ブナの沢旅ブナの沢旅
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2007.08.26
湯檜曽川東黒沢
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2007年8月26日

 

手軽に上越のきれいな沢に行こうということで、東黒沢に行ってきた。今回も女二人旅だ。水上で乗り換えた上越線は中高年のハイカーであふれていた。地下の土合駅に降りたのは初めてで、ひんやり気持ちがよかった。話に聞いていた400段近い階段を登り、土合橋の駐車場まで歩いて沢支度をする。

以前白毛門沢に来たときは橋を渡ってから右岸沿いのふみ跡から沢に下りたが、奥の駐車場からは東沢左岸沿いのはっきりしたふみ跡が続いており、こちらをたどると簡単に沢に下りることができた。右岸に渡って堰堤の上から入渓。

快晴で日差しが強い。倒木が目に付くが大きな岩盤のナメがつづく。しばらくすると前方にハナゲの滝が見えてきた。思わずわぁっと歓声。綺麗だなぁ、迫力あるなぁ。やっぱり上越の沢は違うなぁ・・・20mの滝と書いてあるがもっとあるように見える。

傾斜はゆるいので右岸を登っていくが、緩やかに左にカーブしている上部は少し傾斜が強くなって水が際まで流れている。難しくはないが、すべると下まで落ちそうなので、途中残置支点が出てきたところで、念のためロープを出すことにした。

20mぎりぎりで滝の上に抜け、確保体制に入ったのはいいが、笛を鳴らしてもまったく聞こえなかったようで、しばらくもたついてしまった。お互いが見えないところでは滝の音で笛が聞こえないこともしばしばありうるので、あらかじめロープを使った合図を決めておくべきだったと二人で反省。

Sumireさんが上がってきてロープを片付けていると、上の巻き道からおそろいのウェットスーツを着た20人ほどの若い男女のグループがやってきた。お尻には河童のお皿のような皮をつけている。なるほど、これが噂に聞いていたキャニオニングツアーか。巻き込まれては大変と先を急ぐことにした。

プールのような大きな釜を持った小滝を2,3越えると白毛門沢との二俣に。ちょうど去年の今頃、やはりsumireさんと来たことを思い出した。あの時は会のリーダー格の人に連れてきてもらったのでした。右の東黒沢に入ると沢幅が狭くなって樹林が濃くなり、だから黒沢なのかなと思う。

緩やかな岩盤の沢床を進むと前方右手の乾いた岩盤の上で休憩しているパーティが見えた。大きな黄色のボートがおいてあったので話を聞くと、彼らは地元の山岳会の人たちで、救助訓練をしていたとのこと。ボートはやわらかいプラスチック製で、これを丸めて担いでくるのだという。緩やかな傾斜の沢なら担架がボートになるのだから搬送しやすくなるのだろう。

熟練者の彼らにとっては遠くから何もない東黒沢に来ることが以外らしく、もっと面白い沢たくさんあるのにといわれた。たとえばどんなところかと聞くと、オツルミズとかと言われてしまい、私たちにはお呼びじゃないです、何もない綺麗な沢が好きなんですーといって、先に進む。

すぐにミニゴルジュで入り口はトロ場でかなり深そうだ。右壁をへつるように入って行くと足がつかなくなる。いやだなぁともたもたしていると、後ろから先ほどのパーティの若者が泳いでやってきて、泳がなくちゃとハッパをかけながら滝に取り付いて上がり、お助け紐をたらして待っている。

まずsumireさんが突破。つづく私も仕方なしに入ってためらっていると後ろから別の若者にザックをおされ、ギャアギャア騒いでいるうちに取り付き口について這い上がる。なんだか楽しい交流をさせていただきました。こちら二人とも中年組だったのが少し残念か。

この後もしばらくは小滝が続き、もっと何もないと思っていたので、結構楽しめた。10m3段の滝は水流沿いの右壁を登り、さらに数メートル程度のナメ滝が続いて、すべてを快適に登っていくと、左岸から支沢が入る。左を進むとゆるい傾斜のナメ床となり、その上もナメ状の小滝。

特に4m2段滝とその上のナメが連続して8m2段滝のようになり、とってもきれいなところだ。滝の上からはいよいよ待ってました!のナメがはるかかなたまで続いている。ブナの樹林をさらさら流れる沢。二人は互いに写真を取り合って大喜び。きれいだねぇ~。

ナメ床が終わると、途中傾斜の緩む幅広の20mナメ滝があらわれる。右岸から取り付き、途中の潅木にシュリンゲをかけてひと踏ん張りすればあとは快適だ。しだいに両岸も開けてきて、はるかかなたに稜線が見渡せるようになるが、まだまだ遠い。

さらに小滝を二つ越えると1030mの二俣に。ここは要注意だ。奥の二俣と間違えて右に入ってしまった記録があったし、すれ違ったパーティも行きに間違いかけたと言っていた。
左を行くがもう終わりだと思っていた小滝がまだ続き、奥の二俣へ。赤テープが下がっていた。ここは右へ進む。藪沢になってきたが、ブナの大木が目に付くようになり、それはそれでいい雰囲気だ。あとは稜線をめざしてたんたんと標高をあげていくが、前半楽しただけ、後半ののぼりが予想以上に体にこたえる。

時間も予定を少しオーバーしている。いよいよ水も枯れ、白毛門から東に派生する尾根の鞍部が間近に。あたりは背丈を越す笹薮の中にブナが背丈を伸ばしている。

ずんぐりとした鞍部で現在地が特定しにくいが、明瞭なふみ跡があり、おまけに赤テープもあったので、迷うことはなかった。やっと丸山乗越にやってきた。3月に通ったときは一面の雪原のなかにブナが点在するすっきりと端正な印象だったが、葉の生い茂る夏はこうも違うものかと感慨深い。

あの時夏に来ると誓った自分への約束が果たせてうれしい。さあ、あとは下るだけ。ふみ跡をたどって北面を下降するとすぐに沢形があらわれ、ウツボキ沢の枝沢へ。2,3小滝があるだけで特に問題もなく30分ほどでウツボギ沢の出合につく。いいテンバがあり、焚き火の跡もある。

ウツボギ沢もなかなかいい沢らしいので、いつか行ってみたい。宝川方面へ向けて下るとすぐにナルミズ沢出合いの広河原にでた。まるでキャンプ場のようだ。静かな沢旅にはあまりふさわしくないテンバかもしれない。

ナルミズ沢を遡行してきたらしい数パーティーが帰り支度をしていた。この週末は天気もよかったし、きっと多くのパーティーが入渓したのだろう。人気の沢なので、シーズン中は曜日をずらした方がよさそうだ。

登山道にはいり渡渉後に沢支度をといて宝川温泉に向かうが、林道までの登山道はアップダウンの結構疲れる道だった。林道になってほっとしたものの、とにかく長い。途中の駐車場の車を恨めしく思いながら最終バスに合わせて急ぎ足で下っていると、初めて通った車が止まってくれて、ありがたいことにバス停まで乗せていただいた。町田の山岳会の方々でした。

おかげで早くバス停に到着し、温泉は無理だったが着替えてさっぱりしていたら、なんと北アルプスを一人で縦走してきたsumireさんのご主人がわざわざ帰り道に迎えに来てくれたのだった。

切符を購入していたので上毛高原駅までおくってもらい、一人で帰路についた。ナルミズ沢へのアプローチの偵察をかねた山行だったが、東黒沢は予想以上にきれいなナメ沢で、最後まで詰めずに往復すれば、新緑や紅葉のときにも気軽に訪れることができるお気に入りの沢になりそうだ。