ブナの沢旅ブナの沢旅
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2006.10.08
釜の沢東俣
カテゴリー:備忘録

2006年10月8-9日

 

かねてから機会をうかがっていた釜の沢が、ひょんなことから実現した。事の顛末というと・・・

上越の下の滝沢を予定していたtanさんとnozさんパーティだったが、天候不順で渡渉困難が予想されるため湯檜曽川本谷に変更したという連絡をいただく。自分には時期尚早ではないかと思ったが、ここならば大丈夫だとtanさん。こんなに早くに行けるなんてと、喜んで参加させてもらうことにした。

けれど同じ上越の沢なのだから天気が悪いことに変わりない。案の定、関越道を北上するにつれ雨模様となり、仮眠場所の谷川ロープーウェイ駅に着いたころにはまさに暴風雨状態。白毛門沢を予定しているhirパーティと合流して静かに宴会してから、あきらめムードでシュラフにもぐりこむ。

翌朝も天候は変わらず、降ったりやんだりの状態。温泉にでも入ってしばらく様子を見ようということになり、いったん車に乗り込む。けれど、南に向かって走り出すや気持ちが吹っ切れたのか、やっぱり無理だからこのまま戻ろうということに。あれこれ思案した挙句、tanさんが釜の沢はどうかという。

行きたいけど、一泊二日の沢じゃないですかというと、一日で行けるという。自信はなかったが、釜の沢に行きたい!という強い気持ちが不安を吹っ飛ばし、車は一路、奥秩父へ。途中渋滞のため、買出しを済ませて西沢渓谷入り口の駐車場に着いたのは3時ころだった。川原に降りてテントを張り、翌日軽身で遡行することに。そうと決まれば、時間はたっぷりある。さっそく焚き火宴会の仕度に取りかかる。

川原ではすでに今風の若者たちがバーベキューパーティをしていたのだが、お茶や焼きそばなどをたくさん持ってきてくれ、きちんと後片付けをして帰っていった。見かけによらず、よい若者たちであった。tanさんが用意してきた肉炒めもあわせ、豪勢な食事をしながらずるずると12時近くまでおしゃべり。

翌朝は早く出発するのかと思いきや、5時になっても二人とも起きる気配がない。ならば起こせばいいものを、まあいいっかと、また寝てしまう。朝食もtanさんが準備をしてくれ、シラスの混ぜご飯に焚き火であぶった白身魚の西京漬。簡単でおいしくて、ぜひ今度まねしようと思った。なんだか朝からのんびりムードなのである。

ようやく7時過ぎに出発し、鶏冠谷出合の川原で沢装備をつける。8月に来たときよりもかなり増水していた。ここから山の神までは沢沿いの登山道をすすむが、この山域の沢は初めてというnozさんは、眼下に見える東沢の激流に意欲を掻き立てられたようで、来年はここで渡渉訓練しようなどといっている。

山の神を過ぎたところで沢に降り、渡渉を繰り返しての遡行となるが水量が多くて楽には進めない。さっそく幅2mくらいの傾斜のゆるいナメ床を右岸に渡るところで苦労する。ほんの2、3歩なのだが、相当の水勢だ。tanさんが最初に渡渉しやすそうな場所を探ろうと足を踏み入れたとたん、足元をすくわれてしまう。一瞬びっくりしたが、本人はあわてる様子もなく態勢を立て直して渡り、ロープを出してもらう。それでも怖くて最初の一歩が踏み出せない。すぐによろめいてしまい、ロープを引っ張ってもらって何とか渡った。

しばらく行くと今度はへつりでいやらしいところに。ホールドは岩を持ち上げるような格好であるのだが、足元はぬめっていて、すべるとあっという間に流されそうなのだ。お助け紐を出してもらって無事に通過。

そのあとエイドなしのnozさんはスリップしてしまい、みるみる流されていく。呆然と立ち尽くしているうちに、自力でとまって何事もなかったが、自分だったらもっと流されてどうなっていたかわからないと思い、あらためて増水の恐ろしさを実感。8月は川原歩きに毛が生えた程度だったのになぁ。

ごうごうと水を落としている乙女ノ沢、東のナメ沢、西のナメ沢を見送りながら、ようやく釜の沢出合に。すぐに写真で見慣れた魚止めの滝があらわれ、釜の沢に来たという実感がわく。スラブ状の左壁を木の枝につかまって巻き上がるのだが、今度は私が足元を滑らせてドボンと落ちて流される。両腕で木の枝につかまっていたのに、足が滑ったらあっという間に手が離れてしまった。あのときの握っていた手がつるっといとも簡単に離れてしまった感触を今でもよく覚えている。

やれやれと滝を巻き上がって、歓声!渓相が一変したのだ。ああ、ここが最初のハイライトの千畳のナメなのか。写真から想像していたより小ぶりだったけど、美しいことにかわりはない。このナメをヒタヒタあるくのが憧れだった。でも、今日はばしゃばしゃ、ざぶんざぶんで、気が抜けない。

ずっと水流沿いに進みたいところだがそうもいかず、できるだけ流れのないところを選んだり、軽く巻いたりしていくと、すぐに次のハイライト、両門ノ滝が目に飛び込んでくる。なんとすばらしい自然の技であることか。よく見ると左右の滝で水の色が違っている。ここから東俣だ。

十分に堪能したのち、少し戻って左岸の樹林に上がって大きく巻く。快適そうな天場で、焚き火の跡があった。しばらく樹林の中を歩き、ヤゲンの滝も巻いてしまう。このあたりでtanさんが、ここからはakoさん先頭で歩きましょうという。ちょうど疲れが出はじめたころだった。樹林歩きを続けるが、次第に沢から離れてしまったので、軌道修正して沢に戻り、次第に高度を上げていくゴーロをのろのろと進む。この間、nozさんがしびれを切らしたように先頭に出たかと思うと、どんどん先に進んで行った。一方のわたしは時々立ち止まってしまい、ペースを半分に落としてでもとまらないほうがいいと、tanさんからアドバイスをうける。

源頭部が近づくと前方に急傾斜のナメ滝が連続してあらわれるが、途中ミズシ沢を横切って左岸を大高巻きし、一挙に木賊沢の上に出る。階段状のナメ滝を黙々と登っていくと次第に水が枯れ、いい加減に弱音を吐きそうになったころ、あっ、ケルンが見える、というtanさんの声で我に返る。えっどこ、どこと、急に元気が出てきて、最後のひと踏ん張りで甲武信小屋の水場にたどり着き、遡行を終えたのだった。

最後はばててしまったけれど、たどり着くことができてうれしかった。tanさん、nozさんと、お疲れ様とありがとうの硬い握手。まだ3時前なので、心配していたヘッドランプの世話にならなくてすみそうだ。装備をといて、登山道を10分ほど登ると小屋に着いた。ヘリコプターがさかんに旋回しており、荷揚げをしているようだった。

あとは快適な登山道を下るだけ。と思ったら、トラバースした木賊山への登り返しがあってムカツク。nozさんに、いかにも嫌そうに歩いていたと見透かされてしまう。でも、稜線にでたあとの眺望はすばらしかった。富士山もくっきりと姿をあらわし、最高のご褒美をもらった気分。

こうして明るいうちに駐車場に戻ることができ、一日で遡行できた感激をかみしめたのだった。そして、今度はゆっくりと沢泊まりで、ヒタヒタ歩けるときにぜひ再訪したいと思った。

駐車場7:10-山の神8:45-釜の沢出合10:10-両門の滝11:30-水場(遡行終了点)14:40/15:00-登山道入口17:35-駐車場18:00