ブナの沢旅ブナの沢旅
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2018.03.14
面白山〜大東岳〜南面白山
カテゴリー:雪山

2018年3月13-14日

 

2週つづけて谷川方面の山に行ったので、次回は東北の山がいいけれど今の時期に新規開拓はむずかしい。そこで5年前に中退した面白山から南面白山をつなぐコースを完結させることにした。このコースは面白山高原駅を起点とし、山形宮城の県境尾根を巡って駅にもどる一種の馬蹄形縦走だ。先週は上越線土合駅から赤沢山〜白毛門をめぐるミニ馬蹄形ルートだった。偶然ではあるけれど、駅を起点、終点とする周遊パタンが続くことになる。

仙台が始発の仙山線は、これまであった8時台の電車がなくなったため東京を当日発では到着が11時になってしまう。そこでやむなく前夜発で仙台駅近くに宿をとった。2月の船形山の時もそうだったが、最近は山でも「時は金なり」の気持ちがつよく、背に腹は変えられないと諦める。

車窓から見える山々はいかにも雪が少ないが、奥日川トンネルを越え山形に入るとまずまずの様子。スキー場が閉鎖された無人駅の面白山高原駅に降り、ワカンを履いてまずは天童高原へ向かう。山道は雪が途切れている急斜面もあり、途中から早々とアイゼンに履き替えた。

気温は高めで歩いていると暑いくらいだ。天童高原では新しいログハウスやバンガローが建っていて、前回よりもかなり整備されている印象を受ける。地元の人が面白山に登る時は、隣接するスキー場まで車で来るのが一般的らしい。そのため冬でも手軽に登れる山なのだが、その先まで進んで周回するケースはほぼ皆無の模様。地元の人にとっては、わざわざテントを担いで歩くほどの山ではないのかもしれない。

そんなことを思いながらゆるやかな尾根を登って三沢山へ。気温が高いせいか遠くの山並みは霞んでいる。ここから面白山に続く稜線が見渡せる。1200mほどの山ながら、さすがに雪山の風格が感じられる。山頂近くは無木立の急斜面。アイゼンをしっかり効かせながら緊張して登った。山頂は360度の展望だ。まずは先月に登った船形山に目がとまる。反対の南側はこれから向かう大東岳と南面白山が近い。その後ろの蔵王連山や月山はかろうじて認められるほどで霞みがかっている。

 

面白山は前回の赤沢山のような存在で、今回の山旅はここが出発点なのだ。これからたどる尾根筋が全て見渡せるのは心強い。最初に向かうポコは中面白山だ。ここまでは消えかけの古い単独トレースがあった。日帰りだとこの辺りで引き返すのだろう。広々とした山頂で気持ちがいいところだ。

さてここから気持ちを引き締める。痩せた南西尾根を西側の灌木を絡めながら進み、尾根から外れて急斜面を下るところが要注意点なのだ。たぶん登山道は急斜面をジグザグに下っているのだろう。少しでも取り付きの傾斜が緩そうなところから尾根を離れるがやはりいやらしいので、バックステップで真っ直ぐ下ることにした。ピッケルを差しながらのバックステップなんて久しぶりだが、かえって安心感がましてよかった。50m程下るとそこはステキなブナ台地となる。緊張から解放され、ザックを下ろしてしばらくゆっくりして雰囲気を楽しむ。

初日の核心は終わった安堵感で足取りが軽くなる。広々とした尾根を快適に降り、5年前にテントを張った長左エ門平に降り立つ。前回よりも1時間以上コースタイムも早いと喜ぶ。ここからさらに小さなポコを二つ越える。1025mは上部が雪壁になっていた。西側の緩い尾根にトラバースするが、雪面がガリガリの急斜面のトラバースはちょっといやらしかった。

進み具合が順調だったので奥新川峠でテントを張ろうと思っていた。けれど1025mを越えた鞍部がゆったりとして見晴らしがいいので、余裕を残して行動を終えることにした。最初は焚き火もできると期待していたが午後から風が強くなり、その時はテントを張るのがやっとだった。

夜中も遠くでゴーゴー風の音が鳴り響いていた。予報では、大東岳の風速は22mとのこと。こんな様子ではとても大東岳には登れないねと、早々と諦めてシュラフに潜った。

 

 

山にも春の訪れを感じる。朝は明るくなるのが早くなり、鳥のさえずりが聞こえる。幸い風はそれほどでもない。6時過ぎに出発する。二日目は前日の様な急斜面の小さなポコはない。地図で見てもいかにもゆったりとしているかわりに、進むべきコースがいかにも茫漠としている。ブナの森をさまよう感じで面白そうだ。視界がないと難しいだろうが、好天が味方だ。

丘のような小山に乗り上げるたびに大東岳と山麓のブナの小丘が何重にも重なる光景に目を奪われ足がとまる。予想以上にすばらしい景観に心が震えっぱなしとなる。無雪期の登山道ではきっと見られない景色なのだ。感激あまって、これからは毎年来たいねと仲間に相槌を求める。

権現様峠はだだっぴろい平地となっている。以前穴堂沢を詰めて権現様峠から登山道に出るはずが、地図の峠がなかなか見つからずブナ林に分け入ったことがあった。その後再訪した時に登山道をたどって峠を確認したことがあった。地図とはかなりずれていたのだった。そんな思い出がつぎつぎと湧き上がる。

大東岳山麓に近づくとブナの森歩きとなる。それほど太いブナではないけれど広がりという点では南会津の行き慣れた山よりも規模が大きい。しばらくゆっくり登っていく。その気になれば大東岳は300m程の緩やかな登りなのだが、大東岳は登るよりも見る山だといいながらパスする。実際にそうだと思う。どの角度から見てもカッコよくて、名実ともに二口の盟主だ。

1018mから先は3年前に大東岳まで軌跡を残している。次第に尾根が明瞭になり樋ノ沢の源頭を左に見下ろしながら進む。南面白山が近づいてきた。途中はかなりの急斜面がつづくが、昨日とは違い雪面がそれほど硬くなかったので安心して登ることができた。

 

 

南面白山は北面白山ほどは登られていないようだ。再び正面にどっしりとそびえる大東岳に向かい、たどってきたブナの山並みを追った。そして、ああいいブナの山旅だったなと、しみじみ思う。もう少しゆっくりしたかったが、ここにきて風が強まり耐風姿勢をとらないと立っていられないほどになる。

樹林帯に下ったところで休むことにして早速下り始める。積雪期のルートは広い雪面を北に下る。面白山方面の展望が広がる。少しカリカリして油断すると滑りそうだ。樹林帯に入って一安心の休憩をとる。尾根の末端は崖なので、その手前で登山道のある沢筋に下る。記憶が確かではなかったが、テープやトレースが表れて安心する。ちょっといやらしいトラバースを終え、スキー場上の登山道にでるころから踏み抜きが多くなる。最後はワカンを履いてスキー場をグングン下り駅に戻った。

 

面白山高原駅7:20ー天童高原8:40ー三沢山10:20ー面白山11:25/11:40ー長左エ門平14:15ー奥新川峠手前テン場15:40//6:00ー権現様峠7:35ー南面白山10:20ー面白山高原駅12:30