ブナの沢旅ブナの沢旅
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2018.06.03
二口小松倉沢〜南沢下降
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2018年6月2~3日

 

ゆったりとしたブナの森に抱かれたナメ沢を歩き、沢辺に泊まって焚き火を楽しむというシーズン初めの東北の沢旅として、二口の沢を選んだ。例年だと時期的にまだ早いのだけれど、今年は季節の進行が早いので遡行に支障はないだろうと考えた。直前になって二口林道が通行止めであることがわかったが、1時間半程度の林道歩きは他ではよくあることだ。

二口ビジターセンター手前の駐車場につくとすでに多くの車が駐車していた。首都圏の車も数台みられたので、今では全国区の沢になっている大行沢かなと思う。入渓点は駐車場からすぐのところだ。一方の私たちはこれから、すばらしくきれいに舗装された通行止めの林道をてくてく歩く。なぜ通行止めなのかと最初はいぶかしく思ったが、歩いていくうちに事情がわかった。先の方で工事をしており、土曜日にもかかわらずダンプカーが土煙を上げながら頻繁に往来しており、カーブが多いところでは危険を知らせるためにけたたましい音を発しながら走り去る。

二つ目の橋を渡ると眼下にきれいなナメの沢が見え入渓点が近づく。途中沢に降りてちょっと遊んだりしたために、本来の入渓点から歩き始めたのは昼近くになってしまった。太陽が高いために樹林に覆われた沢にもたっぷり陽が差し込み、沢がきらめいてとても美しい。前回は早朝でまだ陽が入らず沢が黒っぽく見えてがっかりしたことを思い出す。

南沢出合いまではほとんどがナメの平瀬で、有名な大行沢のナメに引けを取らないスケールと美しさだと思う。途中の10mナメ滝は左岸のガレルンゼから取り付いて踏み跡のしっかりしたトラバース道をたどる。あとは時々ナメ小滝を快適に越えていく。

 

南沢出合いを過ぎると、しばらくは大岩ゴーロがつづく。いやになる頃様相が再び変化して、沢登りらしくなる。次々と数メートル規模のナメ滝があらわれるが、私たちでも登れる程度でそれほど難しくはない。鍋越沢出合の滝は完全にシャワークライムになりそうなので右岸を巻いた。記憶に残っていた階段状の滝はこれまでのように右岸に回り込んで踏み込もうとしたところ、足元がツルツルに滑る。釜が深いのでビビってしまい、枝沢の滝をトラバースして左岸から取り付いた。

出発が遅かったので、小松倉沢に入る前で幕営地を探すことにした。荒れた様相のところをやり過ごし、少し傾斜をましたナメを越えていくと桂沢出合いとなり、本流は右にカーブする。すると両岸が低くなり、いかにもテンバ適地と思わせる雰囲気となる。まず目に付いた左岸のテンバは川原のリビングと一段上のベッドルームというしつらえだ。沢は幅広のナメ小滝が始まるところで景色もいい。ここに決めザックを下ろす。一段落してから少し上流の右岸のテンバもチェックしてみた。広いので大所帯に向いているけれど、2-3人ならば左岸のテンバがベストだと思う。

とはいえ、入渓時間がもっと早いとこの場所で泊まるには早いと先に進んでしまいそうだ。10年前は小松倉沢にはいり二俣まで行った。沢も細くなるし広い平坦地はない。結果オーライだと喜ぶ。シーズン初めなので枯れ木もたっぷり集まった。焚き火と、ブナの森にただよう焚き火の青い煙は心を芯から癒してくれる。このシチュエーションが好きで沢に泊まるようなものなのだ。気持ち良く飲んで食べて、ゆったりと幸せな時間をすごして一日を終えた。

 

 

4時前には鳥のさえずりで目が覚める。出かける前が忙しく寝不足だったので、久しぶりによく眠れた。すっきりとした気持ちで6時に出発。ほんとうに快適なテンバだった。

すぐに7m滝があらわれ体も目覚める。少し小ぶりになったナメをどんどん進み小松倉沢出合いとなる。ここからは左の沢に入り、ナメを登る。するとすぐに雪渓があらわれる。短いのでスノーブリッジの下をくぐると雪のブロックが散乱していた。季節の進行が早いとはいえ、やはり東北の沢だ。けれど遡行に支障をきたすほどではない。

雪渓がとぎれると大滝が立ちはだかる。滝下まで行って眺め、こんな壁を登ったパーティがあるのだと感心する。少し戻って小尾根に取り付くとなんとなく踏み跡がある。10年前はなかったので、けっこう登られていることを実感する。ここは途中でトラバースして滝上へ、などということは考えないし、そんなことはできそうもない。上の滝も巻いてひたすら登って尾根の反対側をくだると自然と容易に沢におりることができる。そうすれば、あとは穏やかな渓相となって二俣へ。

早くも源頭部の様相となり、両岸のブナの新緑がいまだ鮮やかだ。完全に渓が雪渓で埋まっている箇所をやり過ごし、分岐ごとに細かく地図をチェックする。前回は奥の二俣から山頂に近いと言う理由で左に進んで藪にはまってしまったのだ。沢型が消えかかったところで右手の尾根に向かい軽く笹をかき分けながら登ると、ほとんど藪漕ぎなしに登山道にでた。今回はうまくいってよかった。

 

 

 

沢を下るのでそのまま仙台神室へ向かう。かなりの急斜面が続く。山頂に近づくと一気に展望が開ける。ちょっとした感動だ。20分ほどで懐かしの山頂へ。標識は文字が読めないほどに朽ち果てており、大東岳方面の立派な標識と整備状況の違いに驚く。10年前の写真を見るとまだ文字はちゃんと見えているので、この間何も整備されていないことがわかる。アクセスも悪いし、林道歩きが長いので、二口から仙台神室に登る人は少ないのだろう。

山形神室から笹谷峠が良く見える。とてもたおやかな山並みだ。反対側でまず目につくのは大東岳だろうか。どっしりと頼もしい山だ。二口山塊は冬山でも訪れている馴染みの山域なので、山座同定も楽しい。木陰で一休みしたのち、次なる南沢への下降点をさぐる。山頂からは登山道は藪に消える。

山頂から北側の尾根を藪をかき分けながら進むと、古いテープが引かれている。テープはかなり先まで続いていた。これはなんのためのテープなのだろう。南沢下降点を示すものなのかわからないが、テープが途切れるあたりがちょうど尾根から東向きに下降するところだ。ほとんどシリセードのような格好で急降下していくと窪となり、南沢に下降できたことがわかった。

滝もない急傾斜のゴーロ沢だが周囲の森が美しい。両岸の藪にはシラネアオイやニリンソウ、サンカヨウなどの花が咲いている。こんなにきれいな花なのに、咲くところを選ばず偉いなあと思ってしまう。だいぶ下った830m二俣からはようやく沢幅も広がって記憶にあるきれいなナメ沢となり、フィナーレが近いことを知る。

本流に戻ったところで遡行を終了する。左岸を少し登り、江戸時代の二口番所跡に立つ翠雲荘に立ち寄ったのち林道に上がった。さすがに帰路の林道歩きはこたえたが、期待通りのゆったりとした新緑の沢旅を楽しむことができた。

 

 

二口ビジターセンター駐車場10:00ー入渓点11:40ー幕営地15:15//6:05ー小松倉沢出合6:30ー登山道9:15ー仙台神室9:35ー南沢下降10:10ー二俣ー南沢出合13:05ー姉滝ー駐車場15:30