ブナの沢旅ブナの沢旅
▲トップページへ
2017.05.20
入叶津〜浅草岳
カテゴリー:ハイキング

2017年5月20日

 

そろそろ沢の季節到来となったが、まだ雪の山旅気分が抜けきれない。ならばと、残雪とブナの新緑をもとめて浅草岳へ向かった。もう10年近く前になるが、5月の連休明けに浅草岳山麓の沼の平に行った時の新緑の美しさが忘れられず、いつかまた足を運びたいと思っていたのだ。

前夜、入広瀬の道の駅でテントを張って仮眠。最近は前夜の路上仮眠がしんどくなってきて朝発が多く、久しぶりのことだった。以前は冬でも当たり前のようにやっていたことなのにと、なんだか初心に帰ったようで新鮮だった。

早朝、開通したばかりの六十里越の252号線をたどって只見の入叶津へ着くと、集落の先からはまだ通行止になっていた。少しひんやりする空気が気持ちの良い叶津川沿いを10分ほど歩くと登山口となる。浅草岳の登山コースは新潟のネズモチ平や大自然館からが一般的のようだが、私にとっての浅草岳は、無雪期も積雪期もいつでも只見の入叶津なのだ。それだけ入叶津の道に一目惚れしたということかもしれない。

沼の平との分岐点である山神杉に向かう登山道は途中から雪でおおわれる。ここで早々とアイゼンを履くが今回は軽アイゼン。雪の状態がわからなかったが、今年は残雪がおおくその後もほとんど雪道となった。こういう時は10本爪のほうが歩きやすく少し甘く見ていたと思った。

最初は沼の平がメインのはずだったが、時間の余裕はあると思っていたので帰路に立ち寄って時間調整をしようなどと呑気なことを言っていた。山神杉からは急斜面をジグザグに登山道がついている。850mあたりから雪面となり登山道を探すのにてまどる。最後は道を探すのを諦め多少の藪をかき分けて平石山直下の登山道へ。

予想に違わず素晴らしいブナ林の新緑が広がっていた。いかにも雪はまだたっぷり積もっている様子のよごれていない雪面と初々しいブナの新緑、見上げると怖いくらいの青空が広がる。これ以上望めないほどパーフェクトな設定だ。このころには早くも沼の平は時間的に無理だとわかっていたが、この景色がみられたからもう沼の平はいらない、また秋に来よう、とあっさりした気持ち。

これだけ広大な雪面台地のブナ林は他にないのではないかと思えるほどで、しばらくは広尾根を進む。尾根が痩せてくると夏道となり、今度はカタクリやイワウチワが沿道をかざる。これほどのカタクリロードとは予想もしなかった。雪がないところでは山頂近くまで咲いていた。

1350mをすぎると登山道は北西にトラバースして最近まであった避難小屋に進んでから山頂へ向かうが、広大な雪面が広がっているのでそのまま雪尾根を直上した。この辺りはまだまだ雪山だ。破間川源頭部の湿原が芽吹きの淡い緑を広げていて残雪とのミックスが美しい。真北にみえる顕著な山は?と、20万分の1の地図を広げる。やっぱり、矢筈岳だ。あの山も登ったよね、その奥に青里から五剣谷岳が続いている。そうすると左は粟ケ岳。山頂へ着く前から山座同定がつきない。

こんなに晴れた週末だから、きっと人出があると思った。山頂はひっそりとしていたのが意外だった。きっと、スキーヤーはもう来ない、ハイカーはまだ来ない、というタイミングなのかもしれないと、静かな山頂で時間をすごす。田子倉湖を眼下に見下ろしながら村杉半島の山並みや毛猛山塊をおう。いつも探す丸山岳は霞んでわからなかった。未丈岳から奥只見スキー場方面はとくに残雪が豊富のようだ。雪がたっぷりの山並みから少し外れた南東でちょこっと尖ったピラミダルな山に目が止まった。城郭朝日だった。2月にあの山からこの山、浅草岳に目を細めたっけ。

目を転じて北西をみると守門岳が近い。前衛のずんぐりした山は黒姫だ。一昨年は黒姫から守門岳直前まで雪稜を登ったよね、などと山の思い出が湧いてくる。それだけ浅草岳というのは、短いブナの沢旅の歴史が凝縮した山なのだった。

 

 

登山道入口6:30ー山神杉7:45ー平石山9:00/9:20ー山頂12:00/12:30ー平石山14:00/14:30ー登山道入口16:15