ブナの沢旅ブナの沢旅
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2016.03.04
羽後朝日岳〜モッコ岳
カテゴリー:雪山

2016年3月4~5日

いつか残雪期に行きたいと思いつつ月日が流れた。昨年こそと計画したところ急速に雪解けがすすんで藪山化した情報が入り行き先を変えた。今年はどの山域も雪が少ないらしい。残雪期を待っていたのでは遅すぎる。3月初旬の入山は記録がほとんどなかったが、今年は例外とみて現地入りした。

貝沢集落の除雪終了点の道路脇に駐車し、翌日下山のメモをフロントガラスに貼付けて出発する。しばらくはトレースのない林道を軽くラッセルしながら進む。雪はそれほど深くないが、湿って重い。

小一時間ほどで登山口を示す標識があらわれる。ここから林道を離れて樹林帯に入り、沢を徒渉して大荒沢川左岸尾根から南東に派生する尾根に取り付く。概ね緩やかな斜面だが、800mを過ぎると傾斜が強まり膝上ラッセルとなる。時間は多少かかるけれど、交代しながらのラッセルは久しぶりだし、手に負えないほどではないので楽しい。時々振り返りながら、まっさらな斜面のトレースにまんざらでもないと言う風に目を細める。

急登をやり過ごすと台地状の広い尾根となる。泊まりたくなるようなゆったりとしたブナ林が広がり、空には青空が広がってとても気持ちがいい。1000m付近で下山に予定している東尾根と合流する。1091mの尾根をすすむと沢尻岳やモッコ岳が姿をあらわし、雪山気分が高まる。

灌木帯を抜けると、目の前に大きな雪原の沢尻岳がせまる。さすがにここまで来ると雪も締まって快適な登行となる。緩やかな斜面を登って沢尻岳山頂へ。そして思わず歓声。目の前には大荒沢岳と奥に羽後朝日岳が純白の神々しい姿でたたずんでいた。とても1300mそこそこの山とは思えない風格だ。南方向には、和賀岳と高下岳が谷を挟んで並び立っている。北に遠望する秋田駒はさらに白さが際立つ大きな山塊だ。予想以上のすばらしい展望に、しばしたたずむ。

とはいえ、感嘆してばかりはいられない。これからの行程を考えなければならない。予想以上にラッセルで時間がかかった道中で、あれこれ考えた。一日目に羽後朝日岳までいけそうにないなら沢尻岳から空身でモッコ岳を往復し、翌日朝日岳に登ろうか。けれど翌日も好天の保証はない。やはり天気のいいうちに頑張って行ける所まで行った方がいい。。。

相談の末、先に進むことに決めて大荒沢岳へ。まずは鞍部まで快適に下る。稜線はどちらを向いても展望がすばらしく、気持ちが沸き立つ。残雪期の写真しかみたことがないので、目の前の厳冬期さながらのクリーミーな雪と優雅な山容の美しさに目を奪われる。そして今の時期にきて、この姿を目にすることができてほんとうによかったと言い合う。

大荒沢岳山頂はわりと早くから藪がでるようなので三角点を探してみたが、わからなかった。いよいよつぎは羽後朝日岳。沢尻岳からはコースタイムも順調だ。鞍部にテントを張ることに決め、一挙に下る。目の前が羽後朝日岳の絶景テンバ適地といえる平地だ。ザックをおろし山頂へ向かう。日が長くなった今では5時でも明るいのがありがたい。

美しい風紋にみとれながら一歩一歩かみしめながら登る。ずっと憧れていた山が近づく。Yさんが手を上げている。山頂だ。黄昏が近づいているが間に合って良かった。生保内川源流部は緩やかなカール状の雪原になっている。いつか生保内川からお花畑の源流部をたどってみたい。いつか、といえる糊しろも年々減っているのではあるけれど。。。

半ば凍り付いた雪を力一杯振り落とし、生保内川源流部の標識を掘り出す。目の前の志度内畚も真っ白だ。あわよくばこちらにも足をのばそうと目論んでいたが、とっくの昔にそんな欲は捨てていた。田沢湖がこんなに近いなんてと思う。マイナー12名山といわれるが、朝日岳の北西は町並みが見渡せる。岩手側から登ると沢尻岳までその姿をみることはできないが、秋田側からは意外と里に近いようだ。

鞍部に下りテント設営の準備。雪がしまっていないので整地に意外と時間がかかる。テントに入ってまずはビールで乾杯。こういうのを久恋の山というのだろうか。10時間行動になったけれど久々の手応えを喜び合う。前回の北蔵王がちょっと消化不良気味だったのでなおさらだ。

久しぶりのテント泊だが、やっぱり山で寝るというのは捨て難い魅力だ。もうしばらくは続けられますようにと思わずにいられない。夜外に出てみると岩手側も秋田側も少しだが麓の道路や集落の明がみえる。東北の山はけっこうこういうパターンが多い。風もなく穏やかな夜だった。

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翌日は朝から昨日以上の好天で、羽後朝日岳が青空にはえて眩しいほどだ。昨日のトレースがはっきりとみえる。たしかな証のようでいとおしい。また登ろうかなんて、本気とも冗談ともつかない言葉が口をつく。今日はモッコ岳に立ち寄って帰るだけなので、朝は比較的ゆっくりと出発する。

大荒沢岳では南に延びる尾根を目で追う。正面に根管岳が顕著な山容を見せている。その尾根を真っすぐ南下すれば高下岳、手前の鞍部から右に折れ曲がる尾根を追うとこれ以上高い山はないという和賀岳だ。そんなに遠いとは思わない。あと1日とれればいけるのになあと、羽後朝日岳を手に納めた今、さらなる欲がむくむくとわき上がる。来年かな。別ルートで再訪したい。

沢尻岳に戻り、モッコ岳に向かう尾根方向へ。ザックをデポしてサブザックにテルモスとおやつを詰め込む。山名の由来はわからないけれど、みるからにもっこりどっしりした山だ。羽後朝日岳は昨日のうちに登って良かった。今日登った後だったら、モッコはきっとパスしたかもね、なんて言ってしまうような山なのだ。

ジリジリと気温があがり、暑いくらいとなる。まさに鼻歌まじりの春山ハイキング風情だ。だだっ広い山頂の端っこに大荒沢岳から朝日岳の好展望な所を見つけ、腰を下ろしてティータイム。安穏とした雰囲気につつまれながら、あまり変わらないけれど見飽きることのない展望を楽しむ。

モッコ岳から北側は、みるからに穏やかそうな尾根が続いている。ずっと目で追うとはるか先の秋田駒にたどりつく背稜なのだ。右手遠方には岩手山もみえるが昨日より霞んでいる。

好天の週末なのできっと入山者がいるだろうと思っていたが、沢尻岳に戻る手前で初めて人とすれ違う。モッコ岳往復らしい。さらに沢尻岳山頂に人の姿が見えた。ひょっとしてみなさん私たちのトレースをたどってきたのかしら、なんてちょっと自慢げな気分。

尾根が広がる1000m付近でにぎやかになったトレースを離れ、東に派生する尾根に向かう。最初は傾斜があるが、いい感じのブナの尾根だ。斜面は伐採された二次林だが、尾根上だけは伐採しなかった模様。適度にもぐるので急傾斜でも恐くないのがいい。

途中からは赤テープがあらわれる。776mの分岐を南東に下ると地図にあらわれない小さな尾根や窪がでてくる。少し迷うところもあったが慎重に読図しながらくだると突然大雪原となりテープもあった。ここは牧場らしい。大雪原を横断して夏道に乗るとすぐに登山口とかかれた標識がでてきた。地図をみると夏道は、776mを北東尾根に進んでから真南に下る沢沿いのルートらしい。

あとは雪道を進めばいいのだが、昨日の林道に合流するまでは雪が重くてちょっと沈むだけでもけっこう疲れる。さいごは再びしっかり踏まれたトレースをたどり、車に戻った。

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貝沢集落除雪終了点6:40-大荒沢川左岸尾根11:10-沢尻岳14:00-大荒沢岳15:20-1230m鞍部(テンバ)15:40-朝日岳16:20-テンバ16:40/7:20-沢尻岳9:00-モッコ岳10:20-沢尻岳11:50-登山口14:25-除雪終了点15:30