ブナの沢旅ブナの沢旅
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2007.12.27
小櫃川土沢~四郎治沢
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2007年12月27日

 

今年最後の山行に千葉の沢を選びました。沢靴さえあれば経験のない人でも楽しめそうな、冬の陽だまり沢ハイキング。ただ歩くだけなのですが、とても優しくきれいな沢で、その上両岸の地層がとても興味深いものでした。一部崩壊しているところがあったのがちょっと残念ですが、新緑や紅葉のころにも来て見たいと思わせる小さな素敵な沢でした。

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9 時過ぎに亀山神社下の滝原公園にある駐車場に到着。他に車はなく、ひっそりとしている。眼下の小櫃川は静かで流れがないようだ。土沢へは四郎治沢から入って小尾根を越えていく。

駐車場から来た道を少しもどったところの橋を渡って道なりに進むと民家の庭先となり、沢に下る道がわからなくなったので、民家の方に声をかけて降り口を教えてもらう。こぶしの木の裏の入り口は藪っぽいが次第に明瞭な踏みあとが現れ、四郎治沢に下りた。沢支度をして少し沢を登ってテープが見えた辺りから植林帯に這い上がり、トラバース気味に進んで土沢出合に降り立った。

出合は貧相で水も涸れかけている。ちょっと不安になるが、しばらくは涸れたゴーロを進むと両岸が幾層も断層が走る切り立った岸壁となり、興味をそそられる。歩き始めて15分ほどでようやくナメ床となり小さなナメ滝が現れた。

これから先は大きな釜を連ねたきれ いなナメが続き、心が和む。何度も小さく蛇行しながら流れる穏やかなナメ沢をのんびり散歩するような沢歩き。時々木漏れ日を浴びた沢が光ってみえる。至福のひとときだ。けれど時々現れるナメ小滝は滑りやすく、実際に2度も滑って転んでしまう。

ロープなんかいらないわよといっておきながら、一度滑って臆病になり、そのあと2 回もお助けロープを出してもらう。情けなや。標高差が少ないので現在地を特定するのが難しいが、小一時間ほど歩くと前方左岸の斜面の木が伐採されていて、上にはガードレールが見えてきた。

ちょっと興ざめだと思って進むと倒木の山に行く手をふさがれる。よいしょっと乗り越えさらに進むと、今度は右岸斜面が崩壊していておびただしい落石の山となっている。ええっー。そんなの聞いてないよー。これで終わりなのかなと悲しい思いで落石の山を越えていくと、沢は再び穏やかな渓相を取り戻し、ほっとする。

180m の二俣を左に進むと沢幅は狭くなるものの、再び数個の釜が連続するきれいなナメが現れた。すぐに深そうな大きな釜が現れ、前方に両門の滝が見えてきた。腰まで浸かってナメ滝下に進み、左岸の水際を登っていった。見かけほど悪くはなかったが、あえて言えば、ここが土沢の核心なのかな。

滝上はさらに沢幅が狭まり、面白い横縞模様の切り立った両岸の廊下のようだ。すぐに二俣となり昼食をとる。少し遠回りだが、わかりやすい右沢をつめることにする。何度も小さな二俣が現れ、地図とにらめっこをして四つ目の二俣から尾根につめ上げる。

 

 

驚いたことに尾根には立派な道が通っていた。地図には小仁田への林道は途中で切れているが、実際には尾根通しに続いているようだ。そうと わかっていたら、二俣で左沢をつめた方が早かった。

尾根を少し下った辺りで斜面の緩そうなところから四郎治沢をめざして下降を始めた。しばらくするとナメが現れるが、ぬめっていて下るのが怖い。時に尻餅をつきながら100m ほど下って本流に合流。今回は地図読みもうまくいってよかった・・・上流も下流も土沢よりも幅広いきれいなナメ沢が静かに広がっている。情報がなかっただけにとてもうれしい。

土沢が途中の崩壊でミソをつけたあとだったので、好感度は土沢以上だ。土沢のナメ床はコンクリートのように滑らかだったのに対し、四郎治のナメ床は洗濯板のように波打っている。

沢が蛇行するところでは横に走っていた沢床の縞模様が縦縞模様となり、両岸の壁模様と一体となっていて面白い。太古の地殻変動の様子がうかがえるようだ。四郎治はナメ滝や釜など土沢のようなちょっとした変化もなく、川のような平らな流れがつづく。

少し飽き始めたころ前方におきなトンネルが見えてきた。これが千葉の沢に特有に見られる川廻しのようだ。地図にはトンネルの印がなかったので予想外の展開にうれしくなる。川廻しは川の蛇行部分の最狭部にトンネルを掘りぬいて川をバイパスさせ、残った蛇行部分を田畑に使ったらしいが、その痕跡はすでになく確認することができなかった。

トンネルの中はどのようになっているのだろう?期待とちょっとドキドキで中に入っていくと、ゴルジュ状の緩やかなナメ小滝という感じで、5mほどの長さだろうか。それにしても昔の人はよくこんなトンネルをくりぬいたものだと感心することしきり。

下流部も渓相は同じだが、途中面白い光景が。沢床に規則的に15センチほどの穴が開いていて、その中に木の切株が入っているのだ。二人でこれは自然のなせる業なのかしばし議論。機会があればぜひ知りたいものだ。

はるか頭上の林道の橋をくぐりしばらく進んで朝の入渓点にもどった。すぐ下の小櫃川にでてみると滑らかな沢床が広い川幅一面にひろがりとても気持ちがいい。なんだ、簡単に対岸に渡れるではないか。川沿いには遊歩道がついていて、ここで靴を履き替え階段を登って駐車場にもどった。

あまり知られていない千葉の里山の沢の遡下降は、予想以上に楽しく面白い体験だった。わたしの住む横浜から車で2 時間もかからないというのも魅力です。千葉で他にもいくつか遡行できそうな沢を見つけたので、冬の陽だまり沢ハイクシリーズを続けたいし、新緑や紅葉のときもきっときれいなはずだ。