ブナの沢旅ブナの沢旅
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2008.08.31
雑魚川外ノ沢
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2008年8月31日―9月1日

 

前日に飯山に移動し、翌朝タクシーで雑魚川林道に向かう。天候が心配だったが、どんよりとした空模様はしだいに青空に変わっていった。問題は雑魚川へ下る道探しだった。ガイドでは秋山方面からの取り付きで鬼沢橋を渡ったところと書いてあるのに、二万五千の地図では点線の道が奥志賀方面からみると鬼沢橋を渡ったところにあるので、その道が雑魚川取入口への道だとすっかり勘違いしてしまったのだ。

さらに悪いことに、そこには車が泊まっていて釣り屋さんのグループが支度をしていた。たずねたところ雑魚川に降りるというし、ちゃんと道もある。それですっかり安心してしまった。

あとで思い返せば、リーダーらしき人にずいぶんと地味なコースを行きますねといわれたよなぁ。そのときは胸を張って、いいえここは沢登りでは人気のコースなんですよ、なんて答えたっけ。

前置きが長くなったが、つまるところ、この道は廃道で途中から藪となり、のっけから藪こぎをしてやっとの思いで河原に降り立ったのだった。つり橋は鬼沢右岸についており、がっくりしてしまう。思えば雑魚川への取り付きが核心でした。(単なる勘違いなのだけれど、地図の点線は消してほしい)

取水堰堤からはとても整備されて快適な巡視路を小一時間ほど進むと、ようやく外ノ沢出合いのつり橋へ。さらに先の取水口まで歩くこともできたが、せっかくだからとここから入渓する。

さっそく沢幅一杯のナメと大きな釜を持ったナメ小滝があらわれ、期待がふくらむ。ゴーロもあるが木々の緑が陽の光を浴びてきれい。久しぶりの沢旅で荷は重いが、またこうして歩けるようになったことがうれしくてしょうがなかった。

取水口を越え、沢はさらに奥深くしっとりした渓相となる。このところの天候不順で水量が多いようだ。セハチ沢を超え沢が大きく右へ迂回するところに10m大滝が見えてきた。怖いくらいの水量に圧倒される。左岸が階段状に近かったが取り付いたら水圧で窒息しそうだ。

少しもどって右岸を巻く。その後は綺麗な小滝が続き、気持ちがいい。入渓までに時間がかかったため予定よりもだいぶ遅れているが、ソーメンタイムをとることにした。ゆでたソーメンを沢水で冷やし、蕗の葉にのせてミョウガと大葉を薬味にしていただくとシチュエーションも相まって極上のおいしさだった。夏の定番にしようと決めた。

さらに進んで曲がり沢を分けると一段上がった右岸に格好のテンバがあった。でも、ここで止まったら翌日苦しいだろうなと思う。壊れた堰堤から落ちているような、これまた迫力迫る7m滝や5m2段滝を巻いてクマ沢を分けると、渓相の好感度はさらにアップ。

美しいナメ滝が次々とあらわれ疲れが吹き飛んでしまう。20m3段ネジレナメ滝上からはそれはそれはすばらしい川幅いっぱいのナメとなり、こういう光景に弱い私はもうメロメロだ。もうちょっと水量が少ないともっといいのになぁと贅沢な注文。

そしてしばらくナメを進むと、前半のハイライトである40m大ナメ滝があらわれ歓声をあげる。このあたりが外ノ沢で一番美しいところではないかと思う。

すぐに二俣となり、時間もだいぶ迫ってきたのでテンバを探しながらの遡行となる。予想通り、しばらく行くと右岸に多くの遡行者が使ったと思われる格好のテンバが見つかった。もう6時になってしまったが、最初のつまづきによる遅れをなんとか取り戻せたので、ほっとして幸せな気分で初日を終えることができた。

 

 

 

二日目も工程が長いので6時過ぎには出発する。沢は小ぶりになるものの水量は依然多く、ガイドブックにあるような伏流帯はなかった。1500m位からは急速に高度を上げて行き、振り返ると見晴らしもよくなって鳥甲山が大きい。

紅葉の時期の鳥甲山は美しく、タクシーの運転手さんによると雑魚川林道を通るときは鳥甲山側ばかりみているので雑魚川側のことは知らないのだそう。余談だが、よくいえば責任感があるのか、降り口がわからないお客さんを知らないところで降ろすわけには行かないと、こちらが戻ってくれと頼んでもどんどん先に進んでしまい、最後は切り明け近くまで行ってしまったのだった・・・

しばらくはひたすら急登のゴーロが続き、早くもペースが落ちてしまう。牛歩の歩みであえいでいくと、辺りはひらけた白樺林となり気持ちがなごむ。ようやくゴーロが終わり、ナメ滝があらわれて気持ちが目覚めた気分になる。

コケ蒸した階段状のナメ滝は、ふかふかとひんやりした手触りが気持ちよく快適だ。そして出ました!これまでの渓相がうそのような40m3段大ナメ滝。そこには異質の世界が待ち受けていたのだった。ちょっと唖然とした気持ちで近づいていく。

一段目は傾斜はそれほどないがホールドが細かく水量があるため気が抜けない。途中で怖くなったので右岸の樹林の乾いた岩に逃げて登った。二段目は最初小さく巻こうとしたがかえって悪かったので、戻って水中のホールドを拾って思ったより楽に抜けられた。三段目になると傾斜は垂直にちかく高度感も出てきて緊張したが、階段状なので気を引き締めて登った。怖かったけど、登り終えて壮快だった。ふうっ。

その後もそれほど簡単でない5-8mナメ滝がいくつか続き、沢はようやく涸れ始めた。沢形がなくなり、最後は覚悟の藪こぎだ。と思っていたが、藪はそれほど密ではなく、薄いところに踏み後があってそれほど苦労することはなかった。

藪を抜け、岩稜帯下の笹原のトラバース踏み後をたどるとひょっこりと登山道にでた。sugiさんと固く握手をして喜び合う。けれど、ここで安心するのは少し早かったようだった。

下山路の長く苦しかったことといったら・・・裏岩菅山から岩菅山へつづく稜線は道もよく景色もすばらしくて素敵な登山道なのだけれど、数回の登り返しがつらく、岩菅山に着いたときには、まじで泣きが入ってしまった。当然時間もかかっている。

そんなときsugiさんがタクシーをよんで岩菅山登山口に下山すれば1時間短縮できると提案。試してみると携帯がつながった。やったぁと、大喜び。少し元気を取り戻し、予定の5時半前に下山することができたのだった。タクシーにのれば湯田中駅まであっという間。電車の待ち時間に駅の隣にある日帰り温泉でさっぱりすることもできた。

体力的にハードだったけれど、素敵な沢の引き出しをまた一つ増やすことができて満足だった。でも、また来るとしたら車できて二俣までの往復がいいかななんて、早くも軟弱虫が頭をもたげている。

 

 

 

8月31日 鬼沢橋付近8:20―雑魚川取水口9:25/55-外ノ沢出合10:40-取水口11:22-10m大滝下12:30-曲沢出合14:00-二俣17:20―テンバ18:00

9月1日 テンバ6:15-40m3段大ナメ滝8:30-登山道11:40/12:15-裏岩管山13:30-岩管山14:50-岩管山登山口17:25