ブナの沢旅ブナの沢旅
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2008.09.21
葛根田川北又沢
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2008年9月21-22日

 

直前までの計画では、2泊3日で大幽東ノ沢からあこがれの丸山岳に行くはずだったが、台風13号の影響で天候が悪化したため諦めざるを得なくなった。雨マークがついていないのは北東北と北海道だけ。そこで急遽計画を変更し、この際やはりかねてからの懸案であった葛根田川へ遠征と相成った次第。

これまでにも以前所属していた会で3回計画があったが、毎回違う理由(天候、仕事、家族の病気)で参加できずにいた、いわくつきの葛根田川。なんと丸山岳の代わり、なんて思いがけない理由であっさりと実現したのだった。

雫石駅に止まる最終の「こまち」に乗り、タクシーで滝ノ上温泉の駐車場へ。トイレのある建物には設備の整った立派な休憩室があり、ここで仮眠する。翌日は早立ちを心がけ、6時前には出発。

すぐに地熱発電所の施設が点在するようになり、左手の崩れ落ちた山の斜面のあちこちから地熱の湯気が立ち上がっている。しばらく林道をすすむと自然保護の看板があらわれ、目印の堰堤が見えたので川に降りる。さあ、いよいよずっと機会をうかがっていた葛根田川への沢旅の始まりだ。

しばらくは河原歩きだが、水が川幅一杯に広がるようになると思わずジャブジャブ川に入って行きたくなる。緩やかな流れに身を任何も考えずに淡々と歩いていける。出発までのあわただしさがうそのようだ。

いつの間にかゴーロの河原は岩盤帯に変わりコバルトブルーの瀞や釜が現れる。ようやくイメージしていた葛根田川らしくなってきたぞ。と思うと同時に、空からは雨粒がポツリポツリと落ち始め、気持ちに水をさす。

空は明るいので大きく崩れることはないと思っていたが、午前中ずっと小雨模様だった。明通沢を過ぎ、右岸に美しい滝を落として出合う枝沢を過ぎると両岸が迫り、いよいよ「お函」と呼ばれるゴルジュの始まりのようだ。

水量が多いと通過が困難なところらしいが、平水のため問題なく歩くことができた。なかなかの渓谷美なので、陽が射していたらもっともっときれいだろうなぁと、ちょっぴり残念。

 

 

思ったよりあっけなく通り過ぎると再び川幅が広がり、ナメが続くようになる。楽しくてどんどん進むと、大石沢の出合に。緩やかな河原が広がり、泊まりたくなるようなとてもいい雰囲気の所だ。

相変わらず緩やかな流れが続いており、緊張感がなさ過ぎてだれ始めたころ、ようやく小粒ながら滝があらわれたり、枝沢が大きな滝で出合ったりで変化が現れる。左岸から出合う中又沢の途中には、すてきなブナの段丘があるらしく、興味をそそられる。

しばらく進むと大滝が見えてきた。初めて出合う立派な滝だ。今回は釣り修行中のYさんが釣竿を持ってきたので、釣りタイムとする。これまでのところ魚影は感じられなかったので期待しておらず、寒くなってきたので30分ほどで切り上げる (つまり釣果なし)。

大滝手前の左岸についた明瞭な踏みあとをたどって高巻き、ゴーロの河原を行くと左岸にやけに立派な広場のようなテンバができていた。二俣に着いたようだ。時間の余裕もあるので、ここでタープを張ってソーメンタイムの大休憩をとる。快適そうなテンバなのだけれど、大自然の中に突然整備された公園がでてきたようで違和感がある。

 

 

当初はこの辺りで泊まる予定だったが、まだ昼時なので八瀬森山荘までいってしまおうということになった。出発するころには雨も上がり、時折陽も射してきた。出合にかかる滝を越えて北又沢に入ると沢はしばらくゴーロの急登となり、その後は黄色味を帯びたナメが続く小さな沢に変身。

けれど周りの森はきれいで明るく、雰囲気は悪くない。1000m付近で行く手をふさぐように突然あらわれた2段20m滝は右岸の踏み跡をたどって巻き、続く2段8mはYさんが右壁を登ってロープを出してくれた。

滝上はしだいに源頭部の様相となり、最後の二俣らしきところを左にすすんで少し藪をこぐとあっけなく湿原に飛び出した。見渡すと秋の気配が漂う湿原は静寂そのもので、思わず息を呑み、そして感嘆の声を上げずにいられなかった。花の季節もきっときれいだろうなぁ。

2階建ての八瀬森山荘は少し小高い森の中にひっそりとたたずんでいた。広い室内はきれいに使われており、布団もたくさん置いてあった。この晩は、縦走の2人パーティと大深沢ヤセノ沢を遡行してきた2人パーティと我々3組。

情報交換をしたのちは、各パーティみな静かにそれぞれの食事と会話を楽しむといういい雰囲気だった。ちなみにヤセノ沢の感想を聞いたところ、河原が多いという。思わず葛根田も似たようなものですよと言ってしまった・・・

 

 

布団があったのでよく眠ることができた。ゆっくり食事をして7時に出発。ルートも当初は少し時間が多くかかる鶴の湯に下山予定だったが、アップダウンがあって疲れそうだと、急遽反対の松川温泉ルートに変更。それでも長いルートだ。関東森は植生が豊かな森でジャングルのよう。そして笹薮を抜けると高層湿原というドラマ仕立てで飽きることがない。

1384m鞍部の湿原は大深沢東又沢の源頭部で、来年は沢からここに来たいなぁ。大深岳への登りも緩やかで山座同定を楽しみながらの稜線漫歩だ。紅葉の季節はさぞ美しいことでしょう。

たどり着いた大深岳は展望がなく、休憩していた登山者が源太ケ岳がいいと教えてくれたので、先に進む。すると山頂に積まれた石の上にとても大きな鳥が止まっているのが見えてきた。鷲だろうか。少し待っていたら大きな羽を広げて谷へおりていった。山頂は360度の展望で日差しも強い。そこで濡れた沢道具をすべて取り出して乾かすための大休憩とする。

食事のあとは寝転がって昼寝。目の前には岩手山が大きい。源太ケ岳を松川温泉に下っていくと、1100m位からはブナの森となり、最後まで期待に答えてくれた。2日目のコースは葛根田川の下山路くらいにしか考えていなかったが、それは間違いだと思った。この稜線を歩くだけでも十分やってくる価値があるコースであり、正直なところどちらが主役なのかわからなくなってしまった。

松川荘の温泉につかり、バスで盛岡に到着したらすぐに最速の「はやて」に乗ることができて8時には東京に着いた。八幡平は遠いと思っていたが、今回の山行で距離のバリアはそれほどでないことがわかり、これもまた収穫だった。

 

 

 

9月21日 駐車場5:50―堰堤(入渓点)6:30-中ノ又沢出合9:40-大滝10:10/10:40-滝ノ又沢出合11:30/12:30-八瀬森山荘16:00

9月22日 出発7:00-大深岳11:00-源太ケ岳11:30/12:30-松川温泉14:30