれば初日にJPを越えたかったが、視界が無くつまらながっているsamさんは、早々と行動を切り上げて「竪穴」作りのお楽しみを始めたいようだ。妥協策として、JPにできるだけ近い稜線鞍部に幕営することになった。

早速「竪穴」作業に取り掛かる。誰も具体的なイメージがつかめないまま、テント2張り分のスペースを掘り下げ、さらに雪のブロックを積み上げる。このために調達したらしいブルーシートを掛け、さらに一寸の隙間もできないように微調整をして完成。出入り口はトンネルを掘るという念の入りよう。と、書けば簡単なようだが、内心そこまでする必要あるのかと思っている4人はいま一つ要領を得ない。

「命がかかってるんだぞー」という現場監督に叱咤激励されながらの難作業なのであった。けれど2時間もかけてようやく完成したブルーシートの色合いを帯びた空間はとても快適。みなようやく合点がいった様子だった。まさにWelcome to the Hotel ブルー未丈♪ Such a lovely place♪ Such a lovely face ♪♪ 昔よく聞いた歌が頭をめぐる。

全員が持ち寄ったアペタイザーを並べてまずはビールで乾杯。普段は個々のメンバーと2人で山行することが多いのだが、そのメンバーが勢ぞろいするというまれな機会となった。とはいえ、それぞれが悲喜交々の事情を抱えながらの参加。呼びかけ人としては多少のプレッシャーを感じながら場を盛り上げようと、いつに無くハイテンション。楽しい夕餉だった。

翌日は晴れると信じてシュラフにもぐるが、夜中にkukenさんの異常事態を知らせる声で目が覚める。天井を覆っているシートに降った雪がたまり、テントが押しつぶされかけていたのだ。男性陣が外に出て、真夜中の必死の除雪作業。事なきを得、ほっ。

翌朝も外はガスっていた。あまり早出をしてもしょうがないので、のんびり朝食。不要な荷物とテントをデポして山頂をめざす。小山を越えると、ひときわ高く聳えるJPが目の前に。日向倉方面から進んだ昨年は、雪庇の状態を嫌って急斜面をトラバースしたばかりにドツボにはまった懸案の通過点だ。けれど丸山からのルートは予想通り悪いところもなく、あっさりと通過。ガスで視界は無かったが、目印の旗ざおが立てられていた。要注意なのは、むしろ下りの斜面。亀裂が新雪で隠れているので気が抜けない。慎重に通過したあとは緩やかな登りとなる。

いつまでたっても天候が回復しないため、ちょっとしたピークに立ったところで、ここを山頂と思うことにしようなどと言い出すメンバーも。長年の山暦がありながら奥只見の山は初めてというchieさんも、こんな時は山に登らないんだとぼやいている。力強いメンバーの参加を得た好機なのだと、強気の姿勢でホワイトアウト状態の中をさらに進む。

1450mを過ぎたあたりから急斜面の痩せ尾根となり、石楠花の藪をトラバース。終始元気に先頭を進んでいたsamさんだったが、1500m付近でどうすると相談を持ちかけてきた。視界が無いのでもう十分ではないかと言うのだ。もちろん反対。ここまできたのだから山頂を目指すと宣言。視界は心の中にあるからいいなどと、ちょっと恰好をつける。

黒姫での撤退後、私がさんざん悔しがっていたのを知っているkukenさんがすかさず、ここで撤退するとずっと言われ続けるよとsamさんにアドバイス。ようやく行くしかないというコンセンサスを強引に取り付け、代わって先頭を進む。

そして山頂らしき平坦地へ。ガスで何も見えず判然としないのだが、これ以上高い場所が無いので全員で山頂と認定。昨年来の懸案をクリアできて区切りがついた気持ちだ。無雪期には伸びやかな草原が広がる山頂。いつか沢からたどってみたい・・・風が強いので証拠の記念写真を撮ってそそくさと下山開始。

しばらくするとガスが薄くなり、ようやく待ちに待った太陽があらわれた。劇場の幕がゆっくりと開くように展望が得られるようになり、皆の歓声が聞える。ちょっとしたドラマ仕立てのような展開だ。JPの鋭鋒が恰好いい。samさんはこっちの方が未丈っぽいなと喜んでいる。全部ひっくるめて未丈なのだと応える。これが俺のゴールデンウィーク山行だと、少し可哀想なkukenさんもすごく喜んでいる様子がわかりうれしい。chieさんも、山は何がなんだかわからないけどいいねえと言っている。

先週歩いた村杉岳もようやく姿をあらわし、しばしたたずんで歩いた尾根を目で追った。向こうから見た山に今自分達がいる。ブナの沢旅にとって、丸山岳と村杉岳、未丈ケ岳は、会津と奥只見、越後を結ぶブナのゴールデントライアングルなのだ。

小ピークを越えるたびに四方の展望の素晴らしさに圧倒されながらテンバに戻った。帰路のルートを相談するが、予想外のラッセルでメンバーに疲れも出始めている。重いザックでふたたびJPを越え日向倉山を経由するのは時間的にも厳しいので、往路を戻ることにした。

昨日は視界が無かったため気づかなかったが、丸山スキー場へ向かう尾根は予想以上に展望がすばらしく、思う存分に稜線万歩を堪能。振り返れば左右対称に緩やかな尾根を引いた未丈、前方には毛猛から村杉半島の山並、丸山岳からはるか会津駒、平ケ岳、燧ケ岳、そして荒沢岳から越後駒へと素晴らしい山々のオンパレードなのだ。スキーのsamさんとは途中でルートを別にし、のんびり組は何度かおやつ休憩を取りながら幸福感に満たされる。暖かい日差しを浴びながら、ここにずっと寝転がっていたいなあとchieさん。

けれどスキー場が見えてからが長かった。楽しかった山も終わりかと思うと急にみなレイジーになり、誰とも無くリフトに乗れないかなあという声。駄目もとで聞いてみるとあっさりとオーケーとのこと。切符は下で清算すればいいと、とても寛容な返答が返ってきた。やったねーと、みな大喜びだ。

最後はリフトで空中観光をしながら標高差数百メートルをあっという間に下った。丸山スキー場は展望も抜群、登山者にもフレンドリーと、パーティー全員は高得点の評価。こうして未丈ケ岳再訪を、気のおけない仲間と共に楽しく終えることができたのだった。

17日 丸山スキー場11:00-1250mコルのテンバ15:00

18日 テンバ7:30-JP8:15-山頂10:30-テンバ12:30/13/10-丸山スキー場16:10