ブナの沢旅ブナの沢旅
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2008.11.02
鳥屋待沢左俣
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2008年11月2日

 

久しぶりにsumireさんと二人で近場で楽しめる日帰りの沢に行こうということになり、かねてから機会をうかがっていた鳥屋待沢へ。ヒルの棲家なので遡行機会が限られているのだ。本厚木から満員のバスで煤ケ谷へ。谷太郎川沿いをおしゃべりしながら歩いて思わず通りすぎてしまう。

権現橋にもどって鳥屋待沢沿いの林道に入ると20mほどの巨大な堰堤が見えてきた。左岸から巻き上がるとだだっ広い大川原となるが、ここは小さなダム湖だ ったところ。以前所属していた会で、何でもできるのに泳ぐと沈んでしまうというKさんが秘かに泳ぎの練習をしたダム湖だということを思い出した。

ここで沢支度をして入渓するが、しばらくは植林帯の薄暗いゴーロがつづく。40分ほどしてようやく小滝が続くようになり、沢登りらしくなる。大岩が並んだ裏側はミニゴルジュで楽しく通過。沢が左に屈曲すると階段状の小滝がつづき、きれいなところだ。10mのスラブ滝が黒光りしてみえる。

両岸ともツルツルで登れるとは思えず右岸を巻き始めるが、グズグズの斜面に手こずる。大滝を越えると右岸が苔で緑がかった一枚岩の、小滝の続く長いゴルジュとなり、おおむね突っ張りで楽しく越える。なかなか独創的な渓相のところだ。

ゴルジュ終わりの4mCSはとても登れそうになく見えたが、岩の奥に残置シュリンゲがあったので空身で取り付き、シュリンゲに足をかけて突破。しばらく進んだ5mほどの滝は左のカンテから登る。思いのほか時間がかかってなかなか二俣に着かない。

左岸に7m滝を落としている枝沢が見えると思ったらそこが二俣だった。どう見ても本流は左なのだが、突然のように涸沢となって荒れた感じだ。

右俣をのぞくと7m滝の上も滝がつづいていてそそられるが、今回はマク岩のある左俣へ。鳥屋待沢のハイライトといわれている幅50m高さ10mの巨大な一枚岩のマク岩を楽しみにしてきたのだ。けれど目のあたりにしてちょっとがっかりだった。

沢筋は大岩で埋め尽くされてしまい、高さも半分くらいに埋まっている。20年前に遡行したというsumireさんも、岩の下には沢水が轟々と流れていた記憶があるといっている。

沢が左に曲がると一枚岩の10mスラブ滝が立ちはだかる。一瞬ひるんだが、よく見ると中央の水流沿いが登れそうだ。偵察で一段目まで登ったところでロープを出し、頑張って登ることにした。気休めにとハーケンを打ったが、少し上にちゃんと残置がありホッとする。

さらに水流沿いを登ると2本目の残置があり、その上は緊張しつつも気合で登りきる。けれど支点が見つからず下からは見えなかったツルツルの滝が出てきたため右側のもろい潅木帯を登ってほうほうの体で沢床へ。

それでも支点が確保できず、仕方なしに足を踏ん張れるところに腰掛けて初めて肩がらみ確保を試みた。Sumireさんなら大丈夫だと思ったし結果オーライだったけれど、ちょっとヒヤヒヤだった。けれど登れてうれしかった。

淡々とゴーロときどき涸滝の沢を登り最初の二俣を左へすすむ。5mのハング滝を左岸から巻き、二俣となるたびに地図で確認しながらおおむね右へ進む。すると行く手をさえぎるように12mのハング滝が立ちはだかる。

右岸から高巻くがこの沢の巻きは良かったためしがないと愚痴りたくなる。これが最後だよねと3mCSをこえると源頭部となる。地図に出ない二俣も何度か現れコンパスで西をさす方向に進むと、最後の二俣となって稜線が見えてきた。胸のすくようなガレ石の急斜面が尾根まで続いている。

ここを登るのかぁー。最後だから頑張ろうねと声を掛け合って登り始めるが、とにかく悪い。赤谷川のガレルンゼが恋しくなるほど。バイルをさしても利かず、小尾根に乗ることもままならず四つんばいになりながらずり上がり、やっとの思いで登山道に這い上がった。

sumireさん、ついたよーと声をかけたときのうれしかったこと。時間はかかったけれど助け合って登りきることができてうれしかった。とにかくうれしかった。二人で手を取り合って喜び合う。

3時を回っていたので、ヘッデン下山は避けられない。余裕があれば777m峰の宝尾根を読図しながら下ろうと暢気なことを計画していたが、沢装備のまま最短距離で林道に下れる不動尻へ向かう。

沢を横切るところで休憩。泥んこだらけになっていたが、これは私にとって勲章だ。まあ、下手なだけでsumireさんからパンツを借りる羽目になっただけなのだが、ちょっとだけ前に進めたような。しだいに暗くなっていく林道を早足で七沢温泉のバス停に向かい、晴れがましい気持ちで帰路についた。

とやまち沢1 とやまち沢2

鳥屋待沢出合8:00-入渓点(ダム湖)8:15/8:50-右俣出合11:40 -三峰山手前尾根15:05-不動尻手前の沢16:10/16:50-七沢温泉バス停17:45