ブナの沢旅ブナの沢旅
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2010.03.13
守門黒姫
カテゴリー:雪山

2010年3月13-14日

 

守門黒姫を計画後、samさんから将来有望な若者3人が新しく参加するのであたたかく見守って欲しいという、殊勝なメールが届いた。その結果シュー組とスキー・スノボー組6人の混成パーティとなり当日を迎えた。

いつものように長岡駅でピックアップしてもらい、浅草岳で中途棄権したトオル君の車に合流して入広瀬の道の駅へ。ここでkukenさん、新人のヒロ君と大ちゃんが集合。初めてのヒロ君にsamさんってワイルドでしょと聞くと、かなり行ってますねーという、期待にこたえる反応が返ってきた。

あいにくの雨なので、ムジナ沢橋を越えた駐車地点でしばらく様子を見ることにした。雪山で雨なんて初めての経験だ。1時間ほどで小降りになったので出発。初日は830m付近のブナ平に予定しているベースキャンプまでなので、昼過ぎには着いてしまう。雨が雪に変わる中、ブナの台地でテントを二つ張り、タープで入り口をつなぐ。すべてが濡れて不快なのだけれど、こういう状況にも慣れないといけない。テントに入り、乾いた衣服に着替えてようやく一息つく。

みんなで乾杯したあと、熟年シュー組はそのまままったりしてしまうが、元気なスキー組はsamさんの音頭で焚き火の準備にとりかかる。若者達は雪山の焚き火が新鮮らしく、とても楽しそうにどこからか焚き木をどっさり集めてきた。

リーダーがしきりに講釈をたれながら粘った甲斐あり、熾火ができた。降雪の中でたいしたものだ。ようやくテントをでて焚き火遊びに参加する。盛大に燃え上がることは無かったが、雰囲気を味わうには十分だった。今回は夕食の鍋もsamさんが作ってくれて至れり尽くせり。若者効果絶大なり。

守門黒姫1 守門黒姫2

翌朝はテントごとに朝食をとったあと、ポールを抜いてテントに雪をかぶせてデポする。曇り空だが予報どおり晴れることを期待して出発。あとで、もっと出発を遅らせればよかったと後悔したのだが、的確な予測をつけることはほんとうに難しい。このときはできるだけ早くから行動して黒姫登頂後、あわよくば烏帽子までなどと欲張っていたからだ。

登るにつれガスが出始めるが、ブナの美しさが際立ち、展望が無くても楽しめる。黒姫のブナは浅草岳に比べもっと幹が太く存在感がある。ガスはますます濃くなり、時々ホワイトアウト状態となる。途中雪洞を通過するが、中の人たちはまだ出発していないようだった。黒姫の稜線コルに到着した後も相変わらず視界はない。ここで二組は別行動となった。

スキー組は破間川へ滑り降りた後に烏帽子山への尾根を登り、再び破間川へ滑降してコルに登り返し、BCへもどる予定。少しの間ガスがとれ、地形がクリアになった。すばらしい雪原とブナの尾根、なだらかな谷筋。私もつられて下りたくなる誘惑に駆られる。samさんは先陣を切って滑り下り見えなくなってしまった。

再びガスのなか、大ちゃんがためらいつつ思い切ってゴー。すぐにコケてしまうが果敢に下る。ヒロ君も勇んで出発するが、やはり一度はコケる。トオル君は唯一スノボーで泳ぐように滑り降りる。みんなこんなガスの中で果敢なり。若者よ、荒野をめざせ!

さて、ひたすら感心しながら彼らを見送ったシュー組も出発しなければならない。視界はほんの2,3m。しばらく進んでいくと北側に雪庇が張り出していて、その上を歩いていることに気づき冷や汗。反対側はクラスト気味の急斜面となっている。急に不安になり、アイゼンに履き替えるため平地のコルまでもどることにした。

せめて黒姫までは行きたかったので、緊張の面持ちで踏ん張らなければと思ったが、私の不安を見透かすように、やめた方がいいのではとkukenさん。その言葉に飛びつくように、そうだね、やめようと、撤退を決めた。こんなガスでは山頂にいっても何も見えないとか、勇気ある撤退だとか、しきりに慰めてくれる。

ずっとガスっていれば諦めもつくのだが、下るにつれ視界がでてくる。ときどき稜線を振り返りながらガスの流れをじっと見つめたりと、未練が残る。途中、ブナ平の下でテントを張っていたスキーパーティが登ってきた。どうも私達の出発は早すぎたようだ。

前方の展望がひらけ、レンガ色のブナ林の山並がたおやかに広がっている。なんて心休まる景観なのだろう。心にがい気持ちがしだいに癒されていくようだ。ベースキャンプもそんな眺めのいい素敵な場所にあったことを知る。

テントを撤収して一休み。改めてあたりを見渡すと、ほんとうに気持ちのいいブナ平。黒姫自体は日帰りできるコースだが、ここに泊らないなんてもったいない。また来年やって来ることができるかな。今度こそ、烏帽子まで行きたいなあ。見上げると雲が流れ、急速に青空が広がっている。

展望を楽しみながら往路をもどる。時々あらわれる気持ちよさそうな雪原の斜面では、トレースから離れてシュー滑降もどきを楽しみながらタラッタ、ラッタラッタ。そしてときどき調子に乗りすぎ冷や汗タラタラ。

さらに下ると前方にピラミダルな毛猛の鋭峰がかっこいい。その奥につづく稜線の先には積み残しとなっている未丈ケ岳が遠望できる。あの稜線をいつか歩いてみたい。左手に見える浅草岳からは早坂尾根がなだらかに尾を引いている。あのブナの尾根をたどって八十里峠へ下ってみたい。つぎつぎとプランが出てきて忙しい。

青々と水をたたえた破間川は春の風情だ。振り返ると黒姫がようやく真っ白な姿をあらわしている。いろいろな気持ちをこめてしばしの別れをつげ、短い休日を終えた。

13日  ムジナ沢橋10:20-830mブナ台地BC12:45

14日  BC7:30-稜線コル9:30-撤退10:00-BC11:35/12:10-ムジナ沢橋13:45